【開業医向け】クリニック開業で行うべき節税対策を税理士が解説!
目次
勤務医として長年の経験を積み重ね、専門知識をもって、いざ個人クリニックを開設した開業医の皆様にとって、大きくこれまでと変わることは何でしょうか。
まずは、経営者になる、ということです。経営者になるということは一つのクリニックを適正に運営していかなければなりません。
医薬品を仕入、診療を行い、人を雇い、業者への支払を行い、利益を積み、それに対する納税を行います。
この納税する金額を計算するときに、節税を行っている人と行っていない人とでは、金額に大きな差が生まれてしまいます。
具体的にどんな方法があるのか一緒に考えていきましょう。
開業医が節税を行う必要性
まず、個人開業医になったことで納めることになる税金は下記のとおりです。
- 所得税
- 事業税
- 住民税
- 消費税(納める義務が発生するタイミングは各クリニックによって異なります) など
所得税・住民税は、勤務医時代も勤めている病院や診療所から支払われる給与から天引きがされていたかと思います。
複数の病院や診療所でアルバイトをされていた方は、確定申告の際に数多くの源泉徴収票を受け取り、納税されていたと思います。
しかし、個人開業医になると、『クリニックの所得(売上から経費をひいた最終の利益)=開業医の皆様の所得』となります。
売上が伸びれば伸びるほど、開業医の皆様の所得が増え、そこに対する所得税の金額もかなり高額となります。
だからといって、経費を多くしすぎて所得税を抑えようとするのはおすすめできません。
本業であるクリニック運営がままならなくなる可能性が高いからです。
新しい医療機器の導入や医業スタッフの雇用は、利益が出ているからこそできる支出です。
クリニックの利益を出し、それに対する納税は必要コストと考え、適正な納税額に収めることが大事といえます。
開業医の節税の基本となる経費計上
所得税の計算基礎となるクリニックの利益(=開業医の所得)は、売上から経費を差し引いた金額です。
この“経費”にはどんなものが含まれるのでしょうか。
嘘や存在しない架空の経費を計上することはできませんが、クリニック運営のためにかかった費用は“経費”となります。
そしてその経費を漏れなく計上することで、適正な納税額へと繋がるのです。
具体的に“経費”となるものを紹介します。
①人件費
一番イメージがつきやすいものが、人件費です。
クリニックで雇用するスタッフの方々への給与・賞与・社会保険料が含まれます。
一般的には、売上に対する比率が約2.5割~3割を占めることが多く、経費のなかで最も多い割合となります。
②設備関係費
これに含まれるものは、医療機器の購入費や修理代、受付事務で使用するPC周辺機器の購入費、クリニックを不動産会社から賃貸している場合はその家賃です。
クリニックの建物や土地を個人開業医の方が所有している場合もあるでしょう。
その場合は、クリニックの事業として使用している部分を床面積で按分をすることで、その割合に応じた減価償却費を設定し経費計上することが可能です。
また、その割合に応じて個人で支払っている固定資産税・火災保険料等も経費になります。
③交際費
交際費は、支払った飲食代やゴルフ代がすべて計上できるわけではありません。
クリニックの運営に関連していることが前提です。
例えば、近隣病院との連携のためや経営指南の御礼などのために支払った分は、妥当な金額のなかで交際費としての計上が可能です。
経費としての計上が認められない(=プライベートな支出と混同しやすい)ことが多い支出であるため、お店でもらった領収証の裏に「誰と何の目的で行ったのか」をメモ書きしておくと良いでしょう。
④会議費
個人開業医となって、これまでにはなかった事務作業も多く発生します。
従業員のいない場所で書類を書いたり、パソコンで作業をすることもあるでしょう。
その際に利用したカフェ代や場所代も、事業のためといえるので経費となります。
⑤出張費
専門的な知識や症例の勉強のため、県外での学会に参加することもあるでしょう。
学会の開催者が負担することもあると思いますが、開業医の皆様が支払った分の旅費(新幹線や飛行機代など)、そして宿泊費も経費として計上が可能です。
⑥福利厚生費
クリニックで雇用しているスタッフ全員を連れて、慰安旅行を行う方もいます。これも福利厚生費として経費になります。
スタッフのリフレッシュの一環として、そしてモチベーションの向上にもつながり、クリニックの運営にも良い影響を与えることができるでしょう。
⑦その他
- 支払報酬 ₋ 弁護士・税理士・社会保険労務士等への報酬
