相続財産調査が必要な理由とは?調査方法や対象になる財産

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

相続財産調査とは、被相続人の財産を全て洗い出し、相続財産を確定することです。
被相続人が生前に財産の一覧を作成するのがベストですが、そうでない場合には相続人が調査、確定する必要があります。遺産分割協議を行う場合には相続財産の確定が必須になります
このコラムでは相続財産調査についてどのように進めたらよいのかご説明致します。

相続財産調査とは

被相続人の財産を全て洗い出し、相続財産を確定することです。相続財産調査では以下の調査と評価を行います。

  • 相続財産の有無と内容の調査
  • 相続財産の相続税評価額での評価

生前に被相続人が財産の一覧を作成していない場合は、遺品の中から手がかりを見つけ、一つ一つリストアップしていくことになります
この時、プラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産も漏れなく全て確認し、適正に評価する必要があります。

相続財産調査が重要な理由

財産調査をしっかりしておかないと、のちに次のような様々なトラブルが生じる恐れがあります。

  • 遺産分割協議がスムーズに進まない
  • 相続放棄をすべきか判断できない
  • 相続税を正しく計算・申告できない

相続放棄は相続開始を知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
また、相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から10か月以内にする必要があります。これらの手続きのためにも、正確かつ迅速な調査が必要不可欠です。

遺産分割協議をスムーズに行うため

遺産分割協議」とは相続人全員で相続財産の分割方法を協議することです。
遺言書がなければ原則として法定相続分での遺産分割になります。遺言書がある場合には遺言書に従うことが原則ですが、相続人全員の合意があれば遺言書に従わない分割方法も可能です。
遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、全ての相続財産の洗い出しと適正な評価が重要です。

また、遺産分割協議終了後に新たな相続財産が発見された場合のために、遺産分割協議書にどのように協議するか記載しておくことをおすすめします。

相続放棄をすべきか判断するため

相続財産には借金などのマイナスの財産が含まれている場合もあります。すべての相続財産を把握しないと「相続放棄(被相続人の財産や債務を一切受け継がないこと)」や「限定承認(被相続人の財産の額を限度として債務を受け継ぐこと)」について正しい判断ができなくなります。

「相続放棄」や「限定承認」を申し立てておらず、後から借金等があることが発覚した場合には、まずはその借金に時効が成立していないか確認しましょう。時効が成立しておらず、また、返済が困難な金額である場合には任意整理や法的整理(自己破産や個人再生)などの手続きが必要になる可能性もあります

相続税を正しく計算・申告するため

全ての相続財産を把握し適正に評価することで、相続税申告が必要か否かの判断ができます。
相続税申告が必要であるにも関わらず申告をしなかった場合には、支払う相続税に加えて、無申告加算税と延滞税が加算されます。また、支払う税額より少ない金額で申告・納税した場合には、追加の相続税と過少申告加算税、延滞税が加算されます。
意図的に申告しなかったとみなされると、納付すべき税額の40%の重加算税が延滞税とともに課税されます。

相続財産調査の期限とかかる時間

「相続放棄」や「限定承認」は相続開始を知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出することで認められます。

「相続放棄」とは被相続人の財産や債務を一切受け継がないことで、各相続人が単独で申述できます。また、「限定承認」とは被相続人の財産の額を限度として債務を受け継ぐことで、相続人全員が共同で申述する必要があります。相続財産調査もそれまでに終わらせることが望ましいです。
また、相続税の申告期限は相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。財産調査はなるべく早めに完了しましょう。

調査の対象となる相続財産

相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。
調査に漏れがあると、「相続税申告の必要性の有無が判断できなかった」、「相続財産をめぐる相続人間のトラブルが発生した」、「相続放棄・限定承認ができなかった」、などの大きなトラブルに発展する可能性があります。
これらを回避するためにも、相続財産をしっかり把握し、評価する必要があります。

