借入金は資本金にできるのか?資本金の調達方法や借入への影響も解説
目次
資本金とは、会社経営を行う際の元手となる資金のことです。会社を設立するためには資本金が必要です。それでは、銀行融資やカードローンなどの借入金を資本金にすることはできるのでしょうか。
結論から言えば、借入金を資本金にすることはできません。
資本金と借入金とはどのように異なるのでしょうか。なぜ、借入金は資本金にできないのでしょうか。資本金の概要、資本金の調達方法、資本金と融資の関係などを、本コラムで詳しく解説していきます。
借入金を資本金にすることはできない
借入金を会社設立時の資本金とすることはできません。
何故なら、資本金は会社の基礎財産であり、返済義務がある借入金は会社の基礎財産とは言えないためです。
そのため、借入金を資本金とすることは違法行為と定められています。
即ち、資本金は一時的にあればいいと考え、「見せ金」として借入金を資本金にしてはいけません。
資本金とは
資本金とは、一般に「会社を運営するにあたって元手となる資金」です。
そのため、資本金は事業を営むために必要なときに利用されるものです。
会社設立当初は事業での利益がないため、事業に必要な費用は資本金から賄うのが一般的です。資本金は、主に創業者の個人資産や株主からの出資で成り立っています。
資本金と借入金の違い
借入金とは、企業や個人が、金融機関等の他者から「借りたお金」です。
借入金は、設備資金や運転資金などの事業資金として利用することができます。
資本金と借入金の大きな違いは、「返済義務があるかどうか」と言えます。
銀行融資、カードローン、親族・知人からの借入等、返済義務があるものに関しては、資本金に計上することはできません。
資本金の調達する4つの方法
資本金を調達する主な方法は以下の4つです。
- 自己資金
- 出資金
- 株式投資型クラウドファンディング
- DESでの振替金
①自己資金
自己資金とは、自分で所有しているお金のことを意味します。
資本金の調達方法として、自己資金を充当することが、一番理想的と言えます。他人からの出資と違い、自己資金の場合、経営権を握られる心配はなく、資本金の使い道も自由です。
また、自己資金をどのくらい準備できるかによって、受けられる融資金額(借入金)も変わります。
例えば、日本政策金融公庫の融資では、希望する融資額の10分の1の自己資金が必要です。(10%の自己資金さえあれば、必ず融資を受けられるというわけではありません。)
日本政策金融公庫の詳細に関しましては、以下のリンク先をご参照ください。
日本政策金融公庫の融資の流れ【注意点】
なお、いわゆる「タンス預金」による払い込みは、見せ金と疑われる危険性があります。
何故なら、タンス預金は、その発生源が不明確なためです。そのため、貯金をする際には、金融機関の預金口座で行い、その貯蓄の過程を明らかにすることが有用です。
②出資金
株式会社の場合は出資を受けた場合、株式を発行します。
株式の発行によって得られた資金は返済する必要はありません。
また、株価は創業者が自由に決めることができます。
創業者の経歴が特別なものであった場合や、会社に特別な将来性がある場合、ベンチャーキャピタル(会社の成長を見込んで株式を引き受ける投資ファンド)やエンジェル投資家(スタートアップ企業やベンチャー企業に対して投資をする個人投資家)からの出資を受けることもできます。
【注意点】
株主の株保有率には注意が必要です。原則として、出資してもらうと相手に議決権(経営権)が生じます。経営者の出資額より他の人の出資額が多くなった場合、会社の決定権を握られてしまう可能性があります。
また、複数人で出資すると自分の議決権割合が低くなる恐れがあります。
経営者は、全体の株数の3分の2以上、あるいは最低でも半分以上を保有しておく必要があることを認識しておきましょう。
③クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指します。
クラウドファンディングのうち、「株式投資型クラウドファンディング」と呼ばれるものに関しては返済義務がなく、資本金の計上が可能です。クラウドファンディングの場合、宣伝効果も期待できるため、資金調達の段階から顧客獲得も見込めるというメリットがあります。
【注意点】
まず、魅力的な事業内容でなければ資金調達は難しいです。
また、資金調達までの期間が長く、管理コストが高くなる恐れがあります。
更に、事業内容や商品を競合他社に模倣される可能性もあります。
④DESでの振替金
DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、借入金(債務)を株式化して資本金に計上することです。役員からの借入金を資本金に振り替えることが可能となります。
【注意点】
資本金額が1億円を超えると、軽減税率の適用、年800万円の交際費枠の活用、繰越欠損金を全額控除など、さまざまな税制上の優遇措置の適用が受けられなくなります。外形標準課税が適用され、法人住民税の均等割りも増加します。
また、出資額が増えることになるため、配当負担が増加することになります。
資本金はいくら必要なのか?
