相続税の修正申告とは|必要なケースやペナルティ、手続き方法

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

相続税の申告後に新たに財産が見つかるなどして、初めに申告した相続税額から税額が増えた場合には、相続税の修正手続きが必要になります。
これを「相続税の修正申告」といいます。

修正申告の際には相続税の不足額と納付が遅れたことによる延滞税を支払う必要があります。延滞税は納付が遅れれば遅れるほど金額が大きくなります。
納付額が少なかったと判明した時点で、すぐに修正申告をするようにしましょう。

相続税の修正申告とは

相続税は申告後に新たな相続財産が発覚した、相続財産の評価方法が間違っていたなどの理由で納税額が変わることがあります。

「相続税の修正申告」とは、申告後に納税額が増えた時に行う申告のことです。
修正申告をする際は申告に必要な書類、申告期限、追加納付する税額などに気をつける必要があります。

更正の請求との違い

「更正の請求」とは、本来納付すべき相続税額よりも多く納税していて、還付を受けるために行う手続きです。

修正申告と更正の請求の違いを以下にあげます。

修正申告

  • 申告・納付した額が少なかった場合に行い、不足した税額、延滞税などを追加納付する。
  • 申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から5年10か月以内(相続税の申告期限から5年以内)。

更正の請求

  • 申告・納付した額が多かった場合に行い、払い過ぎた税金が還付される。
  • 請求期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から5年10か月以内(相続税の申告期限から5年以内)。ただし、遺留分侵害額請求等の特別な事由があった場合にはその事由が発生してから4か月以内。
相続税の更正請求とは?期限・手続きの流れ・必要書類などを詳しく解説

訂正申告との違い

訂正申告とは本来納付すべき相続税額と違う額を納税していた場合に、相続税の申告期限までに行う手続きです。

修正申告と訂正申告との違いを以下にあげます。

修正申告

  • 申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から5年10か月以内(相続税の申告期限から5年以内)。
  • 不足した税額の他、延滞税などを追加納付する。

訂正申告

  • 申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月内(相続税の申告期限以内)。
  • 不足した税額を追加納付するか、多すぎた税額が還付される。

相続税の修正申告が必要なケース

①申告後に新たな相続財産が見つかった

申告後に新たな財産が見つかった場合には、相続財産が増え相続税額が増えるため修正申告が必要になります。
遺産分割協議書に後から財産が見つかった場合の取り決めが記載されていない場合、再度遺産分割協議をやりなおす必要があります。

新たな財産が見つかったことにより相続税の総額が変わるため、新たな財産を取得した相続人だけでなく、他の相続人も相続税の修正申告が必要になります。

②相続税の計算ミスや財産評価の誤りが発覚した

相続財産の評価方法や税額計算は非常に複雑なため、誤った税額を申告・納付してしまうことがあります。
特に専門家へ任せずに相続人の方が自分で申告したケースで発生しやすいといえます。

相続財産の中でも土地は、専門家でも評価が異なるため修正申告の対象となりやすいです。相続財産に土地が含まれている場合など、自分で申告するのが不安な場合は税理士等の専門家に依頼することをお勧めします。

③未分割申告した後、決定した分割内容で相続分に変更があった

相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

分割協議が完了していない場合は、法定相続分に従って財産を取得したものとして相続税の申告・納付をします。
その後遺産分割協議が完了し、法定相続分とは異なる分割によって納税額を再計算した際に、相続税の総額が変わらない場合は、更正の請求や修正申告の提出は納税者の判断になります。

ただし、多くの場合は分割によって相続税額が増える相続人と減る相続人が発生します。
その場合は税務署に更正の請求や修正申告をせずに、相続人間で相続税相当額の精算をすることもできます。

④相続税の特例制度を誤って適用していた

相続税の税額が控除される主な特例制度をあげます。

  • 贈与税額控除
  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

これらの控除は適用要件が細かく決まっているため、正確に把握し適用することは難しいといえます。
特例制度を誤って適用し申告・納付していたことが分かったら、修正申告が必要です。

