法人税が還付されるケースとは?適用要件や計算、仕訳方法など
目次
法人税の還付とは、一定の条件を満たした場合に、すでに納付した法人税額を国から返還してもらえる制度です。
特に中小企業では、当期に赤字(欠損金)が生じた際に、前期が黒字であった場合、相殺して税金を取り戻せる「欠損金の繰戻還付」が資金繰り対策として注目されています。
一方で、中間納付や納付の誤りによって多く納め過ぎた税金が返還されるケースもあります。この記事では、法人税が還付される代表的なケースや適用要件、計算方法、実務で重要となる仕訳処理まで、実務目線でわかりやすく解説します。
法人税の還付とは
法人税の還付とは、法人が国に納付した法人税について、税法上の制度や手続きに基づき返還を受けることをいいます。
法人税の還付が発生する主なケース
- 欠損金の繰戻しによる還付
- 中間申告で税金を納め過ぎていた場合
- 申告内容に誤りがあった場合
法人税の還付金には大きく3種類があり、それぞれ性質や手続きが異なります。以下で詳しく見ていきましょう。
欠損金の繰戻還付
欠損金の繰戻還付とは、当期に発生した赤字(欠損金)を、前期の黒字年度にさかのぼって充当し、その年度に納付した法人税の一部を還付してもらえる制度です。
【例】
~前提条件~
前期:課税所得500万
当期:欠損金額300万
とした場合、
当期の欠損金額300万を、前期の課税所得500万と相殺することで、減少した課税所得300万円分の法人税額を還付してもらえる制度です。
注意点として、前期が黒字で今期が赤字である場合に限り利用できる制度であり、欠損金の繰戻還付の適用には、青色申告・期限内申告・還付請求書の提出などいくつかの要件があります。
要件の詳細ついては後ほど詳しく解説します。
中間申告で税金を納めすぎていた場合
当期の中間申告で税金を納めていたが、確定申告で結果として税額を納めすぎていたことが判明した場合、確定申告の手続きを行うことで、納めすぎていた税額の還付を受けることができます。
申告内容に誤りがあった場合
申告ミスにより納めてしまった税金の還付を受けるには、更正の請求の手続きを行い、税務署に正しい税額を認めてもらう必要があります。
欠損金の還付請求ができる4つの要件
欠損金の繰戻還付による法人税還付は、原則として中小企業のみが対象となるため、資本金1億円以下など一定の要件を満たす必要があり、それに加え次の条件をすべて満たさなければなりません。
- 青色申告を(赤字)と(黒字)の両方の年度で行っていること
- 期限内申告であること
- 所定の還付請求書を提出していること
- 還付所得事業年度の範囲内であること
以下、それぞれの要件を詳しく解説します。
①青色申告を(赤字)と(黒字)の両方の年度で行っていること
欠損金の繰戻還付は、青色申告法人のみが利用できる制度です。そのため、赤字となった今期だけでなく、繰戻しの対象となる前期についても青色申告をしている必要があります。いずれかの年度が白色申告の場合、この制度は利用できません。
②期限内申告であること
今期の青色申告書は、必ず法定申告期限内に提出する必要があります。期限後申告となった場合、原則として欠損金の繰戻還付は認められません。資金繰りの改善を目的とする制度であるため、期限管理は特に重要です。
③所定の還付請求書を提出していること
欠損金の繰戻還付を受けるためには、確定申告書と併せて「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出する必要があります。この様式は国税庁の公式サイトからダウンロード可能です。
国税庁:欠損金の繰戻しによる還付請求書確定申告書だけを提出しても、還付請求書がなければ還付は行われないため注意が必要です。
④還付所得事業年度の範囲内であること
欠損事業年度開始日前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)に欠損金を繰り戻すことができます。これにより、過去に法人税が発生して納付した年度に対して還付請求が可能になります。
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還付金の計算方法
