相続手続きの流れ|期限別やるべきこと一覧
目次
今回は、相続税申告の話ではなく、相続によって発生する「手続き」についてご説明したいと思います。
相続の手続きは、税金の申告以外にもたくさんあり、なかには期限があるものもあります。
期限が間に合わなかった場合、損をしてしまうものもあります。
以下、相続が発生してから期限が到来する順番にご説明致しますので、ご参考にして頂ければと思います。
相続手続きの全体の流れ
相続の手続きは非常に多く、煩雑です。その中でも特に重要なものを図にしました。
全体のスケジュールをおさえて、期限が短いものから対応していくことが必要です。
期限は、大きく分けると「7日以内」、「14日以内」、「3ヶ月以内」、「4カ月以内」、「10カ月以内」、「それ以降」に分けることができます。下記で、それぞれご説明していきます。
7日以内の相続手続き
死亡診断書の受け取り
死亡診断書は、医師だけが作成できる亡くなったことを証明する書面です。発行費用は病院ごとに料金は異なりますが、一般的には3,000円から1万円です。
相続税の申告だけでなく、この後の様々な手続き(解約手続き、名義変更手続きなど)で使用する重要な書類です。受け取り後はコピーを複数枚(多めに10枚ほどあると安心です)とっておくことをおすすめします。
葬儀社への連絡
葬儀社は、可能なら亡くなる前に決めておくのが望ましいです。テレビCMなどで言われているように、亡くなったあとは様々な手続きで慌ただしく、時間がないためです。
依頼する葬儀社が事前に決めてある場合は、亡くなったことを連絡するだけで良いので、スムーズです。葬儀社が決まっていない場合は、病院から紹介してもらえることもあるようなので、まずは相談してみることをおすすめします。
死亡届の提出・埋火葬許可証の申請
死亡届の提出(記載は届出する方がします)や埋火葬許可証の申請は、葬儀社が代わりにしてくれることがほとんどです。
自分で手続をする場合は、市区町村役場の窓口に行き、死亡届(死亡診断書と一枚になっている場合が多いです)と死体(胎)埋火葬許可申請書を併せて提出して手続きします。書類に問題がなければ、当日中に埋火葬許可証が発行されます。
埋火葬許可証は、火葬当日、納骨の際にも必要ですので、大切に保管しましょう。
葬儀社に手続きを代行してもらった場合は、そのまま預かってくれることもあるので、事前に確認することをおすすめします。
14日以内の相続手続き
年金の受給停止
年金事務所または年金相談センターに、必要書類を提出する必要があります。
必要書類は「年金受給権者死亡届(報告書)」、「亡くなった人の年金証書」、「亡くなった人の死亡の事実を明らかにできる書類(死亡診断書のコピーなど)」です。
なお、亡くなった人が国民年金受給者の場合は亡くなった日から14日以内ですが、厚生年金受給者であった場合は亡くなった日から10日以内が期限なので、注意が必要です。
世帯主変更届の提出
世帯主が亡くなった場合のみ、世帯主変更届の提出が必要です。世帯主変更届とは、世帯主が亡くなった場合に新しい世帯主を届け出る手続きです。
居住地の市区町村役場に「世帯主変更届」、「届出人の本人確認書類」、「届出人の印鑑」、「委任状(代理人が提出する場合)」、「国民健康保険被保険者証(加入している場合全員分)」を提出します。手数料は発生しません。
医療保険の資格喪失届
医療保険の資格喪失届は、国民健康保険なのか、社会保険なのか、後期高齢者医療保険なのか、で異なります。
国民健康保険の場合は、同一世帯の人(委任状があれば、代理人でも可)が「国民健康保険資格喪失届(国民健康保険異動届出書)」を市区町村役場に提出する必要があります。
後期高齢者医療保険の場合は、「後期高齢者医療障害認定申請書及資格取得(変更・喪失)届書」を市区町村役場に提出する必要があります。
社会保険の場合は、亡くなった人が勤務していた会社に連絡をし、その会社の担当者が手続きをします。社会保険は、ほかの2つと異なり、5日以内の手続きが必要なので注意が必要です。
どの場合も、健康保険証が使用できなくなりますので、喪失届と一緒に新しい健康保険証の発行手続きもする必要があります。
介護保険の資格喪失届
介護保険の資格喪失届は、65歳以上の方、40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた方が亡くなった場合に必要な手続きです。
届出には、「介護保険資格喪失届出」、「介護保険被保険者証」が必要ですが、市区町村によっては、死亡届を提出するだけで完了する場合や、電話連絡だけで完了する場合、介護保険被保険者証の返却で完了する場合などもあります。さらに、介護保険被保険者証の返却不要という市区町村もあるので、事前に確認が必要です。
公共料金などの名義変更・解約
亡くなった人と同居している人がいない場合は解約、亡くなった人と同居している人がいる場合は名義変更となることが多いと思います。
主に解約や名義変更が必要な手続きは下記です。
