経費で節税できる仕組みとは?計上できるもの・できないものや注意点
経費とは、事業で売上を得るために支出する費用のことです。法人や個人事業主(フリーランス)、副業で事業所得を得ている会社員の方は、この経費を適切に計上することで節税につなげることができます。
ただし、経費には計上できる範囲が定められており、事業と関係のない支出まで計上するなど不適切な処理を行うと、税務調査で指摘されるなどのリスクが高くなります。
この記事では、経費で節税できる仕組みや計上できるもの・できないもの、節税効果を高めるポイント、注意点を解説していきます。
経費で節税できる仕組み
法人も個人事業主も共通して、事業で得た「利益」に対して税金がかかる仕組みになっています。利益は「収入(売上)-経費」で算出され、この利益に税率を掛けた金額が納める税金の目安となります。
つまり、経費を漏れなく計上すれば利益(課税所得)が圧縮され、その分だけ納税額を抑えられるのです。逆に経費の計上漏れがあると、本来よりも多く税金を納めてしまっている可能性があります。
ただし注意したいのは、経費を使ったからといって、支出した金額がそのまま戻ってくるわけではないという点です。あくまで軽減されるのは「税額」の一部であり、経費を使う分だけ実際の現金は流出します。そのため、節税だけを目的とした不必要な支出には注意が必要です。
なお、経費計上によって課税所得を圧縮できるという基本的な仕組みは、法人・個人事業主のどちらも共通しています。
個人事業主の経費による節税効果はどれくらい?
例えば、年間売上600万円の個人事業主が、経費100万円を計上する場合としない場合を比較してみましょう(社会保険料等は考慮せず)。
経費を計上しない場合
- 合計所得金額:600万円 → 基礎控除63万円(489万円超655万円以下)
- 課税所得:600万円-63万円=537万円
- 所得税額:537万円×20%-42万7,500円=64万6,500円
経費100万円を計上する場合
- 合計所得金額:500万円 → 基礎控除63万円(489万円超655万円以下)
- 課税所得:500万円-63万円=437万円
- 所得税額:437万円×20%-42万7,500円=44万6,500円
このケースでは所得税だけで約20万円の節税効果となります。さらに住民税や国民健康保険料の負担も軽減されるため、実際の節税効果はより大きくなります。
節税対策として経費計上できるもの・できないもの
経費になるかどうかの判断基準は、事業のための費用であることに加えそれを証明できる資料があることの2点です。ただし、金額が社会通念上の常識を超える高額な支出は認められない場合があります。
また会計には、売上と経費が対応していなければならないという原則があります。そのため、来期の売上に係る費用は今期中に支払いや納品を済ませていても、来期の経費として計上する必要があります。
経費計上できるもの
事業に関連していれば、下記のように幅広い支出が経費として計上できます。業種によって計上できる勘定科目や割合は異なるため、自社に該当する項目を確認しておきましょう。
| 経費計上できるもの | 概要 |
|---|---|
| 地代家賃 | 事務所・店舗・倉庫などの家賃や賃借料 |
| 福利厚生費 | 従業員の慰安・健康診断・社員旅行などの費用 |
| 接待交際費 | 取引先との会食・贈答など事業に関わる交際費 |
| 旅費交通費 | 電車・タクシー・出張時の交通費や宿泊費 |
| 消耗品費 | 文房具・備品など少額で消耗する物品 |
| 通信費 | 電話・インターネット・郵送などの費用 |
経費計上できないもの
売上に関係のない、個人的な支出は経費になりません。例えば自宅兼事務所の家賃や水道光熱費は、プライベートで使用している部分を除外し、事業で使用した割合のみを計上します(家事按分)。自家用車兼社用車や携帯電話料金も同様です。
また、業務中に発生した駐車違反などの罰金も経費計上できません。
| 経費計上できないもの | 概要 |
|---|---|
| 事業に関連しない費用 | プライベートな飲食・買い物など私的な支出 |
| 法人税・法人住民税 | 所得に対して課される税金は経費にできない |
| 個人の社会保険料 | 事業主本人の国民健康保険料・国民年金など(※所得控除の対象) |
| 罰金・科料 | 交通違反の反則金など罰則的な支出 |
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経費で節税する場合の注意点
税金を減らす目的で過度に経費を計上すると、その分だけ現金が減り、資金繰りが厳しくなるリスクがあります。また高額な車や備品は購入した年に一括で経費計上できず、耐用年数に応じて分割計上(減価償却)する点にも注意が必要です。ここでは主な注意点を解説します。
- 不要な経費が多いとキャッシュフローが悪化する
