医療法人の資金調達方法9選|成功させるポイントも解説
医療法人の設立や、地域医療を支えるための安定的な運営には、どうしても多額の資金が不可欠です。
しかし、医療法人はその高い公益性という側面から、株式会社のように株式を発行して広く資金を集めることができません。そのため、資金調達の方法が限定されており、戦略的な準備が求められます。
この記事では、医療法人の資金調達における特有の事情や具体的な方法、そして資金調達を成功させるためのポイントについて、医業経営サポートに豊富な実績を持つキークレアが解説します。
医療法人の資金調達の特徴
医療法人の経営には、高額な医療機器の導入や更新、医薬品の仕入れ、そして何より専門スタッフの人件費など、継続的に多額の資金が必要となります。
特に主な収入源である診療報酬は、請求してから実際に入金されるまで約2ヶ月ものタイムラグが生じます。このため、職員の給与や経費の支払いが先行してしまい、資金繰りがタイトになりがちです。
また、医療法人は非営利性・公益性が求められるため、株式会社のような株式発行や、一般的な社債発行による広範な資金調達は原則として認められていません。
このように、営利法人とは異なる制約の中で、いかに資金を確保するかが経営の重要課題となっています。
医療法人における資金調達の必要性
質の高い医療を安定的に提供し続けるためには、最新の医療機器への投資、優秀な医療スタッフの確保・育成、そして日々の運転資金が欠かせません。これらには当然ながら多額の費用がかかりますが、医療法人の収入源は基本的に診療報酬に限られています。
診療報酬は、すでにお伝えした通り入金サイクルが遅いうえ、国の定める公定価格であるため、急激な増収は望めません。日々の運転資金や将来の設備投資資金を診療報酬だけで賄うことには限界があるため、外部からの計画的な資金調達が、経営の安定と医療の質向上のために不可欠となるのです。
医療法人の資金調達方法9選
医療法人が利用できる資金調達方法は、営利法人とは異なる特徴があります。主な収入源である診療報酬は入金までに時間がかかるため、短期的な運転資金の確保が課題となりやすいです。
一方で、高額な医療機器の導入や施設の改修など、大規模な設備投資も定期的に発生します。医療法人には、こうした特有のニーズに応じた多様な資金調達の選択肢が存在します。
代表的な方法は以下の通りです。それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解し、自法人の状況や目的に合わせて最適な手段を選ぶことが重要です。ここでは、9つの方法を具体的に解説していきます。
①金融機関からの融資
銀行や信用金庫、あるいは政府系金融機関(日本政策金融公庫など)からの借入は、最も一般的で、まず検討すべき方法と言えるでしょう。
一度に多額の資金を調達しやすく、比較的長期の返済期間を設定できる点が強みです。ただし、融資を受けるには厳格な審査、特に事業計画の妥当性や返済能力が厳しく問われます。
キークレアがご支援する中でも、担保(不動産など)の有無や業績によって、金利や融資可否が大きく左右されるケースを多く見てきました。信用度が低いと判断されると、融資が難しくなるか、金利が高くなる可能性があります。
②医療機関債
医療機関債は、医療法人が施設・設備資金(運転資金には使えません)を調達するために発行する債券のことです。
利用するには、原則として「3事業年度連続で黒字であること」などの厳しい財務要件を満たす必要があります。また、発行総額が一定額(例:1億円)以上の場合、公認会計士等の監査報告書が必要となるなどハードルは高めです。
しかし、固定金利で安定した返済計画が立てやすく、満期一括償還(期限が来たら元本を一度に返す)が一般的であり、無担保・無保証人で利用できる場合があるのが大きな魅力です。
③診療報酬ファクタリング
診療報酬ファクタリングとは、医療機関が将来受け取る予定の診療報酬(診療報酬債権)をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する手法を指します。
最大のメリットは、入金まで約2ヶ月かかる診療報酬を、最短即日~1週間程度で資金化できる迅速性です。これは金融機関からの「借入」ではないため負債が増えず、信用情報にも影響しません。
