ROEとROAの違いとは?各特徴や注意点をわかりやすく解説


目次
企業の経営状態を判断するには、財務指標の存在が欠かせません。
中でも、ROAやROEはいずれも企業の投資収益性・効率性を評価する指標となっており、判断に活用しやすいと言えます。
似たような言葉に混同してしまう方もいらっしゃるかもしれませんので、今回は、2つの特徴や違い、注意点などをわかりやすく解説していきます。
ROEとは
ROE(自己資本利益率)とは、Return On Equityの略で、アールオーイーと読みます。株主資本当期純利益率と呼ばれることもあります。
これは、自己資本(株主が投下した資本)に対してどれだけの利益を上げられているかを示した指標です。つまり、投資に対して効率よく利益を上げられているかを見ることが出来ます。
ROEから分かること
ROEを見ることで、企業が自己資本をいかに有効活用して利益を稼いだのか(経営効率)が分かります。
単純に高ければ高いほど、株主の出資したお金で効率よく利益をあげているという判断ができ、ROEが高いと株価も上がりやすくなっています。
ROEの計算式・目安
計算式は以下のとおりです。
【ROEの計算式】
ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
※当期純利益:企業が1年間に生み出した「最終的な純利益」のこと。損益計算書における税引後の最終利益がこれにあたる。
※自己資本:自分のお金のこと。貸借対照表における「純資産」がこれにあたる。
なお、目安として、8~10%を超えると優良企業と言われています。(日本の上場企業平均で9.4%程度)
ただし、業種別で異なるため、同業種の数値と比較することをおすすめ致します。
ROAとは
ROA(総資産利益率)とは、Return On Assetの略で、アールオーエーと読みます。
会社が所有している総資産を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標です。
ROAから分かること
ROAを見ることで、どれだけの資産を使ってどれだけの利益を生み出したかが分かります。
この指標が高ければ高いほど、その企業は所有する資産を効率よく活用し、利益を稼いだと判断できます。
ROAの計算式・目安
計算式は以下の通りです。
【ROEの計算式】
ROA(%)=当期純利益÷総資産(総資本)×100
※当期純利益:企業が1年間に生み出した「最終的な純利益」のこと。損益計算書における税引後の最終利益がこれにあたる。
※総資産:「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の合計。企業が所有する資産のすべて。貸借対照表における左側の「資産合計」のこと。
※総資本:自己資本だけでなく他人資本(負債)も含めた全ての資産。貸借対照表における右側の「負債・純資産合計」のこと。
なお、目安として、5%を超えると優良企業と言われています。
ただし、こちらも業種別で異なるため、同業種の数値と比較することをおすすめ致します。
【まとめ】ROEとROAの違いとは?
どちらも企業の投資収益性・効率性を評価する財務指標だが、以下3点において違いがあります。
- 利益と比較する資産の範囲が異なる
・ROE:株主から投下された資金や内部留保等の自己資本だけを分母
・ROA:負債等も含めた全ての資産を分母 - 誰にとって重視される財務指標かが異なる
・ROE:投資家や株主が重視する指標(主に上場企業の株主が重視)
・ROA:経営者や利害関係者が重視する指標(主に非上場の中小企業等の経営者や金融機関が重視) - 異業種での比較がしやすいかどうかが異なる
・ROE:異業種間の比較もある程度有効
・ROA:異業種間の比較には適していない(業種によって規模の大小が異なるため)
以上のことから、ROEとROAはその特性を活かしながら、企業に応じて活用方法を変える必要があります。
なお、財務指標の見方については以下をご参照ください。
経営状況の判断にはどちらが重要か?
結論、どちらか一方だけでは経営状態の良し悪しを判断できません。
- ROEが高くROAが低い場合
これは、自己資本に対する利益率が高く、総資本に対する利益率が低いということになります。
つまり、銀行借入等の負債(他人資本)が大きく、事業が悪化している可能性があります。 - ROEが低くROAが高い場合
こちらは、自己資本に対する利益率が低く、総資本に対する利益率が高いということになります。
よって、株主から調達した資金を上手に活用できていない可能性があると言えます。
投資家や経営者、利害関係者は、両方のバランスを見ながら会社の経営状態を判断すべきです。
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ROEとROAを改善する方法
ROE、ROAは基本的にどちらも高ければ高いほど良いと言われています。
では、ROE・ROAを高めるにはどうしたらいいのでしょうか?
