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遺言無効確認訴訟とは?無効となるケースや流れ、必要書類などを解説

税理士 飯田 健
監修税理士飯田 健

「あの人がこんな遺言書を残すとは思えない」と感じた場合には、その遺言書が偽造された可能性を考慮し、遺言無効確認訴訟を提起することができます。この訴訟は、遺言書が法的に無効であると裁判所に認めてもらうことを目的としています。

本記事では、この遺言無効確認訴訟とはどういった手続きなのかをご説明するとともに、遺言書が無効と判断されるのはどのようなケースなのかについても、わかりやすくご紹介します。

遺言無効確認訴訟とは?

遺言無効確認訴訟とは、遺言書が法的に無効であることを裁判所に認定してもらうための訴訟です。この訴訟の主な目的は、遺言書の内容に基づいて遺産が分配されることを防ぐ点にあります。

仮に裁判で遺言書が無効と判断された場合は、その遺言書による分割は行われず、相続人同士で遺産分割協議を行うことになります。つまり、遺言の指示に従って遺産を分ける必要がなくなるのです。

遺言が無効になる7つのケース

遺言が無効になる7つのケースは以下の通りです。

  • 遺言能力の欠如
  • 証人欠格者
  • 方式違背
  • 共同遺言
  • 遺言の「撤回の撤回」
  • 錯誤・詐欺・脅迫による遺言
  • 公序良俗違反

遺言能力の欠如

遺言書を作成した時点で、遺言者に遺言能力が備わっていなかった場合、その遺言書は法律上無効とされます。

たとえば、認知症や精神的な病気の影響で判断能力が低下していた場合には、適切な意思決定ができなかったと判断される可能性があります。

また、遺言を作成した時に15歳未満であった場合も、法律上、遺言を有効に作成する能力がないとされています。

証人欠格

公正証書遺言秘密証書遺言を作成する際には、公証役場で公証人のほか、2名の証人の立ち会いが必要とされています。

ただし、証人は誰でも務められるわけではなく、法律上、証人になることができない証人欠格者という立場の人が存在します。

もし証人欠格者が立ち会っていた場合、その遺言書は無効とされてしまいます。

証人欠格者に該当するのは、未成年者のほか、遺言者の法定相続人となる可能性のある人とその配偶者や直系尊属・卑属、公証人の配偶者・四親等以内の親族などです。

方式違背

民法で定められた方式に従っていない遺言書は、原則として無効となります。

たとえば、作成した日付が記載されていない場合や、署名・押印が欠けている場合、また訂正の手続きが民法の規定通りに行われていない場合などは、形式の不備として無効と判断されます。

このような形式的な不備が明らかであるケースでは、裁判にまで発展することはあまり多くありません。

なお、自筆証書遺言の場合には、その遺言書が本当に遺言者自身の手によって書かれたかどうかが争点となることがあり、その際には筆跡鑑定が行われることもあります。

共同遺言

民法の規定により、2人以上の人物が一緒に遺言を作成する「共同遺言」は認められておらず、そのような遺言は無効とされます。

たとえ夫婦であっても、1通の書面に連名で遺言を書くことはできず、それぞれが別個の遺言書を用意する必要があります。

共同遺言が禁止されている理由としては、内容の解釈が複雑になる恐れがあることや、遺言を撤回したくなった場合に、他の遺言者の同意が必要となる可能性があり、遺言の自由が妨げられてしまうことが挙げられます。

遺言の「撤回の撤回」

遺言は、生前であれば遺言者本人が「撤回」することが可能です。撤回が認められるのは、相続開始前、つまり遺言の効力がまだ発生していない段階に限られます。

遺言の撤回方法は、遺言の種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)によって異なるルールが定められています。

なお、一度撤回した遺言について、その撤回をさらに取り消したとしても、元の遺言が自動的に有効に戻ることはありません。元の内容を再度有効にしたい場合は、新たに遺言書を作り直す必要があります。

