【個人事業主の確定申告】青色申告とは?メリット・やり方を解説


目次
個人事業主が行う確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
中でも青色申告を選択することで、税制上のさまざまな優遇措置を受けることが可能です。
本記事では、青色申告の概要やメリットに加え、具体的な確定申告の手続き方法について詳しく解説します。
青色申告を活用することで節税効果を最大限に活かし、事業の発展につなげましょう。
青色申告とは
青色申告とは、個人事業主が選択できる確定申告の方法の一つで、税制上の多くの優遇措置を受けられる制度です。
個人事業主の申告方法には「白色申告」と「青色申告」の2種類があり、青色申告を選ぶと、最大65万円の特別控除や赤字の繰越控除など、多くのメリットを享受できます。
ただし、青色申告をするためには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は、その年の3月15日までです。
青色申告を利用できる人
青色申告を利用できるのは、次のいずれかの所得がある個人事業主です。
まず「事業所得」がある場合です。事業所得とは、商売やサービス業などで得た収入から経費を差し引いた利益を指します。
次に「不動産所得」がある場合です。不動産所得とは、賃貸物件などの不動産を貸し出すことで得られる収入です。
ただし、不動産の売買で得た所得は「譲渡所得」に該当し、青色申告の対象外となります。
最後に「山林所得」があります。山林所得は、5年以上所有していた山林を売却して得た利益です。
注意点として、事業所得や不動産所得に該当する事業を行っていない場合、青色申告特別控除は受けられません。
これらの所得がある場合は、青色申告を活用して税制優遇を受けることが可能です。
青色申告と白色申告の違い
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
---|---|---|---|
事前申請 | 必要 ※青色申告承認申請書(期限あり) |
必要 ※青色申告承認申請書(期限あり) |
不要 |
記帳方法 | 複式簿記 ※簡易簿記は不可 |
複式簿記 ※簡易簿記も可 |
簡易簿記 ※複式簿記も可 |
決算書の作成 | 青色申告決算書 ※貸借対照表の作成は必須 |
青色申告決算書 ※貸借対照表の作成は問わない |
収支決算書 |
メリット | あり | あり | なし |
白色申告とは、個人事業主が確定申告をする際の一つの方法で、青色申告と異なり事前申請が不要な手続きです。
以前は白色申告の方が手軽でしたが、現在では一定の帳簿の記帳が求められており、青色申告と比較して税制上の優遇措置は少ないのが特徴です。
【青色申告と白色申告の違い】
まず、事前申請の有無です。青色申告を利用するには、あらかじめ税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要がありますが、白色申告にはその必要がありません。
次に、帳簿の記帳方法です。青色申告では「複式簿記」が求められ、白色申告では「簡易簿記」での記帳が認められています。ただし、白色申告でも記帳は義務化されています。
また、決算書の作成にも違いがあります。
青色申告では「青色申告決算書」を作成し、白色申告では「収支決算書」を作成します。
さらに、税制上の優遇措置として、青色申告では最大65万円の特別控除や、赤字の繰越控除などが受けられる点が大きな利点です。
白色申告ではこうした優遇措置は受けられません。
青色申告をする5つのメリット
青色申告には多くのメリットがあり、事業者にとって大きな節税効果をもたらします。
これから、青色申告の特典の中でも特に重要な5つのメリットについて詳しく解説していきます。
①青色申告特別控除が受けられる
金額 | 要件 |
---|---|
65万円の控除 | 複式簿記を採用し、正確な帳簿をつけている場合に適用されます。 また、青色申告決算書を作成し、電子申告または電子帳簿保存制度に対応していることも条件です。 |
55万円の控除 | 複式簿記で帳簿を記帳していても、電子申告や電子帳簿保存をしていない場合に適用されます。 |
10万円の控除 | 簡易簿記での帳簿付けでも受けられます。 複式簿記ほど正確な記帳を必要とせず、簡単に記帳ができるため、小規模な事業者や経理にあまり時間をかけられない方に向いています。 |
青色申告特別控除とは、個人事業主が青色申告をする際に受けられる大きな税制上の特典で、所得から一定額を控除できる制度です。
控除額は10万円、55万円、65万円のいずれかで、帳簿の付け方や申告方法に応じて異なります。
複式簿記と簡易簿記の違い
複式簿記は、資産や負債、収益、費用を二重に記録し、取引をより正確に管理できる帳簿形式です。
一方、簡易簿記は、収入と支出を記録するだけの簡便な方法で、手間は少ないものの、控除額は少なくなります。
②赤字を3年間繰り越しできる
青色申告では、事業が赤字の場合、その赤字を翌年以降に繰り越すことができ、最大3年間控除が可能です。
例えば、1年目に100万円の赤字を出したとします。
翌年の2年目に200万円の黒字を出した場合、1年目の赤字を控除できるため、課税対象となる所得は200万円から100万円を差し引いた100万円になります。
これにより、実際に課税される金額が減少し、税負担を軽減することができます。
