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相続廃除とは?具体例や手続き方法を解説

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

相続人として不適切と考えられるような著しい非行があった、または虐待を受けた場合、その相続人に相続財産を残さないために「相続廃除」という制度を利用することが可能です。
この制度を活用すれば、本来相続人となる予定の人でも、法的に相続権を失わせることができます。

ただし、「相続廃除」は裁判所への申立てが必要であり、その申立てが必ず認められるわけではありません。
裁判所が判断するために、申立てには正当な理由や証拠が求められます。

このコラムでは、「相続廃除」が適用されるケースや、具体的な申立て手続きについて解説します。

相続廃除とは

「相続廃除」とは、被相続人が「その人だけには財産を相続させたくない」と考えても当然と思われるような事由がある場合に、被相続人の意思に基づいて相続人の相続権を失わせることができる制度です。

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という、最低限保証されている相続財産の取得分があります。
遺留分がある相続人に対しても一切の財産を相続させないことができるのが「相続廃除」です。

相続廃除の申し立てができるのは誰?

「相続廃除」を申し立てる権利があるのは、被相続人本人に限られます。
相続廃除の手続きには、以下の2種類の方法があります。

  1. 生前廃除
    被相続人が生存中に裁判所に直接申立てを行う方法です。
  2. 遺言廃除
    被相続人が遺言書の中で廃除を希望する旨を記載し、遺言執行者が裁判所に手続きを申請する方法です。

被相続人自身が、「浪費癖のある長男に財産を相続させたくない」として申立てを行う場合は認められる可能性があります。
一方、他の相続人が、「母の介護に協力しなかった妹に相続権を与えたくない」といった理由で申立てをすることはできません。

また、相続廃除は、裁判所が正当な理由を認めた場合にのみ成立します。
したがって、申立てが行われても、必ずしも廃除が認められるわけではありません。

廃除できる相続人とは?

相続廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人(将来的に相続人となる予定の人)です。
具体的には以下のような人々が該当します。

  • 配偶者
  • 直系尊属(父母、祖父母など)
  • 直系卑属(子、孫など)

相続廃除が認められた場合、その推定相続人は遺留分を含めて一切の相続権を失います

一方で、遺留分を持たない推定相続人である兄弟姉妹は、相続廃除の対象にはなりません。
兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、遺言書で「相続させない」旨を記載するだけで十分です。
兄弟姉妹にはそもそも遺留分がないため、遺言書の内容が優先されます。

相続廃除の要件

民法では、相続廃除の要件を以下のように定めています。

  • 被相続人に対して虐待した場合
    被相続人に対する暴力や精神的な苦痛を与える行為を指します。
  • 被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合
    被相続人に対する名誉や感情を害する行為を指します。
  • 推定相続人にその他の著しい非行があった場合
    虐待や重大な侮辱には該当しないものの、被相続人の財産を勝手に自分の物にした、多額の借金をして被相続人に返済させた、などを指します。

相続廃除は、相続人の相続権を奪うため、裁判所は相続廃除を認めていいかどうかを慎重に見極めて判断します。

廃除の対象となる相続人が自らの行為を否定した場合は認められないことも多くあります。
以下で認められた事例と認められなかった事例をあげます。

相続廃除が認められるケース・事例

相続廃除が認められた具体例をあげます。

事例1(熊本家裁昭和54年3月29日審判)
父親の死期が近いことを知って、その財産の名義を勝手に自分と自分の家族名義に変更した長男に対して、著しい非行による相続廃除が認められた。

事例2(和歌山家裁平成16年11月30日審判)
母親に対し、髪の毛をわしづかみにして顔を平手打ちするなどの暴行を働いたほか、郵便貯金約3,500万円を横領した長男に対して、暴行と著しい非行による相続廃除が認められた。

事例3(釧路家裁北見支部平成17年1月26日審判)
末期がんの治療の副作用で脱毛している妻に対し、「いつ死ぬかわからない人間にかつらはいらない」と暴言を吐き、寒くて電気ストーブを使うと「電気を使う金はない」と言った夫に対して虐待による相続廃除が認められた。