相続税の基礎控除とは?1人当たりの金額や計算方法などを解説

⑤税務署から財産の申告漏れを指摘された

相続税の申告漏れは税務調査で発覚することも多くあります。
国税庁発表の相続税調査状況の資料によると、令和3年度に実施された、自宅等に直接来訪する実地の税務調査は約6,300件です。

そのうち申告漏れが指摘されたのは約5,500件であり、約90%にのぼります。
また、電話等での簡易な調査は約15,000件で申告漏れの指摘は3,600件、約25%が指摘を受けています。

税務調査は申告書を提出した1~2年後の8月~11月ごろに税務署から連絡が入ることが多いです。税務調査が入る可能性の高いケースとして、「申告した財産に漏れがあった」、「申告が必要なのにしなかった」、「相続財産の額が大きい」、「自分で申告した」などがあります。

相続税の修正申告にはペナルティが課される

相続税の修正申告は、相続税の納付期限よりも後に納めていなかった相続税を払うため、ペナルティとして以下の附帯税が課されます。

延滞税

未納分の相続税に対してかかる、納付期限を過ぎた日数分の利息に相当する税金です。修正申告が遅くなるほど増額します。

過少申告加算税

期限内に申告・納付した額が低かったことに対する税金です。申告の状況と税率については以下の通りです。

状況 追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額以下の部分 追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告 課税なし
税務調査の通知を受けてから調査が入るまでに申告 5% 10%
税務調査を受けた後に申告 10% 15%
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額以下の部分
課税なし
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分
課税なし
税務調査の通知を受けてから調査が入るまでに申告
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額以下の部分
5%
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分
10%
税務調査を受けた後に申告
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額以下の部分
10%
追加の税額のうち「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分
15%

無申告加算税

正当な理由がなく、相続税の申告を期限までにしなかった場合に、課される税金です。申告の状況と税率については以下の通りです。

状況 相続税額のうち50万円以下の部分 相続税額のうち50万円を超える部分
申告期限から1か月以内に自主的に申告(適用要件あり) 課税なし
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告 5%
税務調査の通知を受けてから調査が入るまでに申告 10% 15%
税務調査を受けた後に申告 15% 20%
過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがあり、税務調査を受けてから申告した場合 25% 30%
申告期限から1か月以内に自主的に申告(適用要件あり)
相続税額のうち50万円以下の部分
課税なし
相続税額のうち50万円を超える部分
課税なし
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告
相続税額のうち50万円以下の部分
5%
相続税額のうち50万円を超える部分
5%
税務調査の通知を受けてから調査が入るまでに申告
相続税額のうち50万円以下の部分
10%
相続税額のうち50万円を超える部分
15%
税務調査を受けた後に申告
相続税額のうち50万円以下の部分
15%
相続税額のうち50万円を超える部分
20%
過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがあり、税務調査を受けてから申告した場合
相続税額のうち50万円以下の部分
15%
相続税額のうち50万円を超える部分
20%

重加算税

財産を隠蔽したり、わざと過少に申告したりするなど悪質とみなされた場合に課される税金です。申告の状況と税率については以下の通りです。

状況 追加納付した税額
申告書提出 35%
申告書未提出 40%

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相続税の修正申告期限

相続税の修正申告には期限があります。被相続人が死亡したことを知った日の翌日から5年10か月以内(相続税の申告期限から5年以内)です。
また、納税期限は修正申告をした日になります。延滞税は申告が遅くなるとその分増額されるため早めに申告をした方がよいでしょう。

修正申告の期限が過ぎた後は時効となり申告の必要はなくなります。しかし、税務署から指摘されず、無申告のまま実際に時効を迎えることはほとんどないでしょう。
なお、意図的な過少申告は悪質と判断され、時効が7年に延長されます。

