財務会計と管理会計の違いとは?経営者なら知っておきたい基礎知識

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

企業会計とは、企業の経済活動を一定のルールに基づいて記録・管理・測定したものを言い、管理会計財務会計の2種類に分類することができます。この2つの性質・目的は大きく異なっており、経営者や起業を目指す人、経営改善や経理業務の改善をしたい人は知っておくべきことと言えます。

ここでは、管理会計と財務会計の違い、それぞれの特徴などを解説していきます。

管理会計と財務会計の違い

管理会計財務会計の大きな違いは、その目的と役割です。
管理会計は、社内で経営に重要な指標を評価するために使う会計であり、経営者がマネジメントするためにまとめたものと言えます。企業によって重要指標は異なるため、特に決まった形式もありません。これにより、現在の財務状況の分析・把握や、将来の予測を立てることができます。

一方で、財務会計は、社外の利害関係者に財務状況を報告するための会計であり、その目的は第三者への開示です。こちらはどの企業も会計基準に則った決算書を作成する必要があります。

管理会計 財務会計
法律上の義務 任意 必須
利用者 社内の経営陣 社外の利害関係者(取引先、金融機関、投資家、債権者、税務署等)
目的 内部のマネジメント 外部への報告
内容 任意 会計基準に則る
書式 任意 決算報告書(損益計算書、貸借対照表等の財務諸表)
集計単位 任意(金額、件数、数量等) 金額
対象期間 任意(年、月、日等) 会計期間(1年・四半期等)

管理会計とは

前述の通り、管理会計とは社内経営陣が利用する、経営管理のための会計です。
英語ではManagement accountingといい、まさにマネジメントのために使用されるものといえます。

管理会計は、法律上の義務はなく、書式や期間等全てが任意のため、各企業の状況や重要指標に合わせてレポートを作成することができ、経営に活かしやすい会計でもあります。

管理会計の目的

管理会計の目的としては、以下があげられます。

  • 経営者や責任者が自社の経営状態を把握するため
  • 管理会計のデータをもとに業務改善や業績改善を実施するため
  • 適切な経営戦略を立てるための判断材料にするため

つまり、管理会計は、それぞれの目的に即して書式を変えながら、主には経営改善に向けて活用することが出来る会計と言えます。

管理会計の主な業務

管理会計を行うことで、経営を数字で管理することができるようになり、改善すべき点が見えてきます。

予算管理

  • 予算と実績を分析して改善を図ることができる
  • 予算管理はPDCAサイクルを活用することで、正確かつ有効に活用できる
  • 定期的に営業実績を確認することで損失の拡大を防ぐことができ、改善策を講じることができる

原価管理

  • 計画の原価と実際の原価を比較して改善を図ることができる
  • 損益分岐点の把握と必要売上の設定ができる
  • 粗利率の改善を図るためにどうするべきか、考えることができるようになる

管理会計を行うメリット

義務ではない管理会計を行うことで様々なメリットがあります。

メリット

業績を管理しやすくなる

企業にとって必要な重要指標の管理や、会計基準だけに基づかない数字の管理を行うことで、自社の業績をよりわかりやすく管理することができるようになります。

公正な評価ができる

従業員の評価においても、数字で公正に判断することが出来ます。

経営戦略に役立てられる

PDCAサイクルを回す上で、未達の理由を分析の上、対処法を考えることが出来るようになり、経営戦略を随時、必要なタイミングで考えることができるようになります。

コスト削減ができる

原価や販管費についても、予算以上になっていないか、また、削減できるものはないかといった視点で業績を改善させることが出来るようになります。

財務会計とは

財務会計とは、会計基準に則って、財務状況や経営状況を外部へ報告するための会計です。年に1回、利害関係者へ情報開示義務があります。

ここでいう利害関係者とは、投資家、金融機関、税務署など様々です。金融商品取引法、会社法などの法律や、企業会計原則に準拠した財務諸表を作成する必要があります。

真実性の原則 企業の財務状態及び経営成績に関して、真実の報告を提供するものでなければならない
正規の簿記の原則 すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない
資本取引・損益取引区分の原則 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない
明瞭性の原則 財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない
継続性の原則 その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない
保守主義の原則 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない
単一性の原則 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない

財務会計の目的

財務会計の主な目的は、外部の利害関係者に財務状況と経営成績を開示することです。

財務状況を開示するためには、会計基準に則った、決算報告書(財務諸表)の作成が求められます。
ここでいう財務諸表には大きく分けて以下3つの資料が含まれます。

貸借対照表 一定時点の企業財務(調達と運用)
損益計算書 一定期間の損益
キャッシュフロー計算書 一定期間のキャッシュの流れ
キャッシュフロー計算書の必要性とは?作成する目的やメリットについて

財務会計の主な業務

財務会計の主な業務内容は以下のとおりです。

経理系の業務

  • 仕訳や帳簿への記帳、伝票作成や領収書の精算などの事務作業
  • 財務諸表や決算書の作成

財務系の業務

  • 企業の資金繰り・予算を管理
  • 経理が集計したデータを参考に資金計画の考案・実行
  • 銀行融資や株式発行などの資金調達、投資やM&Aなど余剰資金の運用 等
POINT

財務会計は会計基準に則った、社外向けに必要な資料を、必要な書式・やり方で作成していくものであり、これらを活かして資金調達時に活用したり、計画作成をしたりします。

財務会計が果たす機能

次に、財務会計の役割について解説します。

情報提供機能

情報提供機能とは、営業活動の結果(財務諸表)を外部の利害関係者に公表することを言います。これにより、投資や融資を受けることができるようになります。

利害調整機能

利害調整機能とは、「株主と経営者」「株主と債権者」等の利害の調整を行うことを言います。利害関係者への利益の分配を行うにあたり、利害関係者間での対立が生じる可能性があるため、すべての利害関係者が納得できるよう調整を行うための機能なのです。

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管理会計や財務会計を効率化するためには?

管理会計や財務会計を実行するに当たり、業務にかかる労力は大変なものです。そのため、業務効率化が重要となってきます。

効率化するための手段

  • 会計ソフトの導入
  • ERPシステムの導入
  • クラウドやシステムに強い税理士のサポート
POINT

このように、自社だけで完結しようとせず、様々な手段を検討していくことで、業務効率が上がり、ひいては業績UP・生産性UPにつながるのです。

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経理・会計を整備していくうえで、経理管理体制の構築は大変重要です。
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よくある質問

財務会計と管理会計に共通点はありますか?

経済主体の活動や事象を測定・記録・報告する役割を果たす点で共通しているといえます。
また、企業会計原則の単一性の原則に基づき、簿記により記録された帳簿を元にしているため、原則の数値は同じものであるといえます。

活用する目的・方法が違うだけで、経済活動の根拠となる実績数値部分は同じであると言えるのです。

税務会計・管理会計・財務会計の違いは何ですか?

税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。基本的には、財務会計をもとに、税法上の考慮を加えて作成します。
税法に基づいた会計となるため、財務会計での損益とは異なります

税務会計

目的 税額算出
法律 税法
利用者 税務署

財務会計

目的 財務状況・損益の把握
法律 会計基準
利用者 株主、債権者、投資家、金融機関等

管理会計

目的 経営指標・戦略
法律 なし
利用者 社内経営陣

財務会計と管理会計が一致しないのですが、何か問題があるのですしょうか?

そもそも、目的や役割が異なるため、一致しないのは当然です。元となる簿記は同じものを使用していますが、活用方法によって、作成方法が異なるのです。

財務会計は会計基準に則って作成するのに対し、管理会計は各企業任意のルールに則って作成するものであり、経営に役立つ数値を使用するということになるため、完全一致は不可能であり、何も問題はありません

税務・会計・財務のことならキークレア税理士法人にお任せ下さい。

管理会計財務会計は同じ会計という括りになっていますが、実際には目的が大きく異なります。どちらも健全な会社運営を行うためには必要不可欠であり、会計と経営戦略両方の視点から管理の上経営していくことが重要です。

会計業務で不明点がある場合や、業務効率化を図りたいなら専門家である税理士に相談しましょう。

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