- 電気、ガス、水道
- インターネット、携帯代
- 税金関係の引落
- クレジットカードの引落
ちなみに、どんな契約があるのか不明で、解約や名義変更手続きがうまく進まない場合は、あえて口座凍結されるのを待つという手段もあります。
口座凍結されると、引落がされないため、契約会社から督促等が届き、割り出すことができます。督促料がかかることも多いので、この手段をとるのは分からないものがあるときだけにしましょう。
1ヶ月以内の相続手続き(雇用保険を受給していた場合)
雇用保険とは、労働者が失業したときや病気で働き続けるのが難しくなったときなどのリスクを保障する公的保険制度です。
この雇用保険の失業等給付の支給を受けることができる方が死亡した場合は、遺族が受け取ることができる場合があるので、亡くなった日から1ヶ月以内に公共職業安定所(ハローワーク)に連絡することが必要です。また雇用保険受給者資格証の返却を1カ月以内にする必要があります。
なお、亡くなってから6カ月をすぎてしまうと、請求できなくなってしまうので、注意が必要です。
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3~4ヶ月以内の相続手続き
遺言書の有無の確認
亡くなった方が遺言書を書いている場合、基本的にはその遺言書の記載内容に従って相続手続きを行う必要があります。
したがって、まずは遺言書の有無を確認する必要があります。確認方法としては主に次のような方法があります。
- 亡くなった方の自宅を探す(亡くなった方と同居している方がいた場合は、その方に確認する)
- 貸金庫を契約している場合は、貸金庫の中を探す
- 公証役場の遺言検索システムを利用する
相続人の調査・確定
相続手続きをするためには、まずは相続人を調査して、確定をする必要があります。
具体的には、被相続人が産まれてから亡くなるまでの流れが確認できる戸籍謄本等一式を取得し、確認をする必要があります。
産まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を確認することで、配偶者や子供の有無などを漏らさず確認できるためです。
この作業は戸籍謄本等を取得し、記載内容を確認、そして相続人を確定させる、という流れとなり、非常に手間がかかります。税理士や司法書士は職権で代理取得が可能なので、専門家に依頼することをおすすめします。
相続財産の調査
現預金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、未払金やローン・葬式費用などのマイナスの財産も相続財産です。
主な財産の調査方法は下記です。
- 預貯金:通帳の確認をし、金融機関にて死亡日時点の残高証明書発行依頼
- 不動産:自宅に届いている固定資産税課税明細を確認するか、役所に行き、名寄帳を請求。
- 有価証券:郵便物から証券会社からの明細がないかを確認。
- 生命保険:保険証券や郵便物から保険会社からの明細がないかを確認。
- 未払金、ローン:ローン返済予定表や支払日が死亡日以降の領収書、クレジットカード明細等
単純承認・限定承認・相続放棄の決定
単純承認とは、現預金や不動産などのプラスの財産も債務・葬式費用などのマイナスの財産も全て相続することです。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法です。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続しない方法です。
なお、借金があるなどで相続放棄したい場合は、「相続放棄する」と宣言するだけでは足りず、家庭裁判所に必要書類を提出して手続きすることが必要です。
相続放棄をすることで借金を背負わずに済みますが、返済そのものが無くなったわけではなく、返済義務は次の相続順位の方に引継がれます。親族に事前の説明なく相続放棄すると、トラブルになる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
相続人の確定申告(準確定申告)
その年の1月1日から亡くなった日までの被相続人の所得について、相続人が代わりに所得税の確定申告をすることを準確定申告といいます。
無くなった方が事業をしていたなどで毎年納税をしていた場合は、亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内にする必要がありますが、医療費控除等を利用した還付申告をする場合は、4カ月以内にする必要はなく、5年間の期限となります。
10ヶ月以内の相続手続き
遺産分割協議
遺産分割協議とは、被相続人の財産について、誰が、どの財産を、どのくらい相続するのかを決めるために協議し、合意することをいいます。
相続税の申告書に添付する必要があるため、期限は相続税申告と同じ10カ月以内と言われることもありますが、実際は、期限はありません。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終了しなかった場合は、「未分割」という形で、申告をすることとなります(この時、3年以内の分割見込書という書面を添付します)。
