不動産の相続に必要な手続き|流れと遺産分割の方法について
目次
今回は不動産を相続する際に必要な手続きについてご説明致します。
不動産とは土地や家屋等、動かすことができない財産のことをいいます。相続が発生した場合、名義変更手続きである相続登記は必要不可欠な手続きであり、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合には相続税申告も必要となります。
先祖代々の思い入れのある不動産が、「負動産」にならないためにも、相続手続きのポイントをご説明したいと思います。
不動産の相続手続きの流れ
不動産の相続手続きの流れは次の通りです。
- 遺言書の有無の確認
- 相続人の確定
- 相続財産の把握
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 相続財産の総額が基礎控除額を超える場合には相続税申告
遺言書の有無を確認する
まずは自宅を探しましょう。
見つからない場合の方法は次の通りです。「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のそれぞれの場合でご説明致します。
「公正証書遺言」の場合
公証役場で原本を保管しているため、公証役場にて「遺言検索システム」を利用して探すことができます。
「自筆証書遺言」の場合
令和2年7月より法務局に預けることができるようになりましたので、法務局に所定の書類を提出して、遺言書が保管されているかどうかを確認することができます。
それ以前は銀行の貸金庫や税理士等の専門家に保管してもらうことが一般的でした。
いずれも相続人に発見されなければ遺言書を残した意味がなくなってしまいます。
第三者による改ざんを防ぐためにも適切な場所に保管することをお勧めします。
相続人調査を行い、相続人を確定させる
「相続人調査」とは、言葉通り相続人が誰なのかを調査して確定させることです。
相続登記や預貯金の払戻しには相続人全員の同意が必要なことから、相続人が確定しないと、相続手続きが滞ってしまいます。
そこで「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本」を取り寄せ、記載内容を確認して相続人を確定する必要があります。
市区町村の窓口で「出生から死亡まで」と請求することで取得ができます。
しかし、転籍している場合には全ての戸籍がその市区町村にないことがあります。この場合には最新の戸籍から順にさかのぼって取得することになります。
不動産やその他の相続財産を把握する
相続が発生した場合には、不動産、銀行口座、株式、現金、貴金属、債権、債務など、全ての相続財産を特定します。
不動産については、毎月4月頃に市区町村から送付されてくる「固定資産税の納税通知書」に所有する不動産が記載されています。漏れなく全てではないので、注意が必要です。
例えば、課税標準額が免税点(土地の場合は30万円、家屋の場合は20万円)未満の場合もしくは、亡くなった年の1月2日以降に不動産を取得した場合には、そもそも納税通知書が送付されません。
また、共有名義の場合には共有者に送付されている場合があります。
すべての不動産を把握するために、名寄帳を取得することをお勧めします。
遺産分割協議を行う
「遺産分割協議」は、相続人全員が合意し、財産を公平に分配するための重要な手続きです。
遺言書の内容や法定相続分に基づく必要はあるものの、相続人全員が合意すれば異なる内容での遺産分割も可能です。遺産分割協議が合意に達したら、「遺産分割協議書」を作成します。
この協議書には、財産の名称、評価額、各相続人の分配の詳細、およびその他の関連情報が記載されます。
遺産分割協議をスムーズに進めるためには、相続人間での協力が必要不可欠です。
相続登記を行う
不動産の登記は、その不動産が誰のものであるかを明確にするための制度です。
相続によって不動産の所有権が移転した場合の登記を「相続登記」とよびます。相続登記をすることで所有権が法的に認められますが、しなかった場合には売却ができないなどのデメリットが発生します。
また、相続登記の申請をせずに長い年月が経った場合、新たな出生や死亡などで関係者が増えることがあります。そうなると申請しようとしても関係者の必要書類の入手が難しくなることもあります。
なお、2024年4月1日からは権利関係が複雑になることを防ぐ目的で相続登記の申請が義務化されます。
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不動産の遺産分割方法
現物分割(そのまま相続)
「現物分割」とは、相続財産をそのままの形で各相続人に分割する方法です。最もシンプルでオーソドックスな方法といわれています。
例えば、「土地、建物は妻、車は長男、現預金は長女」、といった分割方法です。
メリットは手続きが簡単なことです。
各相続人が相続した財産だけを自分名義に変更するだけだからです。
また、財産の詳細な評価についても相続人間で合意があれば分割協議の際には不要になります。