2006年の会社法成立に伴い最低資本金制度は撤廃されました。理論上は資本金0円でも1円でも、創業者の意向により設立が可能です。
但し、実際には会社設立費用(登録免許税、定款認証印紙代、定款手数料)や、事務所賃料、備品購入、税理士費用等がかかります。
また、資本金が少ないと、金融機関からの融資も受けづらくなります。
よって、資本金の目安は1,000万円以下の範囲で、できる限り大きい額をおすすめいたします。
資本金が多い場合のメリット
資本金が多い場合、会社にそれだけの財産的基礎があることの裏付けとなりますので、対外的な信用度が上がり、取引先を拡大しやすくなります。
また、少々の損失を計上しても、債務超過にはなりにくいというメリットもあります。
更に、創業して間もない会社は、一般的には資本金の2倍程度の借入れが可能と言われているように、資本金が大きいほど、それだけ融資が受けられるというメリットがあります。
資本金が多い場合のデメリット
資本金が1,000万円を超えると、設立1年目より消費税の納付義務が発生する(1,000万円以下の場合、免税)、法人住民税が高くなる、登録免許税が高くなるなど、税制面で優遇が受けられなくなります。
更に、資本金額が1億円を超えると、軽減税率の適用、年800万円の交際費枠の活用、繰越欠損金を全額控除など、さまざまな税制上の優遇措置の適用が受けられなくなります。
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起業時の融資はどこに相談すればいい?資本金は会社設立後の借り入れ限度額にも影響を与える
会社設立後に融資を受けるには、ある程度の資本金が必要とされます。資本金額と同じ金額、もしくは2倍程度まで融資してもらえるのが一般的です。
最低でも資本金は300万円用意しておくことが望ましいでしょう。
また、金融機関から融資を受ける際、資本金と借入金の比率にも注意が必要です。
資本金の額に対して借入希望額が大き過ぎると、融資審査に通過するのは難しくなります。自己資本比率は30%〜50%確保しておくのが望ましいでしょう。
- 例:借入希望額が1,000万円なら、300万円〜500万円の自己資金を準備しておく
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資本金は後から増やすこともできる
資本金は会社設立した後からでも増やすことができます(増資)。
比較的少額な資本で会社を設立し、事業が軌道に乗ってから増資するのも手段の一つです。増資には種類があり、主な増資の方法は以下の通りです。
公募増資 | 新しい株式を発行するにあたり、不特定かつ多数の投資家に対して取得の申し込みを勧誘すること |
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株主割当増資 | すべての既存株主にその持株割合に応じて新株式を引き受ける権利を与えること |
第三者割当増資 | 特定の第三者を対象に有償で新株を発行すること |
増資をするメリット
増資によって払い込まれた資金は、返済不要かつ用途の制限もないため、会社は自由に資金を利用することができます。
また、資本金の金額が大きいほど会社の基礎財産があり安定しているとされ、対外的な信用力が高くなります。増資をすればさらに信用力を高めることができるでしょう。
そして、増資により、資本(純資産)が増えることになるため、自己資本比率(自己資本が総資産に占める割合)があがり、財務状況が改善します。
増資をするデメリット
増資の方法によっては、持ち株の比率が変わることがあり、オーナーによる経営権が弱まる恐れがあります。
また、資本金が大きくなると、さまざまな税制上の優遇措置の適用が受けられなくなります。
更に、発行株式数が増えれば、一株当たりの配当金が減少する可能性があります。増資すると登記事項に変更が生じるため、コストがかかることも考慮しておきましょう。
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金融機関などからの借入金を資本金に計上することはできません。
しかし、借入金以外に資本金にできるお金はあります。経営者の方針にあった調達方法で資本金を準備すべきといえるでしょう。資本金に関するお悩みは専門家への相談がおすすめです。
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