欠損金の繰戻還付による還付金額は、次の計算式で求められます。
~計算式~
還付金額=還付所得事業年度の法人税額 ×(欠損事業年度の欠損金額 ÷ 還付所得事業年度の所得金額)
それぞれの用語の意味は次のとおりです。
- 還付所得事業年度の法人税額
繰戻し対象となる黒字年度に実際に納付した法人税額 - 欠損事業年度の欠損金額
当期に発生した赤字額 - 還付所得事業年度の所得金額
黒字年度の課税所得金額
欠損金額(赤字)が所得金額(黒字)を上回る場合でも、還付計算上は所得金額が上限となります。
計算例
例えば、前期の課税所得が800万円、法人税額が240万円だった会社が、今期に500万円の欠損金を計上したとします。
この場合の還付金額は次のとおりです。
240万円 ×(500万円 ÷ 800万円)= 150万円
つまり、150万円の法人税還付を受けることができます。資金繰りが厳しい時期には、大きな支援となる制度です。
法人税還付の仕訳
法人税の還付を受けた場合、会計処理も正しく行う必要があります。還付が発生する状況によって仕訳方法が異なるため、代表的なケースを見ていきましょう。
仕訳例
中間納付より確定した法人税が多かった場合
中間納付額が確定税額を上回った際、期末において法人税に関する仕訳を以下のように計上します。
(借方)未収還付法人税等 XXX (貸方)法人税等 XXX
還付になった金額分、中間納付時に法人税等として計上していた金額を振替ます。
実際に還付を受けた場合の仕訳は次のとおりです。
(借方)現金預金 XXX (貸方)未収還付法人税 XXX
欠損金の繰戻還付・更正の請求による還付
欠損金の繰戻還付・更正の請求による還付を受けた場合は仕訳を以下のように計上します。
(借方)現金預金 XXX (貸方)雑収入XXX
法人税の繰戻還付と欠損金の繰越控除の違い
法人が赤字(欠損金)を出した場合、税務上は過去に納めた税金を返してもらう「繰戻還付」と、赤字を将来に繰り越して将来の税負担を抑える「欠損金の繰越控除」という2つの制度があります。
繰戻還付は、当期の欠損金を前事業年度に繰り戻して、その年に支払った法人税の還付を請求する制度で、特に中小企業者等が利用できます。
一方、欠損金の繰越控除は、赤字を翌期以降最長10年間にわたり黒字と相殺し、税額を軽減する制度です。
違いは、前者が過去の納税分を取り戻す(資金の即時還付をする)ことを目的とするのに対し、後者は将来の税負担を減らす点です。繰越控除は長期的な節税効果がありますが、将来利益が出ないと効果がなくなるなどの注意点があります。
法人の赤字決算を繰越せる?法人税の還付に関するQ&A
還付金請求により税務調査が入る可能性が高くなるって本当ですか?
還付金請求を行ったからといって、税務調査の対象になりやすくなることはありません。税務署は、還付請求の内容について形式的な確認や書類のチェックを行うことはありますが、これは適正な還付を行うための通常の手続きであり、調査とは異なります。
申告内容が法令に基づき正確に作成され、根拠資料も適切に保存されていれば、過度に心配する必要はありません。還付請求は正当な納税者の権利であり、適切に行う限り不利益な扱いを受けることはありません。
地方税にも欠損金の繰戻還付制度はありますか?
地方税には、法人税のような欠損金の繰戻還付制度はありません。
法人税で繰戻還付を行った場合でも、地方税は翌期以降の欠損金繰越控除によって調整することになります。
法人事業税・法人住民税はいずれも、欠損金は将来年度へ繰り越して控除する仕組みに限られています。
法人の節税や財務管理はキークレア税理士法人にご相談ください。
法人税の還付制度は、資金繰りを改善できる一方で、要件確認や書類作成、会計処理まで高度な専門知識が求められます。キークレア税理士法人では、欠損金の繰戻還付の可否判断から還付請求書の作成、税務調査対応まで一貫してサポートしています。
また、将来を見据えた欠損金の繰越控除や節税戦略の立案も可能です。法人税還付や財務管理でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。