ただし、錯誤・詐欺・強迫によって撤回が行われたような場合には、例外的に撤回が無効とされ、元の遺言が効力を持つ可能性もあります。

錯誤・詐欺・脅迫による遺言

民法では、錯誤や詐欺、あるいは強迫によって作成された遺言は無効と定められています。さらに、詐欺や脅迫によって遺言を書かせた相続人については、相続欠格となり、相続する権利そのものがなくなる可能性があります。

ただし、遺言無効確認訴訟は遺言者が亡くなってから提起されるため、事実を証明するのが非常に難しく、錯誤・詐欺・強迫を理由に裁判で争われるケースはそれほど多くはありません。

公序良俗違反

「不倫相手に財産を遺贈する」といった内容の遺言は、社会の道徳に反するとして、公序良俗違反により無効と判断される可能性があります。

これは、民法が社会一般の良識に反する遺言内容を認めないとしているためです。
もっとも、遺贈によって他の相続人の生活がどの程度影響を受けるかといった事情も考慮されるため、すべてのケースで無効とされるわけではありません

また、法的には婚姻関係にあった配偶者と長年別居していて、遺贈相手が実質的に「内縁の妻」として生活を共にしていたような場合には、遺言が有効と認められることもあります。

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遺言無効確認訴訟の手続きの流れ

遺言無効確認訴訟の手続きの流れは以下の通りです。

  1. 必要書類を収集する
  2. 家事調停を申し立てる
  3. 遺言無効確認訴訟を提起する
  4. 審理・判決が出される
  5. 遺産分割協議を行う

必要書類を収集する

遺言が有効か無効かを判断するには、主張に応じた証拠を集め、それに基づいて立証する必要があります。

必要となる資料は、どのような理由で無効を主張するかによって異なります。たとえば、形式的な不備(方式違背)を理由とする場合は、遺言書そのものが証拠となります。

一方で、遺言能力の有無を立証するためには、遺言作成時またはその前後の状況を示す医師の診断書などの資料が重要です。ただし、認知症と診断されていた場合でも、それだけで遺言能力がなかったと判断されるわけではない点には注意が必要です。

また、自筆証書遺言において、本当に遺言者が自筆したのかが争点となる場合には、筆跡鑑定が実施されることもあります。
証拠がそろったら、まずは関係者同士での協議を試み、話し合いによる解決を目指すのが一般的な流れです。

家事調停を申し立てる

当事者間の話し合いだけでは解決できない場合、いきなり訴訟に進むのではなく、まずは調停を申し立てる必要があります。遺言無効確認調停とは、家庭裁判所に対して遺言の無効を申し立てる手続きです。この調停では、民間から選ばれた調停委員が、双方の主張を個別に聴き取りながら、合意による解決を目指します。

話し合いの結果、遺言書が無効であると認められ、当事者間で合意が成立すれば、調停調書が作成されます。

遺言無効確認訴訟を提起する

遺言無効確認調停で合意が得られなかった場合には、遺言無効確認訴訟へと進むことになります。この訴訟は、遺言書の有効性を主張する相続人や受遺者、遺言執行者などを被告として起こします。訴訟を提起する裁判所は、被告の住所地、または相続開始時点における被相続人の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所です。

訴額が140万円を超える場合は地方裁判所に、140万円以下であれば簡易裁判所に訴状を提出します。

なお、被告が複数いるときは、そのうちの一人の住所地を管轄する裁判所に申し立てることが可能です。

審理・判決が出される

訴訟が提起された後は、原告と被告の双方が自らの主張をし、それを裏付ける証拠を提出しながら審理が進んでいきます。証拠としては証人尋問のほか、争点に応じて医療記録や筆跡鑑定結果などが用いられることもあります。

裁判所がこれらの主張や証拠を踏まえて判決を言い渡しますが、判決に納得できない場合は、控訴や上告を行うことも可能です。なお、訴訟の途中で当事者双方が歩み寄り、和解で終結するケースもあります。

ただし、遺言書の有効性によって相続できる財産の内容や価値が大きく変わることが多いため、和解に至る例はあまり多くありません

遺産分割協議を行う

訴訟の結果、遺言書が無効と確定した場合には、相続財産をどのように分けるかについて、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議とは、相続人同士が集まり、財産の分け方について話し合う手続きです。もし協議で意見がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

