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孫への生前贈与と相続対策非課税で行うやり方と注意点

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

今回は孫に対する生前贈与についてご説明致します。

生前贈与とは、贈与をする人が存命のうちに贈与を受ける人に財産を無償で譲り渡すことです。孫は法定相続人には該当しないため、孫に財産を承継したい場合は、生前贈与がおすすめです。

また、相続税対策としても生前贈与は有効な方法と言えますが、メリットだけでなく、デメリットや注意点も存在します。以下、詳しくご説明していきます。

孫への生前贈与のメリット

孫への生前贈与は、いくつかのメリットがあります。

まずは、確実に孫に財産を譲ることができることです。通常、まず自分の子供に相続されるため、孫に渡したいと思っていても、自分の子供の代で費消されたり、財産が少なくなってしまったりしてしまうことがあります。

また、生前贈与をすることで、相続時の財産を減らすことができるため、相続税対策にもなります。

また、相続税の計算に持ち戻される3年(改正後7年)間の生前贈与加算の対象外となることもメリットの一つです。

主なメリット

  • 確実に孫に財産を譲れる
  • 相続税対策になる
  • 3年(改正後7年)間の生前贈与加算の対象外となる

生前に孫への贈与を非課税で行う5つやり方

原則として、孫への生前贈与には贈与税がかかります。

なお、通常必要となる生活費や教育にかかる資金(授業料、教材代、塾代等)を必要な都度贈与する場合は、非課税と規定されています。

しかし、これらは将来分を含めて一括贈与してしまうと課税対象となるので注意が必要です。

生活費や教育資金以外にも、控除や特例制度を上手に使えば、非課税で孫に財産を譲ることができます。 以下、贈与税が非課税となる制度について、ご説明致します。

年間110万円まで非課税(暦年課税制度)

1年間(1月1日から12月31日)に贈与された財産の合計額が基礎控除額110万円以下であれば、贈与税はかかりません。これを暦年課税制度(暦年贈与)といいます。

贈与額が110万円以下である場合は申告などの手続きは不要ですが、税務署から問合せがあったときに備えて、贈与契約書は締結しておくことをおすすめ致します。

これは、孫だけではなく誰に贈与したとしても同様です。また、贈与した財産の使用目的なども定める必要はありません。

なお、生前贈与をしたい孫がまだ幼い場合、親権者が贈与に同意する旨の意思表示をすることで贈与契約が成立します。つまり、祖父母と孫の親(祖父母の子)が贈与契約を結ぶことになります。

暦年贈与は、早期から始め、何年も続けることで多くの金額を贈与できるというメリットがあります。しかし、定期贈与とみなされ、課税されるリスクがあるので注意が必要です。

相続時精算課税制度の非課税枠2500万円との違い

贈与税の課税制度は2種類あり、先ほどご説明した暦年課税制度と相続時精算課税制度です。
主な違いは、表のとおりです。

暦年課税制度
  • 1月1日から12月31日の1年間に受けた贈与に対して課税される制度
  • 年間110万円までの贈与は非課税
除籍謄本
  • 最大2,500万円までの贈与ができ、贈与時には贈与税がかからない制度
  • 贈与者が亡くなったときに、生前贈与と相続財産の合計額から、一括して相続税として納税する制度

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、贈与することが要件で、贈与税の申告書を提出する際に、相続時精算課税選択届出書を添付することで適用できます。

また、贈与した財産の額が2,500万円を超えた場合は、超えた金額に対して一律20%の贈与税がかかりますが、相続時に計算された相続税から控除されます。

令和5年度税制改正により、暦年課税制度のみにあった非課税枠(年間110万円)が、相続時精算課税制度にも創設されました。

これにより、相続時精算課税制度を選択した場合、年間110万円以内の贈与であれば、相続時に加算されることは無いということになります。

教育資金の贈与の特例により1500万円まで非課税

教育資金の贈与の特例とは、直系尊属(祖父母や父母等)から、30歳未満の孫や子へ教育資金を一括贈与した場合、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が非課税となる特例です。

令和5年度税制改正で、適用期限が2023年3月31日から2026年3月31日まで延長されました。

この制度を利用する場合は、信託銀行などの金融機関と教育資金管理契約を結び、専用の教育資金口座を開設する必要があります。
口座から資金を引き出したときは、定められた期限までに金融機関に領収書を提出する必要があります。

この特例の対象となるものは主に下記のものが該当します。

  • 入学金や授業料
  • 塾や習い事の月謝
  • 通学定期代
  • 留学費用

なお、贈与者が死亡し、贈与資金のうち教育資金として費消していない残額があるときで、贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合は、相続税が課せられることとなったので、注意が必要です。

