マイクロ法人の設立による節税とは?メリット・デメリットや設立手順など
目次
近年、フリーランスや個人事業主として働く方が増えてきています。
事業の成長に伴い、節税のためにマイクロ法人を設立するケースも少なくありません。
本コラムでは、マイクロ法人を設立するメリット・デメリットを解説していきます。
マイクロ法人とは
マイクロ法人とは、代表者1人の小規模な法人を指す通称であり、法律上の定義はありません。
一般的に、所得税や社会保険料の最適化を目的に、個人事業主やフリーランスの方が設立する「ひとり会社」を意味します。個人事業主との最大の違いは「法人格の有無」です。法人格を持つため、設立には法務局での登記や定款の作成が必要です。
ただし、個人事業と同一事業で設立し、意図的に所得を分散させるような行為は、税務署から租税回避行為とみなされ、否認される可能性があります。また、会社員の方が設立する場合、勤務先の就業規則(副業禁止・競業規則違反)に抵触する可能性があるため、確認が必要です。
マイクロ法人の設立による節税メリット
マイクロ法人を設立する最大のメリットは、税制上の優遇措置を活用することで、所得税や住民税などの課税負担を抑えることができます。
個人事業主としての所得を、法人に分散させることで、個人の税率を低くできる可能性があります。
他にも経費計上できる範囲の幅が広がることや、社会保険料の最適化が図れます。
以下マイクロ法人の設立によるメリットを4つ解説していきます。
- 所得税と住民税の節税
- 損金算入できる範囲
- 社会保険料の節税
- 免税事業者による消費税の免税
所得税と住民税の節税
マイクロ法人を設立すると、個人事業主としての売上は法人の売上となります。そして、代表者は法人から役員報酬として給与を受け取る形に変わります。
この役員報酬には、会社員と同じ給与所得控除の適用が可能です。所得区分を「事業所得」から「給与所得」へ切り替えることで、この控除分だけ課税所得が減り、所得税の負担を抑えることができます。
住民税も所得に連動して計算されるため、同様に負担を抑えることができます。
損金算入できる範囲の増加
マイクロ法人は、個人事業主よりも経費(損金)として算入できる範囲が広がる点が大きなメリットです。これは、法人の経費と認められる項目が増えるため、その分だけ法人税の課税対象となる利益を減らせることを意味します。
- 役員報酬:自身に支払う給与も法人では経費になります。給与として受け取るため、給与所得控除が可能。
- 退職金:会社を辞める際に支払う退職金は、適切な金額であれば法人の経費になります。
- 出張手当:旅費規程に基づいた日当が支給されます。この手当は法人の経費になり、かつ所得税が非課税となります。
社会保険料の節減
個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入しますが、これは所得に応じて保険料が高くなる傾向にあります。
一方、マイクロ法人化し役員となった場合、健康保険と厚生年金保険への加入義務が生じます。法人として加入する社会保険料は役員報酬を基に算出されるため、この報酬額を低く設定することで、結果的に社会保険料の負担を抑えることができます。
免税事業者による消費税の免税
消費税は、原則として2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた事業者に、その納税義務が発生します。
例えば、個人事業主として複数の事業で合計1,000万円以上の売上がある場合、個人事業主の事業と切り離して、マイクロ法人として立ち上げれば、その法人は設立から最大2年間は消費税の免税事業者となることができます。
ただ、免税事業者は適格請求書(インボイス)を発行できません。そのため、取引相手が仕入税額控除を受けられなくなり、取引に影響が出る可能性があります。最大2年間の免税メリットは大きいですが、取引先の状況を考慮した上での検討が不可欠です。
マイクロ法人を設立するデメリットもある?
