法人が銀行融資を受けるには?融資の流れや審査のポイントを詳しく解説
目次
法人において、銀行融資は最も一般的な資金調達手段です。銀行融資を受けるためには審査に通る必要があります。
本コラムでは、銀行融資の基礎知識や融資の流れ、審査のポイントなどを詳しく解説いたします。
【基礎知識】銀行融資とは?
銀行融資とは、銀行が法人や個人事業主に対して、事業用資金を貸し出す制度のことです。
主な事業資金の使途として、新規事業の立ち上げや経営資金の維持、成長戦略の実行などが挙げられます。
銀行は審査を実施し、借り手の信用力や返済能力を評価した上で、融資が実行可能か判断します。
一般に、個人事業主よりも法人の方が審査は通りやすいと言われています。
個人事業主の融資に関しては、銀行より、日本政策金融公庫などの政府系金融機関や、地銀、信用金庫などが向いています。
銀行融資の種類
銀行融資にはいくつかの種類があり、主に以下の3つに分けられます。
【プロパー融資】
- 概要
信用保証協会の保証を利用せずに民間の金融機関が貸し倒れリスクを独自で負い融資をする形態 - 特徴
金利… 様々
限度額…上限なし
審査… 厳しい
保証料…なし
【信用保証協会の保証付き融資】
- 概要
信用保証協会が融資の保証を行い融資する形態 - 特徴
金利… 銀行が変わっても一定
限度額…上限あり
審査… 比較的やさしい
保証料…あり
【ビジネスローン】
- 概要
事業資金専用のローン商品。申し込めるのは法人経営者および個人事業主のみで、事業を営んでいない個人は対象とならない。 - 特徴
金利… 高い
限度額…借入可能額は低め
審査… 比較的やさしく、融資までのスピードが速い
保証人・担保…原則なし
銀行融資の金利
銀行融資における金利相場は約1~15%程度です。
金利は借入の種類や利用者の信用状況によって異なります。
また、融資期間が長くなるとそれに比例して金利も高くなる傾向にあります。
銀行から融資を受けるメリット・デメリット
銀行融資のメリット
■金利が低め
銀行融資の金利は2%程度からという場合が多く、他の資金調達手段に比べれば低めといえます。
■融資限度額が大きい
銀行融資は限度額が高めに設定されていることが多く、設備投資など大きな資金が必要となる場合にも対応可能です。
■融資の実績が信用力につながる
銀行融資を受けることは事業計画を認められたという証明でもあり、信用の向上につながります。一度大手の銀行で借入ができれば、次の融資審査でも有利に働きます。
銀行融資のデメリット
■融資実行まで時間がかかる
銀行融資は審査や担当者との面談に時間を要します。申込から融資実行まで2週間から1ヶ月程度かかる場合が多いです。
■審査が厳しい
銀行は貸倒れリスクを避けるために、審査基準を設けて厳しくチェックします。融資を行う条件として、信用保証協会の保証や不動産などの担保の提示を求められることもあります。
法人が銀行融資を受ける流れ
法人が銀行融資を受ける流れは、一般に以下の通りです。
- 相談・申し込み
- 必要書類の提出
- 融資担当者との面談
- 銀行による審査
- 融資の実行
①相談・申し込み
申し込む前に、銀行窓口で事前相談するのがおすすめです。
融資に必要な書類、融資枠、返済方法、借入期間などを確認することができます。
申し込みには以下の3通りの方法があります。
- 銀行の窓口で申し込む
- 法人営業に来た担当者を経由して申し込む
- 認定支援機関に相談して申し込む
※認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、金融機関等)です。
②必要書類の提出
融資申込書とともに、必要書類を提出します。
必要書類は金融機関や融資商品により異なりますが、一般的に求められる書類は以下の通りです。
【必要書類】
- 登記簿謄本
- 決算書(損益計算書・貸借対照表)
- 事業計画書
- 試算表
- 資金繰り表
- 印鑑証明書
- 納税証明書
- 確定申告書
- 銀行取引明細書 など
すぐに取り寄せられない書類もあるため、余裕を持って準備しておくことが大切です。
(上記は一例です。場合によっては、上記以外の書類提出を求められる場合もあります。)
③融資担当者との面談
銀行で融資を申し込む場合、融資担当者との面談があります。
書類だけでは判断できない事業者の人物像なども見られます。
事業内容、融資の必要性、希望融資額を明確に説明できるようにしておきましょう。
【面談で質問されること】
- 事業が具体的に実行できるのか(差別化要因、ターゲット、売上と経費の根拠)
- 自己資金はどれくらいあるか、どのように調達したか
- 融資で得た資金を何に、どのように使うのか
- 融資で得た資金をどうのように返済していくのか など
④銀行による審査
銀行は提出書類や面談をもとに融資すべきかどうかを審査します。それらの内容から、融資の可否、融資額や金利、返済期間などの条件を決定します。
書類不備があったり、追加書類が必要になったりした場合は、担当者から連絡が来るため改めて提出が求められます。
審査には一定の期間を要し、プロパー融資と保証付き融資でかかる期間は異なります。(プロパー融資:2~3週間程度、保証付き融資:1ヶ月~1ヶ月半程度)
⑤融資の実行
審査に通過すると、審査通過の通知と契約手続きの案内の連絡がきます。契約書を交わしたら、指定口座に融資額が入金されます。
融資決定から着金までの期間は約1週間~2ヶ月程度です。返済に関しても、契約条件に基づき、借入金の返済を行います。
信用保証協会を経由する場合の流れ
信用保証協会の保証付き融資の場合、一般的に、以下の流れで融資を申し込みます。
- 銀行に融資を申し込む
- 銀行経由で保証協会へ申し込む
- 信用保証協会による審査
- 審査が通ったら金融機関が融資を実行
- 融資した金融機関へ返済
法人が銀行融資の審査に受かるための7つのポイント
金融機関は審査基準を公開しておりません。
審査通過のためには、下記のポイントを意識することが大切です。
- 財務状況の健全性をアピールする
- 返済計画や返済原資を明確にする
- 借入希望額や資金使途を明確にする
- 格付けを良くする
- 担保・保証人を用意する
- 税金や公共料金などは期日内に支払う
- 銀行と良好な関係を築く
①財務状況の健全性をアピールする