この方法では特定の相続人に財産を集中させることも可能です。
一方、デメリットは各相続人間で取得する財産の額に不公平が起こりやすいことです。
また、土地を分筆して分割する場合には測量等の専門知識と費用が必要となり、さらには分筆によって土地が狭くなるなどした結果、土地の評価額が下がることも考えられます。
換価分割(売却してお金を分ける)
「換価分割」とは相続財産を売却し、得られた売却金を相続人で分割する方法です。
メリットは公平に相続財産を分割できる点です。また、一般的には第三者への売却になるため、相続人間での争いが起こらないこともメリットです。
一方で、デメリットもあります。売却を急ぐと安値でしか売れない場合があること、不動産については相続登記を経てからの売却になるため、登記費用や仲介手数料が発生し、譲渡益が出た場合には譲渡所得税が発生することです。
なお、換価分割をする場合の相続税の計算は相続税評価額を用います。売却した価格ではないことにご注意ください。
代償分割(1人が相続し代償金を支払う)
「代償分割」とは特定の相続人が相続財産を取得し、他の相続人に対する代償として金銭または土地等の一定の財産を支払う分割方法です。
不動産が残るところは現物分割と同様です。相続財産の現物での分割が困難な場合に行われることが多い方法です。代償として支払われる金銭のことを「代償金」といいます。
メリットは第三者への相続財産の売却がないため、相続財産をそのまま所有できることです。
デメリットは、相続人間で代償金額に折り合いがつかない場合があること、また、相続財産を取得した相続人が取得しなかった相続人に代償金を支払うことができない場合があることなどです。
代償金の支払いの代わりに一定の財産を交付した場合には、その時の時価によって譲渡したことになり、譲渡益が出た場合には譲渡所得税の対象となるため注意が必要です。
共有分割(複数の相続人で不動産を所有)
財産の全部または一部を複数の相続人で共有する分割方法です。
メリットは、同一の相続財産を形を変えずに共有できることです。最も公平な方法ともいえるでしょう。
また、遺産分割協議の際に財産の評価が不要になることもメリットの一つです。
一方で、デメリットもあります。売却しようとするときに共有者全員の合意が必要になることです。
また相続を繰り返すことで、共有者同士の関係性が希薄になることもデメリットです。例えば、今回の相続ではきょうだい間の共有であったものが、次の相続が発生すると、共有者がきょうだいの配偶者や甥、姪になることがあります。
権利関係が複雑になってますます財産活用がしづらくなりますので、あまりおすすめできない分割方法です。
相続する不動産の評価方法
不動産の相続税評価額を算出する場合、自宅建物は比較的簡単に計算できます。
毎年4月頃に市区町村役場から送付される「固定資産税の課税明細書」の「固定資産税評価額」×1.0が相続税評価額になるため、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。
一方、土地の評価は建物よりも複雑です。計算方法は大きく分けて路線価方式と倍率方式の2つがあります。相続税評価額の算出手順は次の通りです。
- 国税庁のホームページの「財産評価基準 路線価図・評価倍率表」で相続財産が路線価方式と倍率方式のどちらの地域にあるかを確認します。
- 以下の算式で相続税評価額の計算をします。
・路線価方式・・・路線価×面積
・倍率方式・・・固定資産税評価額×倍率
その他、土地によっては相続税評価額の減額特例の適用ができる場合があります。適用要件は複雑なので、税理士に依頼することをお勧めします。
財産評価基準書|国税庁 (nta.go.jp)不動産の相続でかかる税金は?
不動産の相続でかかる税金は、相続登記にかかる「登録免許税」と相続税申告にかかる「相続税」です。
「登録免許税」は、相続によって土地や建物を取得した場合には相続登記が必須であることから、必ずかかる税金となります。
こちらは固定資産税評価額の0.4%となります(ただし、相続人以外の方が遺言によって取得した場合は2%です)。ご自身での登記申請も可能ですが、一般的に司法書士等の専門家に依頼することことが多いので、司法書士報酬も発生することになります。
「相続税」については、不動産を含む全ての相続財産の相続税評価額の合計が基礎控除額を超えない場合は課税されません。
税率は一定ではなく、財産の額に応じて高くなる累進課税制度(税率10%~55%)となっています。
また、土地の減額制度の適用にあたっては相続税申告が必要になりますので、相続税申告に慣れた税理士にご相談することをお勧めいたします。
不動産などの相続手続きはキークレア税理士法人へお任せください
不動産などの評価は相続税申告に慣れた税理士に依頼することで、減額特例の適用可能性を探ることができ、相続税を少なくすることができます。
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