プラスの財産 マイナスの財産
  • 現金、預貯金
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(自社株式、上場株式、投資信託など)
  • 自動車
  • 宝石、貴金属、絵画、書画、骨董品など
  • 生命保険に関する権利
  • ゴルフ会員権
など
  • 借入金
  • 住宅ローン
  • 未払いの税金
  • 未払いの医療費
など

相続財産の対象ではないもの

相続財産の対象ではない財産として下記があります。

  • 祭祀財産(墓地、仏壇等)
    骨董的価値のあるものは相続税の課税対象になる場合があります。
  • 香典、弔慰金
    社会通念上常識的な金額を超える場合には贈与税の課税対象になる場合があります。
  • 生命保険金、死亡退職金
    相続財産の対象ではありませんが、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税になります。
  • 公的年金の未支給分
    公的年金の受給者が死亡した際にまだ受け取っていない年金です。

税理士・司法書士・社労士・財務会計・会計・不動産・カンボジア

キークレアグループ一丸となって支援いたします!

092-406-6736092-406-6736

受付時間:8:30-17:30 / 定休日:土・日・祝日

相続財産調査の方法

相続財産の調査方法は財産の種類によって異なります。
ここでは代表的な相続財産である預貯金、不動産、有価証券、貴金属、借金等について、項目別にご説明致します。

金融機関の預貯金

金融機関の預貯金の調査方法をご説明いたします。

  1. 金融機関の特定
    通帳、キャッシュカード等で特定します。ネット銀行の場合はメールやHPの閲覧履歴を確認します。
  2. 通帳の記帳
    口座が凍結されると記帳ができなくなりますので、記帳をすることをお勧めします。 記帳を忘れてしまった場合には取引明細書の発行手続きが必要です。記帳によって貸金庫の使用など取引相手が分かる場合があります。
  3. 残高証明書の発行依頼
    金融機関の特定、記帳ができたら、死亡日の残高証明書の発行を依頼します。金融機関によって異なりますが、通帳、被相続人・相続人の戸籍謄本、手続きする人の印鑑登録証明書、実印等が必要になります。
    この手続きをすることで、口座は凍結され、遺産分割協議が完了するまで原則出金できなくなります。
    ネット銀行の手続きは全て郵送となります。
    原本が必要な場合には一定期間預ける形となり他の相続手続きが滞ってしまうので、早めに手続きを開始することをお勧めします。

不動産

不動産については以下の書類のいずれかで、所有している不動産の地番、家屋番号を確認します。

  • 固定資産税課税明細書
    毎年4~6月頃に不動産所在地の市区町村役場から郵送されます。
    固定資産税の課税対象となっている不動産がわかります。
  • 登記事項証明書もしくは登記識別情報(登記済権利証)
    被相続人が不動産を取得した際に登記をしていれば、登記事項証明書や登記識別情報があります。未登記のものについてはありません。
    登記事項証明書は法務局で交付請求ができます(オンライン請求もできます)。
  • 名寄帳、固定資産評価額証明書
    どちらも不動産所在地の市区町村役場で取得できます。
    共有名義の不動産や固定資産税が非課税のものも含めた所有不動産を確認できます。

有価証券、その他権利

有価証券の確認方法についてご説明いたします。

1.証券会社や信託銀行の口座を調べる

以下の書類等を確認してどこに口座があるかを確認します。

  • 口座開設時の案内書
  • 取引報告書
  • 配当金等の支払通知書
  • 株式発行会社の事業報告書
  • 株主総会招集通知書
  • 証券会社等のノベルティ
  • ネット証券の場合はメールやHPの閲覧履歴
  • 証券保管振替機構(ほふり)へ情報開示請求

「ほふり」は上場株式や社債を集中保管している機関です。「ほふり」に調査を依頼することで、被相続人が保有している有価証券と保管されている証券会社がわかります。

2.残高証明書の発行を依頼する

口座が判明したら、死亡日の残高証明書の発行を依頼します。証券会社によって異なりますが、被相続人・相続人の戸籍謄本、手続きする人の印鑑登録証明書、実印等が必要になります。

