相続の際に所得税の確定申告が必要となるケース

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

今回は、相続が発生したときの所得税の確定申告(準確定申告)が必要であること、についてご説明します。

相続税と所得税は別の税金なので、関係ないでしょ?と思われるかもしれません。

原則として、相続財産には所得税ではなく相続税がかかるので、直接関係はありません。しかし、一部のケースでは相続税申告をする前に、所得税の確定申告が必要となる場合があります。

以下でその詳細をご説明致します。

相続財産には、原則的に所得税ではなく相続税がかかる

所得税と相続税の違いですが、所得税は個人の1年間の所得(収入-経費)に対してかかる税金であるのに対し、相続税は、被相続人が死亡した日の財産に対してかかる税金です。

原則として相続財産には所得税はかかりませんが、以下のケースなどで所得税の申告が必要となります。

  • 家賃収入がある賃貸物件を相続した場合
  • 相続した財産を売却した場合
  • 被相続人が自営業者で、毎年確定申告をしていた場合
  • 被相続人が亡くなった年において、医療費控除などを適用することで、還付が受けられる場合

相続の際に所得税の申告が必要になるのはどんな時?

家賃収入がある賃貸物件を相続した場合など、相続人自身の確定申告が必要になるケースと、被相続人の所得税の申告(=準確定申告)が必要なケースがあります。

例えば、サラリーマンである相続人がマンションを相続した場合、給与所得と相続したマンションの不動産所得を合算して、確定申告をする必要があります。

また、自営業を営んでいた被相続人も、その年の1月1日から相続開始の日までの間の所得について確定申告をする必要があります。

しかし、被相続人はすでに死亡しているので、財産を相続した相続人が確定申告をする必要があります。なお、被相続人が自営業をしていない場合でも、所得税の還付を受けるために準確定申告をすることもできます。

相続人自身の確定申告が必要になるケース

家賃など収益のある物件を相続した

2.でご説明したとおり、家賃収入がある賃貸物件を相続した場合、家賃収入に対する所得税の確定申告が必要となります。

例えば、戸建てやマンションの1室を貸していたり、駐車場の運営収入がある場合が該当します。

また、相続人がサラリーマンの場合は、相続した賃貸物件の不動産に勤務先の給与所得も合算して申告する必要があります。

サラリーマンである場合、年末調整で所得税を確定させているため、確定申告をした経験がほとんどない方が多いです。賃貸物件を相続した場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。

相続した財産を売却した

相続した財産を売却した場合は、「相続人が売却した金額」と「被相続人が購入した時の金額(減価償却後の金額)」との差額(=譲渡益)に対して税金がかかります。

利益が出た場合に税金が発生しますので、損失が発生した場合は、税金は発生せず、確定申告は不要となります。

相続した財産の売却は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」や「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」など、なるべく税金が低く抑えられるよう配慮された特例があります。

特例によっては、相続開始の日から3年10カ月以内に売却する必要があったりなどの要件があるため、どの特例を使うことができるのか、事前の検討が必要です。

死亡保険金を受け取った

特定のケースでは所得税の申告が必要となります。

生命保険金契約は、契約者(=険料負担者)・被保険者・受取人の3人が登場します。

課税関係まとめると、下記のとおり、②の所得税がかかる場合に確定申告が必要です(③の場合は贈与税の確定申告が必要です)。

②は、例えば、妻が夫に保険をかけ、夫が亡くなった場合に妻自身に生命保険金が入ってくる契約などのことです。

  1. 保険料負担者:被相続人 被保険者:被相続人 受取人:相続人 ➡ 相続税
  2. 保険料負担者:相続人  被保険者:被相続人 受取人:相続人 ➡ 所得税
  3. 保険料負担者:相続人  被保険者:被相続人 受取人:別の相続人等 ➡ 贈与税