財務状況の健全性とは、安定的な利益が出ているか、事業の成長が見込めるか、他の金融機関から借り入れはないかなど、様々な切り口から判断されます。
財務状況が悪いと、返済や利息の支払いが滞る危険性があるため、非常に重視されるポイントとなります。
財務状況は貸借対照表や損益計算書などの決算書を見ることで判断できます。
損益決算書で重視されるポイントは営業利益と経常利益です。
営業利益は本業での利益を、経常利益は企業が通常行っている業務の中で得た利益を指します。
また、貸借対照表で重視されるポイントは、純資産です。純資産は企業の総資産から負債を差し引いた、会社の正味財産を示します。
②返済の見通しや返済原資を明確にする
銀行は返済能力の有無を厳しくチェックします。
- どのような事業なのか
- どれくらいの売上を見込めるのか
- 計画の実現に無理がないか
- 返済が現実的であるか など
創業前やスタートアップ企業などでは実績に乏しく、融資されないこともあります。
そこで、事業計画書や資金繰り表を作成し、収益予定と返済見込みを客観的に説明する必要があります。
説得力のある事業計画書を作成し、収益見込みと返済の見通しを伝えることが重要です。
事業計画や資金繰り表の詳細につきましては、以下のリンク先で詳しく解説しております。
融資を受けるための事業計画書の書き方とは?③借入希望額や資金使途を明確にする
借入希望額が適切か、資金の使い道は適切か、などもチェックされます。借入希望額の妥当性だけでなく、借入金の使途も重要です。
資金の主な使い道には、設備資金と運転資金の2種類が挙げられます。運転資金は不明瞭な部分が多くなりがちなため注意が必要です。
希望額の数値の根拠について、客観的に説明する必要があります。
④格付けを良くする
格付けとは、銀行が融資を行うか否か、また融資の条件を判断する際の基準のことをいいます。
銀行は格付けをもとに融資の可否や融資する場合の金利を判断します。
定量評価と定性評価をもとに5つの債務区分に振り分けし、最上位である「正常先」に分類されると融資を受けられ、融資条件も良くなります。そのため、財務状況が健全で返済能力があることを証明する必要があります。
定量評価:収益性、安全性、成長性、債務返済能力
定性評価:経営者の人柄や経営方針など
①正常先 | 業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がない債務者 |
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②要注意先 | 貸出条件や、元本返済や利息の支払い、財務内容に問題があるなど、今後の管理に注意を要する債務者 |
③破綻懸念先 | 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者 |
④実質破綻先 | 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者 |
⑤破綻先 | 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者 |
⑤担保・保証人を用意する
経営者に資産があれば、返済能力が高いと判断してくれる可能性が高くなります。また、担保や保証人を用意できた方が審査で有利になります。
新設会社の場合、法人融資にあたり、経営者が連帯保証人になるように要求されるケースも多くなります。
⑥税金や公共料金などは期日内に支払う
公共料金や税金は必ず期日内に支払うように、普段から気を付けましょう。支払うべきお金を支払っていないと、返済能力がないと判断されてしまうことになります。
クレジットカードの返済が滞っていた場合も、信用情報に傷がついている恐れがあるため注意が必要です。
⑦銀行と良好な関係を築く
銀行と日ごろから良好な関係を築き、信頼関係を作っておくことはとても重要です。担当者と定期的にコミュニケーションをとり、会社の状況について話す機会を設けましょう。
銀行から資料の提出を求められた際には、素直にその資料を提出することをお勧めします。
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法人が銀行融資を断られるケースとは?
銀行融資を断られる理由は明確にされませんが、一般的には、以下のように様々な理由が考えられます。
- 税金や公共料金などを滞納している
- 自己資金が少ない
- 他行やノンバンクから借入をしている
- 決算が赤字である
- 融資枠がピークに達している
- リスケ中または過去にリスケしていた
- 事業計画書が雑・信憑性がない など
銀行融資を受けるための対処法につきましては、以下のリンク先で詳しく解説しております。
銀行から融資を断られる9の理由とは?法人の銀行融資は認定経営革新等支援機関であるキークレアがサポートします!
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銀行融資以外の資金調達方法
資金調達の方法としては、銀行融資以外にも様々なものがあります。銀行からの融資にこだわらず、自社の事業状況にあった資金調達方法を検討すべきです。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、中小企業、小規模事業者、農林漁業者に対して、融資や信用保険を行っている政府系金融機関です。
そのため、創業期にある企業や中小企業への支援に積極的に取り組んでくれる点が特徴的です。
また、銀行と比較すると金利が安めに設定されています。担保や保証人なしでも融資は可能ですが、民間の金融機関と同様に審査が必要です。
融資のご相談につきましては、以下のリンク先で詳しく解説しております。
日本政策金融公庫の融資の流れ地方自治体の融資制度
(中小企業)制度融資とは、自治体と金融機関、信用保証協会の3つの機関が連携して実施する融資制度です。
銀行融資と比較して金利が低く設定されています。融資期間も5年以上と比較的長く、プロパー融資が難しい会社にはおすすめの資金調達です。
但し、税金の滞納があると、制度融資は利用できないことがあります。また、自治体によって制度が異なるため、事前に確認が必要です。
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