そして、後日分割協議が終了した場合に、修正する申告をすることとなります。
貯金や有価証券などの解約・名義変更
被相続人が亡くなったことを金融機関に連絡すると口座が凍結されてお金が動かせなくなります。
引き出して口座を空にするのはだめなのか?という質問をよく聞きますが、引き出して空にかまいませしても構いません。引き出したお金を葬式費用や未払医療費にあてた場合は、その領収書を保管しておき、残った金額はきちんと残しおくようにしましょう。
また、他の相続人から私的に流用したのではないか?という疑いの目を向けられないように、引き出す前はなるべく相続人全員に金額と使途をアナウンスしておくことが大切です。
不動産の名義変更
不動産の名義変更手続きは、相続登記と呼ばれる手続きのことをいいます。
相続登記は法務局に必要書類を提出するか、司法書士に依頼して手続きをすることが多いです。詳細は、別の記事でご説明する予定です。
この登記手続きは現状義務となっていませんが、所有者不明土地問題などを解消するため、2024年4月1日から義務化されることとなっています。
所有者不明土地とは、所有者が不明もしくは判明しても連絡がつかない土地のことで、公共事業の妨げになるなどの問題が起こっています。その広さは日本の国土の24%にのぼり、九州地方の面積を超える広さとされています。
相続税の申告・納税
相続税の申告・納税についても、詳細は別の記事で記載したいと思います。
申告が必要になるケースは、相続財産の課税価格が基礎控除額を超える場合や配偶者の税額軽減などの控除や特例の適用を受ける場合です。
なお、後者の控除や特例の適用を受ける場合は、注意が必要です。控除や特例を適用した結果、相続税が0円となった場合、申告をしなくて良いと思われがちです。しかし、適用する制度によって、申告が必要な場合と申告が不要な場合があるので、事前の確認が必要です。
1~5年以内の相続手続き
【1年以内】遺留分の請求
遺留分とは、相続人に認められた、遺言書でも侵害することができない、財産で最低限確保された相続割合をいいます。
計算方法は、財産総額×法定相続分×1/2(相続人が被相続人の直系尊属(親など)のみの場合は1/3)です。
自分の相続分が、この計算式で算出された財産額を下回っている場合(遺留分を侵害している場合)は、他の相続人に侵害額に相当する部分を金銭で請求することができます。これを遺留分侵害額請求権と言います。詳細は別記事でご説明させて頂きます。
【2年以内】葬祭費・埋葬費の請求
葬祭費・埋葬費とは、亡くなった人の葬祭や埋葬を行った相続人等に対して、亡くなった人が加入していた健康保険から支給される給付金のことをいいます。
加入しているのが国民健康保険の場合に「葬祭費」、社会保険の場合に「埋葬費」となります。
葬祭費の場合は、管轄の市区町村役場に「国民健康保険葬祭費請求書」などの必要書類を提出して申請します。
埋葬費の場合は勤務先の健康保険組合か社会保険事務所に「埋葬料支給申請書」などの必要書類を提出して申請します。
【3年以内】生命保険の請求
まずは保険会社に連絡して、必要書類を確認します。
生命保険の請求に保険証券番号が必要になるので、事前に準備しておくことをおすすめします。
被相続人がどのような生命保険に加入しているか不明な場合は、生命保険契約照会制度の利用をおすすめします。
生命保険契約照会制度とは、保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を、生命保険協会の会員会社である生命保険会社に確認する制度です。手数料は3,000円で、2週間程度で契約の有無が開示されます。
契約の有無が分かったら、契約のある保険会社に連絡をして、手続きを進めます。
【5年以内】遺族年金の請求
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
亡くなった人が国民年金加入者なら遺族基礎年金が受給でき、厚生年金加入者ならさらに遺族厚生年金が受給できます。
亡くなった方に生計を維持されていた方が支給対象で、年金事務所または年金相談センターの窓口に年金手帳・戸籍謄本等の必要書類と一緒に年金請求書を提出することで、手続きができます。
相続手続きで分からないことがあればキークレアにご相談ください
今回は相続税以外の事務手続きについてご説明させて頂きましたが、税金申告以外にもこれだけたくさんの手続きがあります。
このたくさんの煩雑な手続きに加えて、相続税申告もとなると、相続人の方の負担はとても大きなものとなります。
キークレア税理士法人で代行できないものも多いですが、相続税申告だけでなく事務手続きについても最大限サポートさせて頂きますので、手続きで分からないことがあれば、是非キークレア税理士法人にご相談ください。