相続手続きの流れとは?期限別にやるべきことや必要書類などを解説
身近な方が亡くなると、相続税の申告だけでなく数多くの「相続手続き」が発生します。これらの手続きには厳格な期限が設けられているものもあり、期限を過ぎると不利益を被る恐れがあるため注意が必要です。
手続きの期限を正しく把握し、計画的に進めることが円滑な相続への近道となります。本記事では、相続発生後に「いつまでに」「何をすべきか」を時系列で分かりやすく解説します。
相続手続きの全体の流れ
相続手続きは非常に多く煩雑なため、スケジュール把握が重要です。「相続開始」とは被相続人が亡くなった日を指しますが、各手続きの中には「その事実を知った日の翌日」から日数を数えるものもあります。「7日以内」「14日以内」「3~4ヶ月」「10ヶ月」「1年以内」の順に詳しく解説します。
遺産相続の方法
遺産相続を進める方法には、主に以下の3つのパターンがあります。
- 遺言相続:亡くなった方が残した「遺言書」の内容通りに遺産を分ける方法です。原則としてこれが最優先されます。
- 法定相続:遺言書がない場合、法律(民法)で定められた割合(法定相続分)に従って分ける方法です。
- 遺産分割協議による相続:遺言書がない、または遺言があっても全員の同意がある場合に、相続人全員で話し合って分け方を決める方法です。
遺言書がある場合はその意志が最優先されますが、遺言書がない場合は「誰が相続人なのか」を確定させ、全員で「遺産分割協議」を行わなければなりません。状況に合った方法で手続きを進めましょう。
相続開始後7日以内に行う手続き
死亡診断書を受領する
被相続人が亡くなった事実を医学的・法律的に証明するため、担当医師から「死亡診断書」が交付されます。発行費用は病院ごとに異なり、一般的には3,000円〜1万円程度です。
この書類は、この後に行う死亡届の提出だけでなく、生命保険の請求や公的年金の手続き、各種名義変更など、遺族が直面するさまざまな手続きで必要となります。原本は死亡届の手続きの際に役所に提出して手元に残らないため、受領後は提出前に10枚程度、コピーを取っておきましょう。
死亡届を提出・埋火葬許可証を申請する
死亡届の提出や埋火葬許可証の申請は、葬儀社が代行してくれる場合があります。
自身で行う場合は、死亡の事実を知った日から7日以内に、役所の窓口へ「死亡届」と「火葬許可申請書」を提出します。不備がなければ当日中に「埋火葬許可証」が発行されます。
この許可証は火葬や納骨の際に必須となる重要な書類です。葬儀社が代行した場合はそのまま預かってくれていることもあるため、事前に手元にあるか確認し、紛失しないよう大切に保管してください。
相続開始後14日以内に行う手続き
年金の受給停止手続きを行う
年金事務所または年金相談センターに、必要書類を提出する必要があります。
必要書類は「年金受給権者死亡届(報告書)」、「亡くなった人の年金証書」、「亡くなった人の死亡の事実を明らかにできる書類(死亡診断書のコピーなど)」です。
なお、亡くなった人が国民年金受給者の場合は亡くなった日から14日以内ですが、厚生年金受給者であった場合は亡くなった日から10日以内が期限なので、注意が必要です。
世帯主変更届を提出する
世帯主が亡くなった場合のみ、世帯主変更届の提出が必要です。世帯主変更届とは、世帯主が亡くなった場合に新しい世帯主を届け出る手続きです。
居住地の市区町村役場に「世帯主変更届」、「届出人の本人確認書類」、「届出人の印鑑」、「委任状(代理人が提出する場合)」、「国民健康保険被保険者証(加入している場合全員分)」を提出します。手数料は発生しません。
健康保険・介護保険の資格喪失手続きを行う
被相続人が加入していた健康保険や介護保険の資格喪失手続きを行います。
健康保険は種類によって手続きが異なります。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は、14日以内に市区町村役場へ届け出ます。一方、会社の社会保険(健康保険)の場合は、死亡後5日以内に勤務先を通じて手続きを行う必要があるため注意しましょう。
介護保険は、65歳以上の方や要介護認定を受けていた40歳以上の方が対象です。14日以内に役所へ届け出ますが、死亡届の提出や保険証の返却だけで完了する自治体もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
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相続開始後3~4ヶ月以内に行う手続き
遺言書の有無を確認する
相続手続きは原則として遺言書の内容が最優先されるため、まずはその有無を確かめます。主な捜索方法には、故人の自宅や貸金庫の確認、公証役場の「遺言検索システム」の利用などが挙げられます。
もし「自筆証書遺言」を自宅で見つけた場合、勝手に開封してはいけません。速やかに家庭裁判所へ提出し、内容を確認する「検認」の手続きをする必要があります。ただし、公証人が作成した公正証書遺言や、法務局に預けられていた遺言書であれば検認は不要となり、スムーズに次の手続きへ進めます。
遺言書の検認とは?手続きの流れや必要書類、期限などを解説相続人を確定させる