- 広告宣伝費 ₋ クリニックのホームページ制作費や看板設置費など
- 採用研修費 ₋ 新しいスタッフの雇用のために、人材紹介会社へ支払う費用・スタッフの技量アップに繋がる研修費用など
開業医の経費として認められない費用
大雑把に言ってしまえば、個人開業医の皆様のプライベートな支出は“経費”とはなりません。
家族旅行の費用やお子様の学費、私用でいったゴルフ利用料、趣味の娯楽品購入費などは、事業に関連していないため、“経費”に計上することはできません。
また、個人開業医が支払っている生命保険料も経費にはなりません。確定申告の際に、限度額までを「所得控除」として計算します。
開業医が行うべき節税対策
以上でお伝えした“経費”を計上すること以外に、適正な納税額に抑える方法は他にもあります。
むしろこれを活用せずに、支払わなくてもよかった税金を納めてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
既に開業して数年が経っている方でも改めて見直すことで、納税額を減らすことができる可能性があります。
①公的制度の利用
経費化できる金額に限度はありますが、支払った金額を所得から控除することが可能です。
ただし、一括で出ていく金額も大きくなりがちなので生活費を圧迫しない程度の金額を、きちんと算定してから支払うことが大切です。
②所得分散を見直す
高額になる個人開業医の所得を分散させることも可能です。
家族にクリニックを手伝ってもらっている場合、その人に対して給与を支払うことで、家計としての所得は変わらなくても納める所得税を低くすることができます。
例えば、1,000万円の所得を個人開業医1人で負担する場合、納税額は176万4千円となります。
この1,000万円のうち300万円を手伝ってくれている家族へ給与として支払った場合
個人開業医所得700万円、所得税額97万4千円
家族給与300万円、所得税額10万4,500円
となり、合計107万8千円の所得税となります。
この場合、所得を分散させることで約68万円の所得税を抑えることができます。
④減価償却の資産を活用する
減価償却とは、建物や医療機器・車両などの高額な設備投資費を一定期間に配分して経費化する会計処理のことをいいます。
基本的には30万円を超える資産の購入は、購入した年に全額経費化することはできません。
各資産で決められている耐用年数により計算された分の金額しか経費として認められないのです。
ただ、資産の金額が高ければ経費として計上することのできる金額が大きくなるので、売上が伸びて所得が高くなりそうな年に、高スペックな医療機器などを導入し、経費を戦略的に作ることが可能となります。
⑤医療法人にする
医療法人にする=クリニックの所得が個人開業医の所得から切り離される、ということです。
日本の所得税は累進課税制度を適用しているため、クリニックの利益が出れば出るほど、個人開業医の所得が増え、所得税負担が増えてしまいます。
クリニックの利益が1,800万円を超えると40%、4,000万円を超えると45%もの所得税が課されるのです。所得の約半分を税金で持っていかれてしまうということです。
そこで、法人化することで、医師個人は医療法人から役員報酬として給与をもらうことになり、所得税を納める金額をコントロールすることができます。
ただ、医療法人化すると個人開業医とは異なり、処理が煩雑になることもあります。
例えばクリニックを移転する場合など、医療法人に備え付けられている「定款」を変更することから始まり、都道府県の認可を受けたのちにやっと移転することが可能です。
この手続きを失念したり遅れてしまうと、医療機関として運営ができなくなる期間が生じる恐れもあります。
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開業医が節税を行う際の注意点
これまでお伝えしたとおり、“経費”として計上できるものとできないものがあります。
できないものを計上することは脱税となってしまいます。
これにはペナルティが課され、税額控除も受けられなくなり、余計に納税しなければならなくなることもあります。
“経費”の線引きは、専門知識をもつ税理士に依頼することをお勧めします。
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また、クリニックを運営するにあたり、資金調達や医療法人成りの検討、事業承継など様々な課題が必ずやってきます。
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