また、受贈者の年齢が30歳に達した時点で、贈与された教育資金のうち使い切れなかった残額がある場合は、贈与税が課せられます(このとき課される贈与税は一般税率のため、税金が高めに計算されます)。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

結婚・子育て資金の一括贈与の特例とは、親や祖父母から結婚・子育てのための資金を一括で贈与された場合に、1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。

この制度も、令和5年度税制改正で適用期限が2023年3月31日から2025年3月31日まで延長されました。

この制度を利用する場合は、信託銀行などの金融機関と結婚・子育て資金管理契約を結び、専用の結婚・子育て資金口座を開設する必要があります。

口座から資金を引き出したときは、定められた期限までに金融機関に領収書を提出する必要があります。

なお、対象となる資金は表のとおりです。

1000万円まで ・不妊治療や妊婦検診に要する費用 合計1000万円まで非課税
300万円まで ・結婚式の費用(婚姻日の1年前の日以降)

また、この制度の注意点としては、贈与者が死亡した場合、結婚・子育て資金の残額は相続税の課税対象となることです。

住宅取得資金等の贈与の特例を利用

住宅取得資金等の贈与とは、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自分が住むための家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、最大1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。

省エネ住宅の場合は1000万円、それ以外の住宅の場合は500万円まで非課税となります。

受贈者の合計所得金額が2,000万円(家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円)以下であることや、贈与した年の翌年3月15日までに家屋の新築をすることなどが要件です。

なお、この制度を利用すると、相続の時に小規模宅地等の特例の「家なき子特例」が適用できなくなるため、適用は慎重な検討が必要です。

また、この制度の適用期限は2023年12月末までですので、検討されている方は早めに税理士にご相談することをおすすめします。

生命保険の受取人を孫にする

これは、死亡時の生命保険金の受取人を孫に設定して財産を譲る方法です。

孫が代襲相続などにより法定相続人に該当するのであれば、生命保険の非課税枠(法定相続人の数×500万円)を受けられるため、生命保険のみの相続であれば、税金がかからないこともあります。

なお、孫が代襲相続などにより法定相続人になっていない場合は、生命保険の非課税枠は使用不可、亡くなる前3年以内の贈与は加算、相続税は2割加算、となってしまうので、注意が必要です。

選択しても問題ないケースとしては、財産額が基礎控除額以下の場合です。最初から相続税がかからなければ、税額が増えることもないためです。

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孫への生前贈与で注意すること

ここまで、孫への生前贈与について、メリットや非課税制度についてご説明してきましたが、注意すべきポイントもあります。
ここからは、注意すべき点についてご説明致します。

110万円を毎年同じ時期に同じ金額で贈与しない

定期贈与とは、毎年一定の金額の財産を贈与することが確定している贈与のことをいいます。

例えば100万円を10年間贈与する場合、100万円×10年=1,000万円の贈与を受けることが確定していたものとして扱われてしまうということです。

これに対応するために、以下のことを実施しておくことをおすすめします。

  • 贈与のたび(毎回、毎年)に契約書を作成する。
  • 贈与が行われた証拠を銀行振込などで残しておく。
  • 預金口座は贈与を受けた受贈者自身が管理する。

贈与税の申告が必要な場合がある

暦年贈与で110万円を超える贈与をした場合、相続時精算課税制度を選択した場合は、贈与を受けた年の翌年2/1~3/15までに、贈与税の申告をする必要があります。

また、教育資金の一括贈与の特例や結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用した場合は、金融機関を通して、一定の書類を添付した非課税申告書の提出が必要となります。

相続人の遺留分を考慮する

遺留分とは、相続人の遺言書によっても奪うことができない財産の最低限留保されている分のことをいいます。

この遺留分を侵害されている場合は、侵害している者に対して遺留分に相当する金銭を請求することができます(遺留分侵害額請求権)が、孫への生前贈与は、相続開始前1年以内にされたもの、被相続人と孫が他の相続人に損害を与えることを知ったうえでされたもの、が対象となります。

孫への生前贈与があったことを知らない相続人からすると、自分の最低限留保されている分が減少しているので、気持ちは良くありません。

親族間のトラブル防止のためにも、子供や孫に生前贈与をする場合には、周囲に贈与について説明しておくことをおすすめします。さらには、現金の贈与の場合は、用途も指定することをおすすめします。

生前贈与の3年(改正後7年)以内加算の対象となる場合がある

生前贈与加算とは、相続等によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に暦年贈与によって取得した財産があるときは、その人の相続税の課税価格に贈与財産の贈与時の価額を加算する制度のことを言います。