未支給年金を受け取った

未支給年金とは、年金受給者が死亡した場合に、その者に支給すべき年金であって、まだ支給されていないものをいいます。この未支給年金は一定の相続人の請求に基づき相続人に支給されます。

未支給年金は相続税の対象外となりますが、受給額が50万円を超える場合には一時所得として所得税が課されますので、確定申告が必要です。

一時所得の計算式は「一時所得の金額=総収入-経費-特別控除額(50万円)」であるため、受給額が50万円を超えないと、所得が発生しません。

準確定申告(亡くなった人の確定申告)が必要なケース

1.でも少し触れましたが、下記のようなケースの時に、準確定申告が必要です。

所得税が還付となった場合は財産として、所得税の納付となった場合はその納付額は債務として、相続税申告の計算に含まれます。

  • 亡くなった人が自営業者だった
  • 亡くなった人に不動産所得があった
  • 2カ所以上の勤務先から給与所得があった(副業があった場合)
  • 2,000万円以上の給与所得があった
  • 医療費控除や寄付金控除を利用して、毎年所得税の還付を受けていた
  • 400万円を超える年金を受給していた、または年金以外の所得が20万円以上あった

準確定申告の提出期限は4ヶ月

準確定申告の提出期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月です。

なお、前年の確定申告をしないまま亡くなった場合(1月1日から3月15日の間に亡くなった場合)は、前年と亡くなった年(1月1日から亡くなった日まで)の2年分の確定申告が必要となります。

また、前年の確定申告は3月15日が申告期限ですが、1月1日から3月15日の間に亡くなった場合は、申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月に延長されます。

申告期限を過ぎると、延滞税や加算税等のペナルティが発生します。

(例)R5年1月31日に亡くなった場合
➡R4年分の確定申告とR5年分(1月1日から1月31日まで)の確定申告が必要。
申告期限は、R4年分もR5年分もR5年5月31日になる。

準確定申告の方法

準確定申告の方法は、基本的には通常の所得税の確定申告と同様です。

違いとしては、1月1日から12月31日までの所得を計算するのではなく、1月1日から亡くなった日までの所得を計算する点です。

また、細かい違いを挙げると、書類名が「準確定申告書」となります。必要書類も通常の確定申告と基本的に同じですが、相続人が2人以上いる場合は、通常の書類と一緒に「確定申告書付表」を提出する必要があります。

この書類は、相続人全員の個人情報(住所、氏名、マイナンバーなど)や誰がいくら所得税の納付をするのか(還付を受けるのか)を記載したものです。

提出先は、準確定申告書の提出先は、被相続人の死亡当時の納税地の税務署とされています。

所得税の確定申告をする方法

所得税の確定申告は、①税務署の窓口で提出する方法、②自身で電子申告をする方法、③税理士に依頼して税理士が電子申告する、という3つが主な方法です。

①②の方法は「国税庁 確定申告書等作成コーナー」という国税庁のサイトから、無料で、確定申告書を作成する方法です。手順に従って入力を行えば、申告書が完成するので、それを印刷して窓口に持参、若しくはマイナンバーを用いて電子申告することができます。

①②の方法は主な所得が給与所得で、医療費控除やふるさと納税を適用したい方におすすめです。給与所得以外の不動産所得や譲渡所得、事業所得などがある方、準確定申告をする方は、専門的な知識や複雑な検討が必要なこともありますので、③の方法がおすすめです。

所得税の申告など、相続の際に発生する税金は税理士にお任せください

相続の発生が影響する所得税の確定申告や準確定申告は、専門知識が必要であり、申告期限等気を付けなければならないことがいくつもあります。

申告を税理士に依頼することで、スムーズに申告手続きが行われ、特例制度等を適用することで税金の最適化を図ることができます。

相続に関するご不明点等ありましたら、是非お気軽にキークレア税理士法人にご相談ください。

お客様のビジョン達成のために、グループ一丸となり全力で支援してまいります。 お客様のビジョン達成のために、グループ一丸となり全力で支援してまいります。

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