役員報酬で節税できる節税効果をより高める5つの方法


目次
役員報酬とは企業の役員に対して支払われる報酬や給与のことを指しますが、意外と詳細についてよくご存じでない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
役員報酬について理解を深めることは重要です。
理解を深めると、損金算入できる金額がいくらなのか把握することができます。
正しく理解し、賢く経費として計上することで節税効果を高めていきましょう。
役員報酬で節税は可能?
冒頭で触れましたが役員報酬は損金に算入することができます。
ただし、一定の要件を守る必要があります。
役員報酬を損金に算入することで、損金算入しないよりも所得は減ります。
従って、法人税の納税額は減少します。
注意すべき点は、役員報酬の額により個人が負担する所得税に影響が出ることです。
所得税に影響が出ることを頭に入れつつ、損金に算入できる役員報酬の額を検討していくことが必要です。
損金算入できる3つの役員報酬
役員報酬は損金算入できます。
損金算入とは、簡単に言うと費用として計上する、ということです。
ただし、好きな額を好きな時に損金算入することはできません。
要件があります。
役員は会社の意思決定を行うことができるため企業活動に大きな影響を与えることができます。
そのため、要件がなければ好きな額を好きな時に役員報酬を支給することが可能になってしまいます。
これが許されるのだとしたら、役員報酬を増減させることで利益を恣意的に調整することができてしまいます。これを制限するために要件が存在します。
では、損金に算入できる役員報酬とは何なのか。それは、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3種類のことを指します。
①定期同額給与
定期同額給与とは、その名のとおり毎月の支給額が同額である給与のことを指します。
給与の支給は毎月であり、同額である必要があります。
この支給額を変更したい場合は、事業年度開始の日から3か月以内に決めて支給しなければいけません。
これらの条件を満たさなければ損金に算入することができません。
②事前確定届出給与
事前確定届出給与は、株主総会での決議と税務署への届出が必要となります。
株主総会で誰にいついくら支給するのか決議し、その内容が議事録に記されます。
そして議事録の内容どおりに税務署へ届け出ることとなります。
届け出た内容と違う条件で支給された場合は、損金算入が認められませんので、支給額と支給日については細心の注意が必要です。
支給が1日遅れても、支給額が1円足りなくても、損金算入が認められないと理解しておきましょう。
③業績連動給与
業績連動給与とは、業務執行役員に対して利益などを基礎として算定した金額を支給する給与のことを指します。
上場会社等ではこの業績連動給与を導入している企業も多いですが、基本的に同族会社での導入はできないこととなっております。
また、有価証券報告書に記載、開示していることも要件の1つです。
他の2種に比べ要件を満たすハードルは高いですが、業績が向上すると給与が上がるという仕組みであるため、役員のモチベーションの向上、企業の成長を促す効果が期待できます。
役員報酬と税金の関係
役員報酬に関わる税金は、「法人税」と「所得税」の2種類があります。
企業の立場で考えると、役員報酬の多寡は法人税に影響を及ぼします。
同様に個人の立場で考えると、役員報酬の多寡により所得税に影響を及ぼします。
法人、個人どちらに所得=お金を残したいのか考えることが、重要です。
法人税との関係
一般的に企業は利益(所得)の額が増えれば増えるほど法人税が多く課されます。
つまり、売上の額が一定だとすると役員報酬が多ければ多いほど利益(所得)が減少し、課される法人税も減少します。役員報酬が少ないと課される法人税は増加することになります。
所得税との関係
役員報酬に対して課される税金は基本的に通常の給与と考え方は同様です。
所得税に関して、役員である者、役員でない者に区別はなく、どちらも給与所得に分類されます。そして個人の所得に対して所得税が課されます。
給与所得が500万円である場合は、役員報酬であっても通常の給与であっても下記表に当てはめて所得税が課されることとなります。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 | 45% | 4,796,000円 |
社会保険料との関係
収入が高いほど納める金額が高くなるという点では、社会保険料も税金と同様です。
加入する団体により、保険料の計算方法は異なりますが、一般的には役員報酬が多ければ多いほど、税金も社会保険料も納める額は多くなります。
役員報酬はいくらに設定すれば節税効果が大きい?