相続等で財産を取得した場合に適用されますので、孫が財産を相続しなければ、生前贈与加算は対象とならないのですが、例外的に下記の場合は対象となります。

  • 養子縁組や代襲相続で、孫が祖父母の法定相続人になった場合
  • 祖父母の遺言により、孫が財産を受け取る場合
  • 生命保険の受取人が孫になっている場合

使用目的から外れた使用は追徴課税となる

2でご説明した非課税の特例は、定められた使用目的に該当することが適用要件となっています。

したがって、使用目的と違った用途で使用すると、追徴課税の対象になります。使用目的に該当するか判断がつかない場合は、税理士に相談することをおすすめします。

未成年者への生前贈与は税務署から疑われやすい

未成年者(特に幼児)への生前贈与は、実際には孫名義で祖父母が貯金しているだけではないか?などと税務署から疑われやすいです。

疑われないためには、まずは贈与を受けた未成年者が、誰から、いつ、何を、いくら、贈与された、ということの認識を持つことが大事です。

そして、その証拠を残すことが大事ですので、贈与契約書を作成するなどの対処が必要です。

孫への生前贈与に関するQ&A

孫の入院治療費を祖父母が支払うことは、贈与税の課税対象となりますか?

入院治療費は贈与税非課税となります。
2.で生活費の都度贈与は、非課税であるとご説明しましたが、入院治療費は生活費に含まれます。

国税庁の「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」のQ1-1に「「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいいます。

また、治療費や養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除きます。)を含みます。」と記載があります。

孫への土地など不動産を生前贈与することはできますか

土地などの不動産を孫へ生前贈与することは可能です。

生前贈与する土地などが将来的に値上がりすることが予想される場合は、相続時精算課税制度を適用して贈与することが有効です。
相続時精算課税制度を利用した際、相続時に相続財産に含まれるのは贈与時点の価格だからです。

しかし、贈与により不動産の所有者が変わった場合は、不動産登記をする必要があります。
この登記手続きにより、不動産取得税や登録免許税などの別の税金が課されてしまいます。

不動産を生前贈与する場合は、慎重な検討が必要です。

孫へ生前贈与をした財産を祖父母が管理してもいいですか?

孫に生前贈与した財産を祖父母が管理することを禁止する規定があるわけではありませんが、おすすめはできません。

こっそり孫名義の口座を開設し、祖父母がお金を入金して管理している場合や祖父母が入出金のために通帳や銀行印を預かっているケースはよくあります。

しかし、これらは相続が発生した際に、税務署から贈与が成立していないと判断され、被相続人(祖父母)の相続財産の中に含めてください(これを名義預金と言います)、と指摘される可能性があります。

孫への生前贈与を振り込みではなく現金で手渡しでもいいですか?

現金の生前贈与は振り込みでしないといけないという規定はありませんので、現金手渡しすることも可能です。

しかし、これまでご説明してきたように、贈与の証拠を残しておくという意味では、贈与契約書の作成だけでは不十分と考えられます。

贈与契約書を締結し、銀行振り込みをすることで実際にお金が動いた履歴を見えるようにしておくことをおすすめします。

孫へ生前贈与する際、贈与契約書を作成しないとどうなりますか?

贈与が成立する要件は、贈与者のあげるという意思と受贈者のもらうという意思の確認が互いにとれていることです。
したがって、贈与契約書を作成せずとも、贈与契約自体は成立します。

しかし、贈与契約書が無いと、他の親族や税務署から贈与は成立していなかったのでないか?という疑いをかけられる可能性があります。

贈与があったことを証明するためにも、贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
より証拠能力を高めるために公証役場で「確定日付」をもらっておくと、なお良いと考えられます。

お孫さんへの生前贈与や節税対策をお考えの場合はキークレア税理士法人にご相談ください。

今回は孫への生前贈与について、ご説明させて頂きました。財産の承継方法は様々ですが、孫への生前贈与という論点だけで、たくさんの検討事項があります。

なお、お孫さんへ財産を譲る方法は、贈与以外にも、遺言書を書くという方法もあります。
遺言というと、自筆して作成する自筆証書遺言を思い浮かべられるかと思いますが、最も安心な遺言書は、公証役場で作成する公正証書遺言です。

このように、キークレア税理士法人は「孫へ生前贈与したい」という要望があったとき、その言葉の裏にある達成したいこと、本当の希望を叶えるために一番いい方法を検討・ご提案させて頂きます。

生前贈与や節税対策をお考えの場合は是非キークレア税理士法人にご相談ください。

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