遺産を正しく分けるためには、まず誰が相続人になるのかを突き止める「相続人調査」が必要です。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せて確認します。故人に子どもがいないケースでは、実親(養親含む)の戸籍が必要になるほか、その親がすでに全員亡くなっている場合は祖父母の戸籍(死亡の事実が分かるものなど)まで遡る必要があります。さらに兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人になる場合もあり、調査にはかなりの時間と労力がかかります。
見落としがあると、のちの遺産分割協議が無効になってしまうため、不慣れな場合は税理士や司法書士などの専門家へ依頼するのがおすすめです。
相続人調査の方法|必要性やポイント、専門家に依頼すべきケース相続財産を調査する
預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、未払金やローン・葬式費用などのマイナスの財産も相続財産です。
主な財産の調査方法は下記です。
- 預貯金:通帳を確認し、金融機関にて死亡日時点の残高証明書の発行を依頼する。
- 不動産:自宅に届いている固定資産税課税明細を確認するか、に行き、名寄帳を請求する。
- 有価証券:郵便物から証券会社からの明細がないかを確認する。
- 生命保険:保険証券や郵便物から保険会社からの明細がないかを確認する。
- 未払金、ローン:ローン返済予定表や支払日が死亡日以降の領収書、クレジットカード明細等を確認する。
調査が終わったら財産目録を作成します。
相続財産調査が必要な理由とは?調査方法や対象になる財産相続の方針を決定する(単純承認・限定承認・相続放棄)
遺産の引き継ぎ方には、大きく分けて以下3つの方法があります。
- 単純承認:不動産や預貯金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産もすべて無条件で受け継ぐ方法。
- 限定承認:引き継いだプラスの財産の枠内で、マイナスの財産を清算する方法。利用するには相続人全員の合意が必要です。
- 相続放棄:一切の財産や義務を引き継がない方法。
被相続人に借金などのマイナスの財産がある場合、そのまま何もしないと「単純承認」とみなされ、相続人が返済義務を負う可能性があるため慎重な見極めが必要です。
「限定承認」や「相続放棄」を選ぶ場合は、相続開始を知った日の翌日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行わなければなりません。特に相続放棄は、返済義務が次の順位の相続人へ移るため、親族トラブルを防ぐための事前共有など慎重な判断が求められます。
準確定申告を行う
その年の1月1日から亡くなった日までの被相続人の所得について、相続人が代わりに確定申告を行う手続きを「準確定申告」といいます。
亡くなった方が個人事業主などで毎年納税していた場合、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告・納税をしなければなりません。なお、1月1日から3月15日までに亡くなった場合は、前年分の確定申告が済んでいるかもあわせて確認が必要です。
一方、医療費控除などを適用して税金の還付を受ける「還付申告」の期限は5年以内です。ただし、還付される正確な税額が分からないと相続税申告書を作成できないため、源泉徴収票や控除の証明書といった必要書類を早めに揃えて還付申告を進める必要があります。
準確定申告とは|必要な人や手続きの方法について相続開始後10ヶ月以内に行う手続き
遺産分割協議の実施・遺産分割協議書を作成する
相続人と財産が確定した後は、誰がどの遺産をどれだけ引き継ぐかを決める「遺産分割協議」を行い、合意内容を記した「遺産分割協議書」を作成します。
この書面の作成自体に明確な期限はありません。ただ、相続税申告の際に提出を求められるため、実務上は「10ヶ月以内」が期限の目安となります。
もし話し合いが長引き期限に間に合わない場合は、ひとまず財産を法定相続分で相続したとして申告を済ませます。その際、「3年以内の分割見込書」を一緒に提出しておくと、後から分割内容が決まったときに、特例を適用して払いすぎた税金を取り戻すことができます。
なお、協議は相続人全員での合意が必須です。参加が難しい場合は代理人を立て、合意が得られないときは家庭裁判所の調停を利用します。
遺産分割協議書とは?作成の流れやひな形を使った書き方のポイントを解説 遺産分割の4つの方法と遺言書の有無別の相続の進め方相続財産を名義変更する
遺産分割が成立した後は、預貯金や不動産などの名義変更を進めます。
金融機関に死亡を連絡すると口座は凍結されます。その前に預金を引き出すこと自体は可能ですが、葬儀費や医療費に充てた領収書を保管し、残金は厳重に管理しましょう。トラブルを防ぐため、事前に他の相続人へ金額や使途を伝えておくのが賢明です。
また、不動産の名義変更である相続登記は2024年4月から義務化されました。取得を知った日から3年以内に手続きをしないと過料の対象となるため注意が必要です。