さらに、前年度が黒字で今年が赤字の場合、赤字を前年度の黒字から繰り戻して控除することも可能です。
この場合、過去に納めた税金の還付を受けることができ、資金繰りの改善に寄与します。(純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求)
例えば、昨年度に200万円の黒字があった場合、その黒字に対する税金を支払った後、今年度の100万円の赤字を前年度の黒字から差し引くことで、実質的な税負担が軽減されます。
③減価償却の特例が受けられる
通常、10万円以上の物品を購入した場合、その費用は減価償却として毎年一定額を経費に計上する必要があります。
しかし、青色申告を利用すると、取得価格が30万円未満の物品については、取得した年に一括で全額を経費に計上することが可能です。(少額減価償却資産の特例)
この特例により、初年度の経費計上が簡素化され、税負担を軽減できるメリットがあります。
④青色申告専従者給与を必要経費にできる
青色申告では、青色事業専従者給与を必要経費として計上でき、これにより節税効果が期待できます。
青色事業専従者とは、青色申告者と生計を一にする配偶者や家族で、以下の要件を満たす必要があります。
青色事業専従者給与として認められる要件
- 青色申告者と生計を一にしている配偶者や家族であること
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- 6ヵ月を超える期間、事業に専従していること
- 給与を支払う前に「青色事業専従者」としての事前申請を行っていること
これらの要件を満たすことで、支払った給与を経費として計上し、税負担を軽減できます。
⑤貸倒引当金を必要経費にできる
貸倒引当金とは、将来の貸倒れによる損失に備えて、事前に計上する引当金です。
所得税法では、年末時点の売掛金や貸付金残高の5.5%以下を貸倒引当金として経費に計上できます。
金融業の場合はこの割合が3.3%に設定されています。
この引当金を経費に加えることで、所得が減少し、結果的に税負担の軽減が図れるため、節税につながります。
青色申告にデメリットはあるのか?
青色申告のデメリット
- 事前申請が必要: 青色申告を行うには、「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。
- 手間がかかる: 複式簿記を採用する必要があり、記帳や決算書の作成が白色申告に比べて複雑で手間がかかります。
- 帳簿の保存が義務: 複式簿記による帳簿を一定期間保存する義務があります。
これらの手続きや管理が負担に感じる場合もあります。
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青色申告をするための申請手続き
青色申告を選択するためには、「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。提出期限は、青色申告を行う年の3月15日までですが、その年の1月16日以降に新たに開業した場合は、開業日から2か月以内に提出することが求められます。
提出方法は、税務署の窓口に持参するか、郵送、またはe-Taxを利用して行うことができます。事前に申請を済ませておくことで、青色申告特典を享受することができるため、早めの手続きをおすすめします。
青色申告をするには開業届の提出が必須?
青色申告を行うためには、必ずしも開業届を提出する必要はありませんが、実際には提出することが推奨されます。
開業届を提出しなくても特に罰則はありませんが、青色申告承認申請書には開業日の記載が必要です。
そのため、開業届を出していないと記載する情報が不正確になる可能性があります。
また、開業届の控えは、屋号による銀行口座の開設や各種契約を行う際に提示を求められる場合があります。
これにより、開業の証明が必要になる場面が多いため、事業を開始した日から1か月以内に所轄の税務署に提出することが望ましいです。
提出方法は、税務署の窓口に持参、郵送、またはe-Taxを利用して行えます。開業届を提出することで、事業運営がスムーズに進むでしょう。
青色申告で確定申告するやり方と流れ
青色申告で確定申告を行うには、以下の流れに沿って手続きを進める必要があります。
①日々の記帳
まず、日々の取引について、複式簿記の原則に則った正確な記帳が求められます。
複式簿記では、収入や支出を二重に記録し、財務状況を明確に管理します。これにより、正確な損益計算が可能となります。
②決算書類の作成
次に、1年分の帳簿をもとに、「青色申告決算書」と「確定申告書」を作成します。
これらの書類には、収入や経費、貸倒引当金、減価償却などの情報が反映されます。
青色申告の場合、最大65万円の特別控除が受けられるため、正確な計算が重要です。
③税務署へ書類提出
作成した書類は、その年の3月15日までに管轄の税務署へ提出します。
ただし、その年の1月16日以降に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
【提出方法】
提出方法は以下の3つがあります。
- 税務署に直接持参: 書類を直接税務署に持参し、受付を受ける方法です。
- 郵送: 書類を郵送して提出することも可能ですが、提出期限に間に合うように余裕を持って送付する必要があります。