相続廃除が認められないケース・事例

相続廃除が認められなかった具体例をあげます。

事例1(東京高裁昭和59年10月18日決定)
推定相続人が勤務先から総額5億数千万円を横領し、懲役5年の判決を受け服役した場合であっても、著しい非行には当たらず、相続廃除は認められなかった。

事例2(名古屋高裁金沢支部昭和61年11月4日決定)
父親が母親の生存中から愛人を囲い、母親の死後周囲の反対を押し切って愛人と再婚したことを理由に父親に対して暴行を働いた長男は、暴行の理由が父親にあるとされて相続廃除は認められなかった。

事例3(東京高裁平成8年9月2日決定)
長男の侮辱と受け取られる言動は、嫁姑の不和によるものであり、長男のみにその責任を負わせるのは不当であるとして、相続廃除は認められなかった。

相続廃除が認められるとどうなる?

相続廃除の申立てが行われると、家庭裁判所で審判手続きが進められます
審判が確定した場合、相続廃除の申立人は確定から10日以内に、廃除された相続人の本籍地または住所地を管轄する市区町村役場に戸籍の届出を行わなければなりません。

審判が確定すると、対象の相続人は相続権を失い、さらに遺留分も請求できなくなります。

なお、遺留分とは、一定の相続人が法律上有している、遺言によっても侵害できない相続財産の最低保証分を指します。
しかし、相続廃除が認められると、遺留分も含め一切の相続権を喪失します。

相続廃除になったことは戸籍に記載される

相続廃除されたことは、相続廃除の申立人が被相続人の本籍地の市区町村役場に届け出ることで戸籍に記載されます。
推定相続人の戸籍の身分事項欄に、「推定相続人廃除」と記載されます。

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相続廃除の手続き方法

相続廃除の申し立て手続きには、生前に被相続人自らが行う「生前廃除と、被相続人の死後に遺言執行者が申立てるように遺言に残しておく「遺言廃除2つの方法があります。

相続廃除の手続きの流れは以下の通りです。

  1. 家庭裁判所への申立て
    相続廃除を希望する場合、所定の書類を準備して家庭裁判所へ申立てを行います。
  2. 家庭裁判所での審判
    審判手続きが行われ、相続廃除が適当かどうか判断されます。
  3. 審判確定後の届出
    審判が認められた場合、確定日から10日以内に、被相続人の本籍地の市区町村役場に届け出ます。廃除された相続人の本籍地の市区町村役場ではないことに注意が必要です。

遺言廃除を行う場合、遺言書に「相続廃除の意思」とともに遺言執行者の指定を明記しておく必要があります。
遺言執行者が裁判所に申立てを行い、手続きが進められます。

生前廃除

生前廃除とは、被相続人が死亡する前に、被相続人自身が家庭裁判所に相続廃除の申立てを行う手続きです。

① 申立て

  • 申立人
    • 被相続人
  • 申立て先
    • 被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 申立てに必要な書類
    • 被相続人の戸籍謄本
    • 廃除を希望する相続人の戸籍謄本
    • 「推定相続人廃除の審判申立書」(家庭裁判所で取得可能)
  • 費用
    • 1名の推定相続人ごとに800円分の収入印紙
    • 数千円程度の郵便切手(裁判所によって異なる)

② 審判

申立人(被相続人)と、廃除対象の相続人との間で、廃除の理由についての主張と証拠を提出し、家庭裁判所がその是非を判断します。
認められると、「審判書謄本」と「確定証明書」が交付されます。