相続税の修正申告の手続方法

①相続税の修正申告書などの必要書類を用意

相続税の修正申告の必要書類は以下の通りです。

  • 相続税の修正申告書 第1表
  • 相続財産の種類別価額表 第15表(修正申告用)
  • 相続税納付書
  • 本人確認書類
  • 追加で必要になる書類(特例を受ける場合)

必要書類

相続税の修正申告をするには、5.1.①であげた必要書類を用意します。

相続税の修正申告書 第1表

相続財産の種類別価額表 第15表(修正申告用)

国税庁HPよりダウンロードできます。

相続税の申告書等の様式一覧(令和4年分用)|国税庁

記入例は国税庁のHPで確認できます。修正前後の課税金額など必要項目を記入します。

相続税の申告書の記載例

相続税納付書

税務署や金融機関の窓口でもらえます。

本人確認書類

マイナンバーカードの写しもしくは、マイナンバーの通知カードと運転免許証等の身分証明書の写しです。

特例を適用する際に使用する書類

「配偶者の税額軽減額の計算書」、「小規模宅地等についての課税価格の計算明細」などが該当します。

②修正申告書を提出する日までに納税を済ませる

修正申告を行う場合、納付期限は修正申告書を提出する日となります。
不足していた相続税を納付する必要があります。

納税は最寄りの金融機関のほか、修正申告書を提出する税務署でもできます。
延滞税の納付書が相続税を納付した後に税務署から送られてきますので、改めて納付しましょう。

③税務署へ修正申告書を提出する

納税が完了したら必要書類とともに修正申告書を提出します。

提出先は初めに相続税申告書を提出した税務署(被相続人の住所地を管轄している税務署)です。
提出方法は窓口に直接提出、郵送のほか、e-Taxを利用することも可能(2019年1月1日以降発生した相続からが対象)です。

相続税の修正申告を税理士に依頼するメリット

相続税の計算は非常に複雑であるため、税理士に依頼することをお勧めします。相続税に強い税理士に依頼するメリットとして、相続税を正しく計算し申告してくれることがあげられます。また、手間のかかる作業を税理士に任せることで、より早い申告が可能になり、延滞税が最小ですみます。また、税理士に依頼することで、次回以降の相続についてアドバイスを受けることも可能です。

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キークレア税理士法人には相続専門の税理士が在籍しております。
相続財産の適正評価及び、相続税額の減額特例を的確に適用することで相続税申告を正しく行うことができます。

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相続税の修正申告に関するQ&A

税務署からの修正申告要請に納得いかない場合、拒否できますか?

修正申告要請に納得がいかない場合、税務署の判断が正しいかどうかを税理士に判断してもらいましょう。

修正申告を拒否した場合は、税務署長が更正処分を行います。これにより、強制的に納税額が確定します。

納得がいかない場合には、更正通知を受けた日の翌日から3か月以内に、その通知を行った税務署長に再調査の請求もしくは国税不服審判所長に審査請求を行うことができます。
この際、修正申告をしてしまっていると、請求ができなくなりますので注意が必要です。

修正申告でも配偶者の税額軽減や障害者控除を適用できますか?

どちらも適用できます。
相続税申告で配偶者の税額軽減は申告することが適用要件ですので、納付税額が0円になるときも相続税申告が必要です。

修正申告は、相続税額が増える際に行う申告ですが、配偶者の税額軽減は申告することが適用要件ですので、納付税額が0円になる場合でも修正申告を行うことができるとされています。

なお、税務調査により財産の申告漏れが指摘されて、修正申告をした場合は、配偶者の税額軽減は適用できません。
また、障害者控除は当初申告要件がありませんので、修正申告での適用は可能です。

相続税の修正申告が必要になったらお早めにキークレア税理士法人にご相談ください!

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万が一相続税の修正申告が必要になった場合には、お早めにキークレア税理士法人にご相談ください。

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