- 経費計上はタイミングを意識する
- 経費率が高いと税務調査のリスクが高まる
不要な経費が多いとキャッシュフローが悪化する
節税を意識するあまり、必要のない支出まで増やしてしまうと、かえって事業運営に支障をきたす恐れがあります。確かに支出を増やせば利益を圧縮でき、税負担は軽くなります。
しかし、それ以上に現金が流出するため、手元資金が減り資金繰りが悪化しかねません。
節税で軽減できるのはあくまで「税額の一部」であり、支出額そのものが戻ってくるわけではないのです。税負担の軽減だけを目的にするのではなく、その支出が本当に事業に必要なものかどうかを見極めることが何よりも重要です。
経費計上はタイミングを意識する
節税効果を高めるには、経費を計上するタイミングを意識することも大切です。支出のタイミングを適切に管理することで、納税額を調整しながら事業資金を確保できる場合があります。
例えば、利益が大きく出た年度には、翌期以降に予定していた設備投資や備品購入を前倒しするといった方法があります。また、後述する「短期前払費用の特例」を活用すれば、年払いした費用を当期の経費に一括計上できるケースもあります。
ただし、当期の売上に対応しない費用を無理に計上すると経費として認められないため、あくまで会計原則の範囲内で計画的に行うことがポイントです。
経費率が高いと税務調査のリスクが高まる
売上に対する経費の割合(経費率)が極端に高いと、税務署から「不当な経費計上をしているのではないか」と疑われ、税務調査の対象となるリスクが高まります。特に、同業種の平均と比べて経費率が突出して高い場合や、一般的ではない項目・高額な支出が多い場合には注意が必要です。
経費率の目安は業種によって大きく異なります。例えば小売業や飲食業は原価がかかるため経費率が高めですが、コンサルタントなど原価の少ない業種では低くなる傾向があります。自社の業種の平均的な水準を把握し、著しく乖離しないよう適正な計上を心がけましょう。
税務調査とは?経費計上による節税効果を高めるためポイント5選
法人や個人事業主の規模・状況によって、有効となる節税方法は異なります。また、節税対策は計画を立てて、ベストなタイミングで行うことが重要です。ここでは代表的な5つのポイントを紹介します。詳細は専門家である税理士にご相談ください。
- 前払いや後払い費用を適切に計上する
- 家事按分を活用して漏れなく経費計上する
- 不要な固定資産を売却する
- 少額減価償却資産の特例を活用する
- 従業員へ決算賞与を支給する(法人向け)
①前払いや後払い費用を適切に計上する
費用を計上するタイミングを調整することで、当期の利益を圧縮し節税につなげる方法です。
前払費用とは、家賃や保険料など継続的なサービスに対して先に支払う費用のことを指し、原則は期間に応じて按分しますが、「短期前払費用の特例」を使えば、支払日から1年以内に受けるサービスへの年払い分を、支払った年度に一括で経費計上できます。
一方、後払い費用(未払費用)は、当期中にサービスの提供を受けているものの、支払いが翌期になる費用です。決算時に未払計上することで当期の経費にできます。
ただし、短期前払費用の特例は「継続して適用すること」が要件で、一時的な適用は認められない点に注意が必要です。
②家事按分を活用して漏れなく経費計上する
自宅兼事務所のように、プライベートと事業が混在する支出は「家事按分」によって経費計上できます。家事按分とは、支出のうち事業で使った割合のみを、合理的な基準で経費として計上する仕組みです。
家事按分できる主な費用には、以下のようなものがあります。
- 家賃・地代:事業に使用している床面積の割合で按分
- 水道光熱費:使用時間や使用面積で按分
- 通信費:業務で使用した時間・日数の割合で按分
- 自動車関連費(ガソリン代・車検代など):事業で使った走行距離の割合で按分
按分の基準は、面積・使用時間・走行距離など客観的な根拠に基づいて算出することが重要です。根拠が曖昧だと税務調査で否認される恐れがあるため、算出方法を記録・保管しておきましょう。
③不要な固定資産を売却する
使わなくなった設備や機械などの固定資産を除却・売却して、「除却損」や「売却損」が出た場合は節税につながります。
除却損とは、まだ帳簿価額(未償却残高)が残っている固定資産を廃棄・処分した際に発生する損失のことです。この損失を当期の経費として計上することで利益が圧縮され、税負担を軽減できます。売却して損失が出た場合も同様に経費計上が可能です。
ただし、実際に除却・廃棄した事実を証明できる書類(廃棄業者の証明書や写真など)を残しておく必要があります。書類がないと、除却の事実自体を否認される可能性があるため注意しましょう。
④少額減価償却資産の特例を活用する