- e-Tax: オンラインで申告ができるe-Taxを利用することで、65万円の特別控除を受けることが可能です。手続きが簡便で、データの誤記入を防げる利点があります。
これらのステップを踏むことで、青色申告での確定申告がスムーズに進むでしょう。
正確な記帳と期限を守った提出が重要です。
青色申告に必要な提出書類

青色申告を行う際に必要な提出書類は以下の通りです。
青色申告に必要な提出書類
- 青色申告決算書: 1年間の収支をまとめた書類です。
- 確定申告書: 所得税の申告を行うための書類。
- 添付資料: 所得控除や税額控除に関連する書類(内容に応じて異なる)。
添付書類の例
- 医療費の領収証
- 社会保険料の控除関係書類
- 生命保険料の控除関係書類
- 地震保険料の控除関係書類
個人事業主の確定申告は税理士にお任せ!キークレアができるサポート
個人事業主の確定申告は複雑なプロセスが多く、特に青色申告の場合は正規の簿記の原則に従った会計帳簿が必要です。
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キークレアグループのサポート内容
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まとめ
キークレアグループは、確定申告に関するすべての手続きをサポートし、経営の健全性を保つためのアドバイスも行います。
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青色申告の帳簿書類の保存について
保存が必要なもの | 保存期間 | |
---|---|---|
帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |
書類 | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 |
青色申告を行う個人事業主は、収入金額や必要経費を記載した帳簿の他に、取引に伴って作成した請求書や領収書などの書類を保存する義務があります。
これにより、税務署からの確認や調査に備えることができます。
具体的には、帳簿の保存期間は7年間(ただし、特例により3年間の場合もあり)、請求書や領収書は取引の内容に応じて適切に保存する必要があります。
これらの書類を整理しておくことで、スムーズな確定申告が可能になります。
よくある質問
所得が赤字(マイナス)でも青色申告をした方がいいですか?
個人事業主は、年間所得が48万円以上であれば確定申告を行う必要がありますが、赤字(マイナス)の場合、確定申告の義務はありません。
それでも青色申告をすることをおすすめします。
なぜなら、青色申告を利用すると、赤字を3年間繰り越しすることができるため、将来の黒字に対してその損失を控除し、税負担を軽減できます。
また、青色申告特別控除の適用を受けることができるため、申告時のメリットが増える可能性もあります。
赤字の状況でも、青色申告を利用することで、今後の事業運営に役立てることができるでしょう。
2つの事業をしている個人事業主の確定申告はどうなりますか?
個人事業主が複数の事業を行っている場合、それらの事業がいずれも事業所得として申告するのであれば、青色申告決算書や確定申告書は合算して作成して問題ありません。
この際、各事業の収入や経費を明確に記載し、合算した結果を基に申告を行います。
複数の事業がある場合でも、申告手続きが簡素化されるため、効率的に確定申告を行うことが可能です。
無申告や期限後申告の場合、青色申告は取り消されてしまいますか?
無申告や期限後申告の場合でも、青色申告が自動的に取り消されることはありません。
青色申告の効力は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出しない限り、継続します。しかし、無申告や期限後申告を行うと、ペナルティが課されるため注意が必要です。
【ペナルティの内容】
- 無申告の場合、無申告加算税が発生します。これは、納付すべき税額の15%から20%が加算されることになります。
- 期限後申告を行った場合には、延滞税が課せられ、税額に対して7.3%から14.6%の利率が適用されます。
さらに、無申告や期限後申告を繰り返すと、行政サービスや社会保険料等の減免を受けられなくなったり、ローン契約を組むことが難しくなる恐れがあります。
このようなペナルティや影響を避けるためにも、期限内に正確な申告を行うことが重要です。
青色申告の特典を最大限に活用しつつ、適切な申告を心がけましょう。
確定申告でお悩みの個人事業主の方は、キークレア税理士法人にご相談下さい。
確定申告でお悩みの個人事業主の皆様、ぜひキークレア税理士法人にご相談ください。
青色申告には、最大65万円の特別控除をはじめとする多くのメリットがあります。
これを活用することで、節税効果を実感できるだけでなく、事業運営においても安心感が得られます。
もし青色申告をはじめとする確定申告に関してお悩みであれば、ぜひ税理士に相談してみてください。
キークレアグループは、決算書の作成から申告までフルサポートを提供しており、クラウド会計の導入支援や、顧問契約による節税対策や資金繰りのアドバイスも行っています。
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