ネット証券の場合は全て郵送でのやり取りになるため、早めに手続きを開始することをお勧めします。

貴金属、貸金庫、自動車など

  • 貴金属の調査方法
    貴金属は手元にあるほか、貸金庫に入れられていることもあるので、貸金庫の有無を確認します。
  • 貸金庫の調査方法
    預金通帳を確認し、貸金庫の利用料が支払われていないか確認します。原則として契約者本人しか開けられませんので、相続人全員の合意が必要になります。銀行口座の相続手続きを行うと貸金庫も開けられなくなりますので、注意が必要です。
  • 自動車の調査方法
    自動車の相続税評価については、ディーラー等に査定してもらう、インターネット等で年式や走行距離、傷の有無等の近い中古車買い取り価格を参考にするなどがあります。

借金やローンなどの負債

借金、ローンの調査方法

郵便物や通帳を確認することで借金の有無がわかります。
不動産の登記情報を確認し、抵当権がついていれば借金をしている可能性があります。信用情報機関に問い合わせることもできますが、個人からの借金、税金滞納、ヤミ金融等は開示の対象になりません。また、申請準備の期間を含めて結果が届くまでに2~3か月かかることもあります。相続放棄や限定承認を選択しようとする場合には最優先で手続きをすすめる必要があります。

保証債務(連帯保証人など)の調査方法

被相続人が経営者の場合には連帯保証人になっているケースがあるので、契約書の有無を確認します。
その他、被相続人との間で事業に関して交流があった人に尋ねる、メール、郵便物、通帳を調べるなどして調査します。調査は非常に難しいため、被相続人が連帯保証人になっている可能性が高いときは相続放棄や限定承認をするのも方法の一つです

相続財産調査が終わったら財産目録を作成する

財産目録とは相続財産を一覧にしたものです。プラスの財産、マイナスの財産の両方を記載します。相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、相続税評価額などを記載します。財残目録を作成することで、相続財産の内容を把握することができます。遺産分割協議が進めやすくなる上に、相続税申告が必要かどうかの判断材料にもなります。

財産目録Excelシート(作成例)

相続財産調査を専門家に依頼するメリット

相続財産調査には法律などの専門知識が必要となることが多く、また手間も時間もかかります。特に、被相続人に借金等の負債がある場合には、相続放棄や限定承認を申述できる期間が、相続開始があったことを知った日の翌日から3か月以内であることから、迅速な調査が求められます。相続財産調査を税理士に依頼することで、相続財産調査後、適正な相続税評価額を算出することができ、公平な遺産分割協議につながる点、また、相続税申告が必要な場合には申告まで対応できる点がメリットです。

相続財産調査はキークレア税理士法人にお任せください!

相続財産調査は相続財産の種類によって手続きが異なり、専門的な知識が必要な場合が多くあります。
また、生前に被相続人が財産一覧を作成していない場合には、遺品の中から手がかりを見つけ一つ一つリストアップしていく地道な作業となります。

キークレアグループには、行政書士法人があり、遺産分割協議書の作成をご依頼頂くことができます。また、税理士法人の他にも財務会計コンサルティング会社、不動産会社があり、相続税申告だけでなく、相続財産の活用まで幅広い対応が可能です。
また、提携先の弁護士には相続にまつわるもめごとを、司法書士には相続登記を、といったようにワンストップでのサービスをご提供することができます。相続財産調査はキークレア税理士法人に是非お任せください。

お客様のビジョン達成のために、グループ一丸となり全力で支援してまいります。 お客様のビジョン達成のために、グループ一丸となり全力で支援してまいります。

お客様のビジョン達成のために、グループ一丸となり全力で支援してまいります。

受付時間:8:30-17:30 / 定休日:土・日・祝日

092-406-6736
メールでのお問い合わせ