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ナフサ高騰は医療経営に直撃する。歯科医院・クリニックが今すぐ見直すべきコストと資金繰り

医療機関の経営環境が、静かに、しかし確実に厳しくなっています。

これまで「医療は安定している」「クリニックや歯科医院は景気に左右されにくい」と言われることもありました。しかし、今の現場ではその前提が崩れ始めています。

背景にあるのが、原材料価格の高騰、人件費の上昇、光熱費の増加、医療材料・衛生材料の値上がりです。特に注目すべきなのが、ナフサ価格の影響です。

ナフサは、プラスチック製品や化学製品の原料となる石油由来の基礎原料です。医療現場では、直接「ナフサを仕入れている」と感じることは少ないかもしれません。しかし、実際には医療用手袋、注射器、チューブ、包装資材、消耗品、衛生用品、歯科材料など、多くの医療関連製品が石油化学製品とつながっています。

つまり、ナフサや原油価格の上昇は、時間差で医療機関の仕入コストに跳ね返ってくるのです。

実際、医療機関の倒産は増加傾向にあります。帝国データバンクによると、2025年の医療機関の倒産は66件となり、2024年を上回って過去最多を更新しました。内訳は病院13件、診療所28件、歯科医院25件とされ、診療所・歯科医院も決して例外ではありません。倒産主因では「収入の減少」が最も多く、コスト増だけでなく、売上・患者数・単価・固定費のバランスが崩れていることが見えてきます。

東京商工リサーチの調査でも、2025年度の医療機関倒産は71件と、20年間で最多を更新しています。特にクリニック32件、歯科医院31件と、いずれも高い水準です。

ここで重要なのは、「倒産した医療機関だけが特別に経営が悪かった」と見るのではなく、多くのクリニックや歯科医院が同じ構造的なリスクを抱えているという点です。

医療機関は、一般企業と違い、価格転嫁が簡単ではありません。保険診療が中心の場合、材料費や人件費が上がっても、患者さんに自由に価格転嫁することはできません。診療報酬の改定を待つしかない部分も多く、経営努力だけでは吸収しきれないコスト増が起きています。

一方で、支出は待ってくれません。

スタッフの給与、社会保険料、家賃、リース料、医療機器の返済、材料費、広告費、税金、借入返済。売上が横ばいでも、支出だけがじわじわ増えれば、利益は削られます。そして利益が削られるだけならまだしも、借入返済や税金の支払いが重なると、黒字でも資金繰りが苦しくなるケースがあります。

歯科医院では、材料費、技工料、滅菌関連費、予約キャンセルによる稼働率低下、自費診療の伸び悩みが経営を圧迫します。クリニックでは、検査機器や医療機器のリース、看護師・受付スタッフの採用難、光熱費、電子カルテや予約システムなどの固定費が重くなっています。

この状況で必要なのは、単なる「経費削減」ではありません。

院長先生がまず見るべきなのは、どのコストが利益を生んでいて、どのコストが惰性で残っているかです。

たとえば、広告費は削ればよいわけではありません。新患につながっている広告は投資です。しかし、反応が見えない広告、紹介につながらない媒体、更新されていないホームページに毎月費用を払い続けているなら見直し対象です。

人件費も同じです。スタッフを減らせば短期的にはコストは下がりますが、予約対応、患者満足度、口コミ、再来院率が落ちれば売上も落ちます。削るべきは人ではなく、非効率な業務です。紙の問診票、電話対応の集中、会計待ち、手入力作業、属人的なシフト管理など、スタッフの時間を奪っている業務を見直すことが先です。

材料費も、単価だけで判断してはいけません。在庫管理が甘い、発注担当者が固定されていない、仕入先の比較をしていない、キャンペーン時に過剰購入している。こうした小さなズレが、年間では大きな資金流出になります。

今後、歯科医院・クリニックに求められるのは、「医療の質」「経営管理」の両立です。

医療の専門性が高いだけでは、資金繰りは守れません。逆に、経費削減ばかりを優先すると、患者さんの満足度やスタッフの定着率を下げてしまいます。

大切なのは、月次試算表をただ見るのではなく、現金の残り方まで確認することです。

売上はいくらか。粗利はいくら残っているか。人件費率は適正か。材料費率は上がっていないか。借入返済後に現金はいくら残るか。税金の支払いに耐えられるか。今の診療体制で、半年後の資金繰りは持つのか。

ここまで見て、初めて経営判断ができます。

ナフサ高騰や物価高は、院長先生個人では止められません。しかし、数字の見方と打ち手は変えられます。

今後の医療経営で危険なのは、「忙しいから大丈夫」と思い込むことです。患者さんが来ていても、現金が残らなければ経営は苦しくなります。売上があっても、材料費・人件費・返済・税金で資金が抜けていけば、黒字倒産のリスクは高まります。

だからこそ、今すぐ必要なのは、コストの棚卸しと資金繰りの見える化です。

歯科医院・クリニック経営は、これから「なんとなく続ける時代」から、「数字を見て守り、攻める時代」に変わります。

ナフサ高騰、医療材料費の上昇、人件費高騰、倒産件数の増加。

これらは不安を煽るための内容ではなく経営を見直すタイミングを知らせるサインです。

院長先生が医療に集中するためにも、経営数字を早めに整えることが、これからのクリニック経営を守る一番の対策になります。

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