ROEを上げるには
ROEは3つの指標に分解できます。これをデュポンシステム(デュポン公式、デュポン分析)と言います。
3つの指標に分解し、それぞれの指標を上げることでROEの改善が図れるということになります。
ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
※売上高純利益率=当期純利益÷売上高→高める方法:経費削減等
※総資産回転率=売上高÷総資産→高める方法:売上拡大、無駄な資産の売却・除却等
※財務レバレッジ=総資産÷自己資本→高める方法:負債増加(単純な借入ではなく、負債の有効活用を行い収益を獲得する)
ROEを高める方法や注意点を解説
ROAを上げるには
ROAは計算式から、単純に以下により改善を図ることが出来ます。
- 利益を増やす
- 総資産を減らす
具体的事例として、以下のようなものがあげられます。
- 利益を増やす事例
・売上をあげる
・販売にかかる費用(原価)を削減する
・経費(販売費及び一般管理費)を削減する - 総資産を減らす事例
・金融機関からの借入金を返済する
・ビジネスモデルを変える(売掛金・在庫・買掛金の関係)
・企業で保有する固定資産を売却する
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キークレアグループでは、税理士法人だけでなく、財務コンサルティング法人と連携して財務分析・経営改善支援を実施しています。
その中で、ROE、ROAを活用し、正確に財務分析を行なった上で経営改善につなげていくこともあります。ROE、ROAの向上のためにどうしたらいいのか、注意点はなにかといったご相談に対して、企業の状況に応じたご支援・ご提案をさせて頂いています。
ROE・ROAを分析する際の注意点
ROE、ROAを分析する上での注意点は以下のとおりです。
ROEにおける注意点
ROEが低くても悪いと言い切れない事例
- 内部留保が大きく自己資本が高い場合
- 一時的理由により当期純利益が下がった場合 等
ROEが高くても良いと言い切れない事例
- 借入を増やして利益をあげた場合(借入が増えたことによるリスクに注視する) 等
その他
- 株価の変動など、本業以外の要因でもROEは増減する
ROAにおける注意点
ROAが低くても悪いと言い切れない事例
- 借金をして先行投資した場合
- 現在開発中で売上に反映していない開発中の技術がある場合 等
ROAが高くても良いと言い切れない事例
- 利益は出ていても負債の比率が高い場合
- 当期純利益は高くても、営業利益(本業での利益)があがっていない場合 等
その他
- 不動産や保有株の増減など、本業以外の要因でもROAは増減する
こちらも押さえておきたい!「ROI」と「ROIC」について
企業の収益性をはかる指標として、他にも「ROI」と「ROIC」があります。
財務分析の際は複数の指標を併用することも大切です。以下に各指標の概要を記載しておきます。これらを活用して財務分析を実行していきましょう。
ROI(Return on Investment)の概要
ROI(投資利益率)とは、投資に対する利益率を表す指標で、特定の事業部門のみでの採算を見ることが出来ます。
ROI(%)=利益÷投資額×100
ROIが高いほど、投資効率が高いといえます。また、規模が異なる事業においても投資効率性を比較することができるメリットがあります。
一方で、長期にわたって利益を創出するような事業の場合や、数値化出来ない価値(ブランド等)を生み出す事業の場合は、数値で反映させることができないため、注意が必要です。
ROIC(ロイック、Return On Invested Capital)の概要
ROIC(投下資本利益率)とは、投下した資本(自己資本+有利子負債)に対する利益率を表した指標です。
ROIC(%)=(営業利益×(1–実効税率))÷投下資本×100
ここでいう利益は、営業利益(本業での利益)から法人税等を除いたものを言います。
この指標により、ROAよりも明確に、調達に対する収益力を見ることが出来ます。
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ROEとROAの特徴や違いを理解した上で、状況に応じて上手く使い分けることが重要です。
その上で、財務分析や経営に関してお困りの際は、税理士への相談をおすすめします。
キークレアグループは、税理士法人、財務コンサルティング法人、クラウド会計法人等様々な専門会社を整えており、お客様の状況・お困りごとに応じて、ご相談・ご支援が可能です。
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