さらに、調停でも合意に至らなかった場合には、遺産分割審判へと進み、最終的に裁判所が分割方法を決定します。

遺言が有効と判断された場合は遺留分侵害額請求を行う

遺言無効確認訴訟の結果、不公平に思える遺言書が有効と判断された場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。遺留分侵害額請求権を行使することで、一定の相続分を取り戻すことが可能です。

遺留分とは、法律上、特定の相続人に保証されている最低限の相続分であり、遺言によっても奪うことはできません。

遺留分侵害額の請求は、まず相続人同士の話し合いから始まり、話がまとまらない場合は「遺留分侵害額請求調停」、さらに調停が不調に終わったときには「遺留分侵害額請求訴訟」へと進みます。いずれかの段階で当事者間の合意が成立すれば、その時点で手続きは終了します。

遺留分侵害額請求とは?手続きの流れや時効などわかりやすく解説

遺言無効確認訴訟にかかる期間

遺言無効確認訴訟では、すでに遺言者が亡くなっているため、証拠となる資料の収集に時間がかかるのが一般的です。さらに、原告・被告の双方が感情的に対立しやすいことから、調停での解決が難しく、訴訟へと発展するケースが多く見られます。

また、訴訟が最高裁判所まで続くことも珍しくなく、最終的な判決が下されるまでに数年かかることもあります

さらに、判決が確定した後も、遺産分割について相続人間で意見がまとまらなければ、遺産分割協議が難航し、こちらでも調停や審判に進む可能性があります。そのため、遺産の分配が完了するまでに長い時間を要するケースが少なくありません。

遺言無効確認訴訟に時効はある?

遺言無効確認訴訟には、法律上の時効は設けられていません。しかし、時間が経つほど証拠の収集が難しくなるため、可能な限り早い段階で訴訟を提起することが重要です。

一方で、遺留分侵害額請求については時効があります。相続が始まったこと及び遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年以内に遺留分を侵害した相手方に請求しなければなりません。

そのため、遺言無効確認訴訟を進めながら、後に遺留分侵害額請求を行う可能性がある場合には、訴訟の提起と同時に、相手方に対して内容証明郵便などで請求の意思を通知しておくことが必要です。こうすることで、時効の成立を防ぐことができます。

遺言無効確認訴訟にかかる費用

遺言無効確認訴訟にかかる費用は、大きく分けて裁判費用弁護士費用の2つがあります。

裁判費用

遺言無効確認訴訟では、訴額に応じた裁判手数料が必要となります。訴額とは、原告が争うことで得られると見込まれる利益の金額を指し、この種の訴訟では、一般的に原告の法定相続分から遺言によって指定された取得分を差し引いた金額が基準になります。具体的な手数料については、裁判所のホームページに掲載されている一覧表をご参照ください。

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file3/315004.pdf

また、手数料とは別に、訴状や書類の送付に必要な郵送料も別途発生します。

弁護士費用

遺言無効確認訴訟を弁護士に依頼する場合は、当然ながら弁護士費用も必要になります。

証拠の収集や裁判手続きには専門的な知識が求められるため、弁護士に依頼するのが現実的です。弁護士費用は、依頼する弁護士や訴訟の複雑さによって異なりますが、通常は「着手金」「成功報酬」「日当」などが発生し、全体で数十万円から数百万円に及ぶことがあります。

遺言無効確認訴訟など相続に関するお悩みはキークレア税理士法人にご相談ください

遺言書に偽造の疑いがある場合は、「遺言無効確認訴訟」を通じて、裁判所に遺言書の無効を認めてもらうことができます。

この訴訟の目的は、遺言書に基づいた遺産分割を阻止することにあります。争点は、遺言者に遺言能力があったかどうかになることが多く、判決後に遺留分侵害額請求へ進むケースも少なくありません。そのため、解決までに数年かかり、費用も数十万から数百万円に及ぶことがあります。

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