無担保・無保証人で利用できる場合がほとんどですが、手数料が融資よりも高くなる傾向がある点には留意が必要です。
④シンジケート・ローン
シンジケート・ローンとは、一件の金融機関では対応が難しい巨額の資金調達ニーズに対し、複数の金融機関が協調(シンジケート団を組成)して融資を行う方法です。
幹事金融機関(アレンジャー)が窓口となり、金利や返済期間などの条件交渉を一本化できるため、医療法人側の手間が軽減されます。病院の新築や大規模な増改築などに適しています。
利用にあたっては、詳細な事業計画書の提出が必須であり、アレンジャーに対して所定の手数料(アレンジメント・フィー)が発生します。
⑤コミットメント・ライン
コミットメント・ライン(融資枠契約)とは、金融機関との間で、あらかじめ設定した期間・融資枠(上限額)の範囲内であれば、医療法人側の請求のみで、その都度の審査なしに融資を実行することを法的に「約束(コミット)」する契約です。
突発的な資金需要や、診療報酬の入金遅延などに備える「保険」のような役割を果たします。ただし、実際に融資を利用したかどうかにかかわらず、設定した融資枠全体に対して所定の手数料(コミットメント・フィー)を支払う必要があります。
⑥リースバック方式
リースバック方式(セールス・アンド・リースバック)とは、医療法人が所有している医療機器や不動産(病院・クリニックの建物など)をリース会社や投資家に一度売却し、同時にその資産をリース契約することで継続して使用する方法です。
資産の売却によってまとまった現金を調達でき、その資金使途は原則として自由です。所有権は移転しますが、診療を継続できる点が特徴です。
ただし、売却価格が市場価格より低くなる可能性や、毎月のリース料が発生するため、長期的なコストを試算する必要があります。
⑦MS法人の設立
S法人(メディカル・サービス法人)とは、医療法人の関連業務(経理、清掃、不動産賃貸など)を担うために設立される営利法人を指します。
医療法人自体は株式発行ができませんが、MS法人を設立し、MS法人が株式や社債を発行して資金調達を行うという間接的な手法が考えられます。
また、MS法人に明確な事業実態と収益性があれば、MS法人として金融機関から融資を受けることも可能でもあり、不動産を所有していれば、それを担保にすることで融資が受けやすくなる場合もあります。
MS法人とは?医療法人との違いなど基礎知識を税理士が解説⑧社会医療法人債
社会医療法人債とは、救急医療やへき地医療など、特に公益性の高い医療を担う「社会医療法人」として都道府県の認定を受けた法人のみ発行が認められる債券です。
社会医療法人への移行自体、厳格な要件と監査をクリアする必要がありハードルが非常に高いですが、認定されれば一般の投資家から広く資金を集めることが可能になります。
医療機関債と同様に、固定金利、満期一括償還、無担保・無保証人で発行できるケースが多く、地域医療の拠点整備など大規模な資金調達に適しています。
⑨基金
2007(平成19)年の医療法改正により、従来の「出資持分あり医療法人」は新たに設立できなくなりました。これに伴い、「出資」による資金調達は行えなくなり、代わりに「基金」制度が導入されました。
基金とは、法人の設立や運営のために拠出される金銭等であり、拠出者(個人や法人)に対して返還義務を負うものです。ただし、返還には定時社員総会の決議や、純資産額が基金の総額を上回っていることなど、一定の要件があります。
基金は純資産の部に計上されますが、株式会社の「資本金」とは異なり、持分権は発生しません。
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医療法人の資金調達を成功させるためのポイント
ここまで多様な資金調達方法を紹介してきましたが、どの方法を選んだとしても、審査や条件交渉があり、必ずしも希望通りに資金を確保できるわけではありません。
資金調達を成功させ、安定した病院・クリニック経営を実現するためには、やはり日頃からの準備が不可欠です。キークレアがご支援する上で重視している、特に重要なポイントを解説します。
業績を改善する
資金の出し手(金融機関など)が最も重視するのは、言うまでもなく「貸したお金をきちんと返済してくれるか」という返済能力です。