マイクロ法人を設立することのメリットを解説してきましたが、デメリットも存在するため注意が必要です。
まず、設立時には、定款の作成や各種登記・届出など申請書類が多く手間もかかります。
さらに、ランニングコストとして、毎年法人住民税の均等割(年間約7万円)がかかります。また、代表者が1人であっても、社会保険への加入が義務付けられます。
会計や税務申告も複雑になるため、設立を考えられている場合は、これらのコストや事務負担について税理士などに相談した上で決めるのが良いでしょう。
業務や手続きが増える
個人事業主の場合は確定申告のみで完結していたところが、マイクロ法人では法人税申告書に加え、法人事業概況説明書や勘定科目内訳書などが必要となり、提出する書類が多くなります。
また、マイクロ法人の設立には定款の作成や法務局への登記申請などがあります。これらの書類の作成には、専門的な知識が必要になるため、税理士などへ依頼するのが良いでしょう。
法人の設立費用や維持費用がかかる
マイクロ法人の設立には、個人事業にはない初期費用が発生します。会社形態によって金額は異なり、株式会社では最低約20万円、合同会社では最低約6万円が目安となります。
また、維持費用であるランニングコストも重要です。事業を行っていなくても、法人である限り原則として毎年、法人住民税の均等割(年間約7万円)がかかります。加えて、税務申告を税理士に依頼する際の顧問料や決算申告費用、会計ソフト代、事務所費用なども継続的に発生します。
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マイクロ法人の設立手順
マイクロ法人の設立は、以下の5つのステップに分けて考えることができます。- 設立前:会社の基本事項の決定
- 定款の作成と認証(公証役場での手続き)
- 設立に必要な資金の準備と書類作成
- 法務局への設立登記申請
- 設立後:各所への届出(行政手続き)
①会社の基本事項の決定
定款を作成し登記を行うためには、会社の基本的な骨格となる事項を事前に定めておく必要があります。これらの基本事項は、会社の同一性や事業の範囲を示すものであり、設立手続きの基盤となります。
特に定款に記載しなければならない絶対的記載事項の記載が欠けていると、定款そのものが無効となるため注意が必要です。
マイクロ法人の場合は、「発起人」と「出資者」が一人(社長自身)であるケースがほとんどです。
| 基本事項 | 詳細 |
|---|---|
| 会社の商号 | 会社の名称(例:株式会社〇〇) |
| 発起人 | 設立を企画し、出資や定款の作成、設立手続きを行う人 |
| 本店所在地 | 会社の正式な住所 |
| 事業目的 | 会社が行う事業内容 |
| 資本金 | 会社設立時に発起人が出資する金額(1円以上) |
| 1株あたりの金額 | 資本金を株式数で割った金額 |
| 発行可能株式の総数 | 会社が発行できる株式数の上限 |
| 機関設計 | 会社の意思決定機関(株主総会、取締役、監査役など) |
| 会社設立日 | 法務局に登記申請を行った日 |
| 事業年度 | 会社の決算期間 |
| 出資者 | 会社に資金を出資する人 |
| 広告 | 会社が官報などで公告を出す方法 |
②法人印鑑の作成
マイクロ法人を設立する際、個人事業主とは違いとして、法人特有の必須アイテムが必要となります。その代表的なものが法人印鑑です。
個人事業主の場合、実印や銀行印は個人のもので対応可能でしたが、法人の場合は、会社の実印、銀行印、角印(社印)の3つを作成するのが一般的です。
これらは法人登記の際に必要となり、銀行口座開設や契約書への押印などで、設立後の頻繁に必要となってくるものになります。
③定款の作成、法務局への登記申請
定款は、会社の憲法とも呼ばれる、会社の目的や組織、活動に関する根本規則を定めた重要な書類です。インターネット上でテンプレートやひな形をダウンロードすることが可能です。法務省や日本公証人連合会などで提供されているのを利用すれば、ゼロから作成する手間も省けます。
株式会社を設立する場合、本店所在地を管轄する公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。
公証役場で定款の認証を受ける際に必要になるものは以下のものになります。
- 定款(3通:公証役場用、会社保存用、登記申請用)
- 発起人全員分の印鑑登録証明書と実印
- 登記事項証明書
- 実質支配者となるべき者の申告書
④各所への届出
法人の設立登記が完了したら、次は税金や社会保険に関する各種の届出が必要になります。これらの届出は、提出先(税務署、年金事務所、労働基準監督署など)や提出期限がそれぞれ異なるため、手続きが漏れないよう注意が必要です。特に社会保険に関する届出は期限が短く設定されています。
| 届出場所 | 手続き | 提出期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日 | |
| 給与支払い事務所等の開設届出書 | 事務所の開設日(給与を支払い始めた日)から1ヶ月以内 | |
| 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書 | 提出期限はありません。 | |
| 年金事務所 | 健康保険、厚生年金保険新規適用届 | 法人の設立から5日以内 |
| 健康保険、厚生年金被保険者資格取得届 | 資格取得日から5日以内 | |
| 健康保険被扶養者(異動)届 | 資格取得日から5日以内 | |
| 都道府県事務所 | 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 |
| 市町村役場 | 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 |
| 労働基準監督署 | 法人設立届出書 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 労働保険 保険関係成立届 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 | |
| 労働保険概算保険料申告書 | 保険関係が成立した日から50日以内 | |
| 就業規則(変更)届 | 遅滞なく | |
| 適用事業報告書 | 事業開始後、遅滞なく | |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 適用事業となった日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険被保険者資格届 | 被保険者となった事実があった日の属する月の翌月10日まで |
マイクロ法人の節税効果について税理士にご相談ください
マイクロ法人による節税効果は非常に魅力的ですが、その効果を最大限に得るには、正しい税務知識に基づいた運用が不可欠です。
マイクロ法人の設立自体は違法ではありません。しかし、事業実態がないにも関わらず、意図的に所得を分散させるといった運用をすると、税務署から租税回避行為の疑いをかけられ、節税効果を否認されるリスクがあります。
マイクロ法人を設立すべきかどうか、また、設立後の適切な役員報酬の設定や経費の処理は、個々の事業状況により異なります。
税制上のリスクを避け、節税メリットを享受するために、ぜひ一度、税理士などの専門家にご相談ください。