③ 市区町村役場への届出

廃除が認められた場合、10日以内に被相続人の戸籍がある市区町村役場に届け出を行います。

  • 必要書類
    • 「推定相続人廃除届」(市区町村役場で取得)
    • 審判により交付された「審判書謄本」と「確定証明書」

④ 相続廃除の完了

推定相続人の戸籍の身分事項欄に、推定相続人廃除の記載が反映されます。

遺言廃除

遺言廃除では、遺言で相続廃除したい旨を残しておき、被相続人の死亡後に遺言執行者が申立てを行います。

①遺言書を作成する

  • 遺言書の記載事項
    • 相続廃除したい人
    • 相続廃除の具体的な理由(虐待、暴言、非行など)
    • 遺言執行者

②申立て

  • 申立人
    • 遺言執行者
  • 申立て先
    • 被相続人の住所地を所轄する家庭裁判所
  • 申立て必要書類
    • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
    • 廃除したい相続人の戸籍謄本
    • 「推定相続人廃除の審判申立書」(家庭裁判所で取得可能)
    • 遺言書の写しまたは遺言書検認調書謄本の写し
  • 費用
    • 推定相続人1名につき800円分の収入印紙
    • 数千円程度の郵便切手(裁判所によって異なる)

※審判以降は生前廃除と同様の流れです。

相続廃除は取り消しできる?

相続廃除は、相続廃除を申立てた被相続人であれば取り消しが可能です。
相続廃除を受けた相続人が反省し、被相続人と和解する場合も考えられます。

その際には、家庭裁判所に対して「廃除の審判の取り消し」を申し立てることで、相続廃除を撤回することができます。
この取り消しは、生前に被相続人が自ら申立てることもできますし、遺言書に取り消しの意向を記載しておき、遺言執行者に申立てを依頼することも可能です。

ただし、廃除された相続人自身が申立てを行うことはできません。

相続廃除の注意点

相続廃除が認められる確率は低い

相続廃除は相続人の相続権を奪うことになるため、家庭裁判所は相続廃除を認めるべきかどうかを慎重に判断します。
そのため、相続廃除が家庭裁判所に認められる確率は低いです。申立てのうち、認められた件数は15%程度というデータがあります。

なお、令和2年度の司法統計によると「推定相続人の廃除及びその取消し」の申立て総件数が310件、そのうち認められた件数は43件であり、約14%しか認められませんでした。
参考資料:家事審判事件の受理,既済,未済手続別事件別件数―全家庭裁判所令和2年度司法統計

相続廃除されても代襲相続は可能

代襲相続とは、相続が発生する前に本来の相続人が亡くなった場合などに、その相続人の子が代わりに財産を相続する仕組みです。
相続廃除は、推定相続人の相続権を完全に消失させることができますが、廃除の効果は廃除された相続人にのみ適用されます。
そのため、廃除された相続人の子どもは代襲相続を受けることができます。

もし、代襲相続人にも相続させたくない場合には、その代襲相続人に対する相続廃除の手続きが必要です。
ただし、代襲相続人は一般的に被相続人の推定相続人とは見なされないため、相続廃除の申立てを行うことはできません。
代襲相続人に相続させないためには、でその旨を明記する方法しかありません。
とはいえ、遺言書に記載しても遺留分の請求がされる可能性は残ります。

相続廃除と似た制度「相続欠格」との違い

「相続廃除」と似た制度に「相続欠格」がありますが、両者は異なる制度です。
「相続欠格」とは、推定相続人が相続に関して不正行為や罪を犯した場合に、その者が自動的に相続権を失う仕組みです。例えば、次のようなケースが該当します。

  • 被相続人または他の相続人を殺害した、もしくは殺害しようとした
  • 詐欺や脅迫を用いて被相続人に遺言をさせた
  • 相続に関する遺言書を偽造した

相続欠格に該当した場合でも、その者の子どもは代襲相続を受けることができます。
また、相続廃除とは異なり、相続欠格は戸籍に記載されることはありません。

まとめ

「相続廃除」が認められると、自分に対する虐待や著しい非行などで相続させたくない人の相続権を失わせることができます。
しかし、申立てれば必ず「相続廃除」が認められるわけではありません。認めてもらうためには十分な証拠集めが必要です。

キークレア税理士法人では、提携先の弁護士と協力して、ワンストップで相続に関するご相談をお受けすることができます。
また、「相続廃除」が認められなかった場合、離婚や離縁、遺言書を残す、生前贈与をするなど、別の最適な方法をご提案することも可能です。

相続に関するお悩み・ご相談はキークレア税理士法人におまかせください。

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