赤字が続いていたり、債務超過であったりするなど業績が悪ければ、融資を受けられない可能性が高くなります。高額融資を申し込む前に、まずは足元の経営改善に取り組みましょう。
診療報酬の請求漏れをなくし適切に回収する、医薬品や消耗品代のコストを見直す、そして自己資金を少しでも増やすといった地道な努力が、金融機関からの信頼を高め、審査通過の可能性を高めます。
実効性の高い経営計画を作成する
資金調達の審査において、経営計画書(事業計画書)は最も重要な書類です。これは開業時の創業融資であっても、開業後の追加融資であっても変わりありません。
金融機関を納得させるためには、以下の点を具体的かつ客観的に示す必要があります。
- 借入が必要な理由(なぜ今、その投資が必要なのか)
- 必要な借入額(その金額の根拠は明確か)
- 返済計画(投資によってどれだけ収益が上がり、何年で返済するか)
- 希望する金利や据置期間(なぜその金利・据置期間を希望するのか)
特に、追加融資の場合は「経営難だから借りる」と判断されないよう、将来性や改善策を盛り込んだ説得力のある計画が不可欠です。
目的に合った資金調達方法を選ぶ
資金調達は、目的や緊急度に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。
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高額かつ長期的な資金調達:
病院の新築や高額医療機器の導入には、金融機関の融資や、要件を満たせば医療機関債・社会医療法人債が適しています。 -
審査の通りやすさを重視する資金調達:
シンジケート・ローン(幹事金融機関の信用力による)や、資産があればリースバック方式などが考えられます。 -
短期的な資金調達:
「診療報酬入金まであと少し」といった急な資金需要には、診療報酬ファクタリングやコミットメント・ラインが迅速に対応できます。
状況を見誤り、ミスマッチな方法を選ぶとかえって資金繰りを圧迫する失敗にも繋がります。
専門家に依頼する
融資や債券発行のための資金調達手続きには、財務分析や将来の収支予測に基づいた、精緻な事業計画書や申請書類の作成が必要です。
院長先生や事務長が、日々の診療や病院運営の傍ら、これらの複雑な書類を準備するのは非常に大きな負担となり、本来割くべき本業への時間を削ってしまうことにもなりかねません。
医業経営と資金調達に精通した税理士などの専門家に依頼することで、これらの負担を大幅に軽減できます。
専門家は、金融機関の視点を踏まえた審査に通りやすい事業計画書の作成をサポートするだけでなく、現状の経営課題の分析、中長期的な資金計画や資金繰り改善のアドバイスも可能です。
医業に強いキークレアができるサポート
キークレア税理士法人は、医業経営のサポートに豊富な実績を持つ、国が認定した「認定経営革新等支援機関」です。これは、中小企業の経営課題解決、特に資金調達支援の専門家であることの証でもあります。
しかし、キークレアが医療法人の資金調達でご支援できることは、単なる書類作成代行ではありません。まずは現状の財務を徹底的に分析し、経営課題を明確にします。
その上で、金融機関を納得させられる精度の高い事業計画書の作成をサポートし、必要であれば融資交渉にも同席します。調達後も、安定経営に向けた経営改善や資金繰り管理まで、継続的に伴走支援いたします。
医療法人の資金調達をお考えなら、ぜひキークレア税理士法人にご相談ください
医療法人の経営は、診療報酬の入金サイクルや高額な設備投資の必要性など、一般企業とは異なる特有の資金繰りの課題を抱えています。また、その公益性から資金調達の方法も限定されており、安定経営のためには専門的な知識と計画性が不可欠です。
本記事では、金融機関からの融資、医療機関債、診療報酬ファクタリングなど9つの資金調達方法と、それらを成功させるためのポイントを解説しました。しかし、「どの方法が自法人にとって最適なのか」「金融機関を納得させられる事業計画をどう作成すればよいか」など、お悩みの経営者様も多いかと思います。
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