法人税の税率は、所得の額によって変わります。
多くの中小法人の場合、所得が年800万円以下の部分には15%、800万円を超える部分には23.2%の税率となります。
役員報酬の額を計画的に設定できれば、23.2%の税率がかかる部分の所得をなくすことができる、減らすことができる可能性があります。
例えば、所得が2000万円となる企業があったとしますと、事前に役員報酬を1200万円に設定しておけば、所得が800万円となり23.2%の税率が適用されることはありません。
事業計画をいかに精密に作るか、達成するかがとても重要です。
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役員報酬の節税効果をより高める5つの方法
役員報酬を損金算入することで所得が圧縮され法人税の支払が少なくなります。
しかし、1人に対して多くの役員報酬を支払うとその人が支払う所得税が増えてしまい、法人税と所得税を合算して考えると逆効果になってしまう可能性もあります。
配偶者を役員にする
配偶者に役員として企業で勤めてもらうことにより、役員報酬を支払うことができます。
1人で1000万円の役員報酬を受け取るよりも、2人で1000万円の役員報酬を受け取った方が、世帯で支払う所得税は少なく済む可能性があります。
したがって、配偶者がその企業に役員として勤務可能である場合は役員報酬の支払により節税効果が期待できます。
他の親族を役員にする
配偶者だけでなく、同一家計の子や親などの親族を役員にすることで、さらなる節税効果が期待できます。
給与所得が2500万円である場合、1人で受取ると所得税が720万円ほどですが、3人で900万、800万、800万と分散すれば所得税は3人合わせて384万円ほどになります。
大きな差が生まれます。
通勤手当を支給する
一般の従業員に対して通勤手当を支給するのと同様に役員にも役員報酬とは別に通勤手当を支給することは可能です。
通勤手当は法人税の計算上で、役員報酬も通勤手当も費用に変わりありませんが、所得税の計算では一定金額まで非課税扱いとなります。
従って、役員報酬を40万円支払うよりも役員報酬を37万円、通勤手当を3万円支払う方が所得税を支払う額は少なくなります。
経営セーフティ共済を活用する
経営セーフティ共済とは取引先の倒産というリスクに備えて、事業資金を速やかに借入できる共済制度です。
支払う共済金を損金に算入できる一方で、解約手当金を受け取る場合は収益となります。
掛金を支払っている間は法人税を繰り延べる効果があります。
小規模企業共済を活用する
小規模企業共済とは、経営者や企業の役員の方が廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる退職金制度です。
所得税の計算上、支払った金額を控除できるため毎年発生する所得税の節約にもなる上、退職金として受け取ると優遇措置も受けることができます。
節税対策・シミュレーションは専門家である税理士にお任せ!
役員報酬について経営者が理解することはとても重要ですが、金額の設定については専門家である税理士に相談することをおすすめします。
キークレアグループでは法人税、所得税、相続税、消費税などを含めたタックスプランの検討を事業計画の策定を通してご提案可能です。
税金だけでなく、将来どれだけキャッシュが必要か、経営者と一緒に考え、それをどのように準備していくか、個人・企業両方の側面から検討していきます。
役員報酬を設定する際の注意点
役員報酬を増やせば増やすほど法人税の支払は少なく済むかもしれませんが、計画性を持って実行しなければ所得税の額が跳ね上がったり、企業に必要なキャッシュを残せなくなったりなどの事象が起こる可能性があります。
役員報酬の設定には注意が必要です。
年度途中の金額変更はできない
前述のとおり、基本的に役員報酬は一度設定すると年度の途中で変更をすることができません。
従って、年度が始まる前に事業計画を精密に作り、その計画を達成することがとても重要となります。
計画自体が粗い場合はそもそも役員報酬の設定も曖昧になっていまいますし、正確な計画を立てたとしても目標達成ができなければ設定した役員報酬が高すぎた、というような事態も起こり得ます。
役員報酬は高すぎても低すぎてもNG
デメリット | |
---|---|
役員報酬が低すぎる | 法人税が増えてしまう・社会保険に加入できない・生活費が不足する |
役員報酬が高すぎる | 所得税が増えてしまう・不相当な場合は損金算入を否認される |
前述のとおり役員報酬の設定には計画性が必要です。
低すぎても高すぎても、法人税や所得税、必要なキャッシュの確保に影響が出るからです。
役員報酬は労働の対価として支払うものではないため、計画性を持ってゼロ円に設定することも可能です。
役員報酬の節税についてご不明点などあればキークレアにご相談ください
役員報酬の設定は奥が深いものです。
将来いくらお金を企業に残したいのか、個人に残したいのか、誰かに渡したいのか、経営者には理想や目標があるかと思います。
その理想や目標を達成するために、事業計画を正確に作成し役員報酬を設定する必要があります。
キークレアでは税務・財務・労務などグループ一丸となり経営者のみなさま、そして企業の目標達成のためにサポートしてまいります。
役員報酬の節税効果についてご不明な点等ございましたらキークレアにご相談ください。