なお、「法定相続情報証明制度の一覧図の写し」を利用すれば、手続きのたびに戸籍謄本の原本一式を用意する手間や費用を省くことができます。
不動産の相続に必要な手続き|流れと遺産分割の方法について相続税を申告・納付する
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。期限を過ぎたり無申告のままでいたりすると、ペナルティとして追徴課税が課されるリスクがあるため注意しましょう。
申告が必要になるのは、遺産の総額が基礎控除額を超える場合です。また、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などを適用した結果、最終的な税額が0円になるケースもあります。ただし、これらの控除や特例は「期限内に申告すること」が適用の条件となっているため、税金がかからなくても申告義務があるかどうかの事前確認が不可欠です。
相続税の申告が必要なケース・申告する方法などを解説相続開始後1年以内に行う手続き
遺留分侵害額を請求する
遺留分とは、遺言書の内容に関わらず、法定相続人に最低限保障されている遺産の受け取り割合です。例えば「特定の誰かに全財産を譲る」といった遺言により、自身の相続分がこの割合を下回った場合、多く遺産を受け取った人に対して不足分を金銭で請求できます。
請求できる期限は、相続の開始および遺留分を侵害する遺言などの存在を知った日の翌日から1年以内と短いため、迅速な対応が必要です。
遺留分の計算基準は原則「法定相続分の2分の1(親などの直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)」となります。不公平な遺言によって法定相続人が一切の財産をもらえなかったケースなどが、この請求を行う代表例です。
遺留分侵害額請求とは?手続きの流れや時効などわかりやすく解説相続手続きの必要書類
相続手続きに必要な書類は、手続きの種類によって異なります。特に「戸籍謄本」や「印鑑証明書」は、どの手続きでも共通して求められる重要書類です。状況に応じて漏れのないよう早めに準備を進めましょう。
| 手続きの内容 | 必要書類 |
|---|---|
| 遺産分割協議書の作成 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書など |
| 相続税の申告・納付 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続税の申告書、遺産分割協議書の写し、財産の価値を証明する書類(残高証明書や評価証明書)など |
| 不動産の相続登記 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(または遺言書)、固定資産評価証明書、不動産を取得する人の住民票など |
| 預貯金の名義変更・払戻し | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺産分割協議書(または遺言書)、通帳・キャッシュカードなど |
| 普通自動車の名義変更 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(※査定額100万円以下は遺産分割協議成立申立書でも可)、車検証、新所有者の住民票・印鑑証明書など |
| 軽自動車の名義変更 | 被相続人の死亡の事実と新しい所有者との関係がわかる戸籍謄本、車検証、新所有者の住民票・印鑑証明書など |
いずれの手続きでも、「法定相続情報証明制度の一覧図の写し」があれば、手続きごとに戸籍謄本を用意することなくスムーズに進めることができます。
【一覧】相続税申告に必要な書類を税理士が解説【2024年最新版】相続手続きに関するQ&A
相続手続きに不安がある場合は誰に相談すればいいですか?
相続手続きの相談先は、お悩みの内容やトラブルの有無で選びます。
相談内容に応じた適切な専門家は以下の通りです。
- 税理士:相続税の試算、申告書の作成、節税対策の相談
- 司法書士:相続登記の代行や遺言書の作成
- 弁護士:親族間での遺産トラブルや、遺留分のトラブル解決
- 行政書士:遺産分割協議書や戸籍集め、自動車などの名義変更
どこから手を付けるべきか分からない、手続きが複雑といった場合は、まずは連携の幅が広い税理士や司法書士に相談するのがおすすめです。窓口を一つに絞ることで、必要に応じて他の専門家とスムーズに連携して進めてもらえます。
続税について税理士に相談するメリットは?何をしてもらえる?相続手続きに費用はかかりますか?
相続手続きでは、書類の取得や相続登記、専門家への依頼に費用がかかります。
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また、遺産分割を行わないまま時が経つと、次の相続が発生して法定相続人がどんどん増えてしまいます。面識のない親族が加わることで話し合いが難航し、深刻なトラブルに発展しかねません。将来の負担を減らすためにも、早めの手続きが不可欠です。
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