「少額減価償却資産の特例」とは、中小企業者等が取得価額40万円未満(2026年3月31日以前に取得した資産については30万円未満)の減価償却資産を購入した場合に、通常は耐用年数にわたって分割計上するところを、購入した年度に取得価額の全額を一括で経費計上できる制度です。
本来なら数年に分けて計上する費用を当期に一度に計上できるため、利益を大きく圧縮でき、節税効果が高まります。パソコンや事務機器などの購入時に活用しやすい特例です。
ただし、この特例には年間の合計取得価額300万円までという上限があります。また、青色申告を行う中小企業者や個人事業主が対象で、適用には確定申告書に明細の添付または青色申告決算書に必要事項の記載が必要です。適用期限も定められているため、最新の要件を確認しましょう。
⑤従業員へ決算賞与を支給する(法人向け)
法人の場合、決算期末に従業員へ「決算賞与」を支給することで、その金額を当期の損金(経費)に算入でき、節税につながります。
さらに、以下の条件を満たせば、期末までに支給が完了していなくても未払計上が認められます。
- 決算賞与を支給することおよび支給額を、事業年度末までに全従業員へ通知する
- その事業年度終了の翌日から1か月以内に支給を完了する
- 通知した年度内に損金処理(未払計上)を行う
これにより、業績が好調な年度の利益を従業員に還元しつつ、税負担も軽減できるという二重のメリットがあります。
ただし、役員に対する決算賞与は原則損金算入できない点、また支給要件を一つでも満たさないと当期の損金として認められない点に注意が必要です。
経費と節税に関するQ&A
節税のために経費計上する際の必要書類は何ですか?
経費を計上するには、その支出が必要経費であることを証明する領収証、またはそれに準ずる書類・データが必要です。
領収証には、①代金を受領した相手の住所・氏名、②支払年月日、③支払いの理由(但し書き)、④金額、⑤支払者の氏名(宛名)の5項目が記載されているのが原則です。
これらを満たせば、レシートなどでも証明書類として認められます。また、タクシー代やコインパーキング代など宛名がなくても認められるケースもあります。領収証を紛失した場合は、クレジットカードの利用明細や通帳の記録など、金銭の授受を証明できるものが代替書類となります。
節税対策で不適切な経費計上をした場合、どのようなペナルティがありますか?
不適切な経費処理が発覚した場合、税務調査を経て以下のようなペナルティ(加算税)が課される可能性があります。
- 過少申告加算税:申告額が本来より少なかった場合に課される税金
- 無申告加算税:期限までに確定申告をしなかった場合に課される税金
- 不納付加算税:源泉所得税を期限までに納付しなかった場合に課される税金
- 重加算税:意図的に売上を隠したり経費を水増ししたりするなど、悪質な仮装・隠蔽があった場合に課される最も重いペナルティ
悪質と判断されると重加算税で最大35~40%が上乗せされるため、これらに加え、納付が遅れた期間に応じて「延滞税」も発生します。正確な処理を心がけましょう。
副業をしている会社員でも経費計上による節税は可能ですか?
副業をしている会社員でも、副業が「事業所得」または「雑所得」に該当する場合、副業のために使った費用を経費として計上でき、節税が可能です。
例えば、副業に使うパソコンや通信費、取材のための交通費、資料代などが経費に該当します。これらを副業収入から差し引くことで所得が圧縮され、所得税・住民税の負担を軽減できます。
節税するには、収入と経費を記録し、確定申告を行う必要があります。特に事業所得として青色申告ができれば、最大65万円の青色申告特別控除も受けられます。ただし、本業と副業の区別を明確にし、私的な支出を混ぜないよう注意が必要です。
決算前に経費を使うと節税につながりますか?
決算前に経費を使うことで利益を圧縮でき、法人税や所得税などの税負担を軽減できる場合があります。業績が好調な年度に有効な方法です。
ただし、節税を目的として不要な支出を増やしてしまうと、税額以上に現金が流出し、かえって資金繰りが悪化する恐れがあります。決算前の支出は、必要な設備投資や備品購入、広告宣伝費など、本当に事業に必要なものに限定することが大切です。
節税効果とキャッシュフローの両方を考慮し、計画的に判断するようにしましょう。
経費を活用した節税対策ならキークレア税理士法人にご相談ください
経費は、事業の利益を圧縮して納税額を抑えられる一方、計上できる範囲や証拠書類の要件、計上のタイミングなど、判断が難しい場面も少なくありません。不適切な処理は税務調査で指摘されるリスクにもつながります。
経費を漏れなく効率よく計上するには、証憑書類の保存・管理といった経理体制の整備も欠かせません。キークレア税理士法人には、グループ会社にクラウドを活用した経理体制の整備をサポートする法人もございます。
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