医師におすすめの節税対策とは?勤務医・開業医別の方法と注意点を紹介


目次
医師は収入が高い反面、必然的に税金も多く発生してしまいます。では、どうすれば節税できるのか、気になる方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、国に認められた「税金対策」の方法をご説明いたします。
節税の方法は多岐に渡りますが、節税対策に必要な知識、経験豊富な税理士に相談することによって納税額を抑えることができます。また、医師といっても「開業医」なのか「勤務医」なのかによって違いがあります。開業医の場合は、事業所得者(個人事業主)、勤務医は、給与所得者となります。
それぞれの所得に対してとれる節税対策をご説明します。
医師が節税対策を行うメリット
高額所得者の医師は節税対策をするかしないかで、納税する額が大きく変わります。
さらに節税だけではなく、資産形成の実現も可能になります。
懸命に働いて得た収入を、なるべく手元に残す、もしくは将来の資産に繋げることで10年後20年後の状況が全く変わってきます。
医師は特に節税効果が期待できる
高額所得者である医師だからこそ、それだけ節税するメリットが大きくなります。累進課税によって収入が上がるほど税負担も重くなってしまう医師だからこそ節税をしっかりと考えるべきです。
所得が1,800万円以上になると、所得税40%、住民税10%の課税となり、所得の半分を税金として納めることになります。
その他にも、開業医であれば消費税や事業税などの納税が発生する場合もあります。
さらに所得4,000万円を超えると、最高税率である所得税45%となり、所得のうち55%を税金として納めることとなります。この4,000万円は医師にとって、決して現実味のない数字というわけではなく、特に開業医の医師はクリニックの収益が増えれば到達してしまう所得金額です。
そこで正しい節税方法で所得を1,800万未満に抑えれば、所得税の税率が33%になり、元々の所得が高額だからこそ、税率が下がった分の納税金額も大幅に減らすことができます。
節税だけでなく資産形成も実現できる
資産形成とは、0の状態から将来必要であろうお金を積み上げていくことです。
例えば積み上げた資産で不動産投資をします。そこで家賃収入を得ることでき、キャッシュフローが実現、さらに節税もでき納税額を抑えることができます。
将来、資産形成で医師のリタイア後の生活と老後資金にもなります。
また、お子様が医師になりたい・お子様に将来クリニックを引き継いでもらいたいと考えている医師も多いでしょう。その夢を実現するためには相場より高い教育資金を持っておかなければなりません。
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医師(勤務医)におすすめの節税対策
医師が節税対策を行うのであれば、以下の方法等があります。
- 基礎控除・所得控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 住宅ローン控除
- 特定支出控除
- プライベートカンパニー設立
- 不動産投資
1.所得控除
個人開業医・勤務医問わず、確定申告または年末調整の際に経費として計上できる所得控除があります。
高収入の医師だからこそ、控除の漏れがあるともったいないです。
確定申告は専門家に任せる医師がほとんどだと思いますが、話題に出なかったために後々になって本当は所得控除が取れたものだったのに…!と気づくこともあります。
それを防ぐためにも、どのような控除があるのか知っておくことが大切です。
中には事前に手続きが必要なものもあるので、併せて確認していきましょう。
基礎控除・給与所得控除
基礎控除とは、合計所得金額が2,500万円以下であれば受けられる控除です。
所得が2,400万円を超える場合は控除金額が段階的に設けられています。
合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万超~2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万超~2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | – |
給与所得控除とは、給与等の収入金額から差し引くことのできる経費で、その収入金額に応じて控除金額が決められています。
勤務医の場合は、複数の医療機関で働く方もいらっしゃると思います。各医療機関から受領す源泉徴収票に記載してある“支払金額”を足したものが『給与等の収入金額』となります。
下記は、令和2年分以降の給与等の収入に対する控除金額を記載しています。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除とは、下記の要件を満たす配偶者がいる場合に受けられる所得控除をいいます。
- 民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しない)
- 納税者と生計を一にしていること。
- 配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いをうけていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
また、③の要件を満たさない(配偶者の合計所得が48万円を超える)場合でも、配偶者の所得金額に応じて、配偶者特別控除という所得控除を受けられる場合があります。
扶養控除
扶養控除とは、所得税法上の扶養親族に該当する人がいる場合に受けられる控除をいいます。
扶養親族に該当する要件は下記のとおりです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いをうけていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人を、控除対象扶養親族といいます。
ただし、令和5年分以降の所得税に関して、非居住者(住所地が日本国外である人)は別の要件があるため、該当するかどうかの判定は注意が必要です。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、国民年金・国民健康保険・厚生年金保険などの社会保険料の1年分納めた金額を所得から差し引くことのできるものです。自身の社会保険料に加えて、配偶者やその他親族の負担すべき社会保険料を納めている場合は、その金額も併せて所得控除を受けることができます。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険料、介護保険料、個人年金保険料を支払っている場合に受けることのできる一定の所得控除をいいます。
契約の新旧・1年で支払った保険料の金額により、所得から控除できる金額が異なるため、それぞれの保険料控除証明書をきちんと確認することが大切です。
また、控除できる金額に上限があるため、支払った保険料の全額を所得から差し引くことができない場合もある点に注意が必要です。
地震保険料控除
地震保険料控除とは、所得控除の対象となる地震保険料の支払い保険料のうち、一定の金額を所得から差し引くことのできるものです。
前述の生命保険料控除と同様に、契約内容・支払った保険料の金額により所得控除の金額が異なり、控除金額に上限が設けられています。
医療費控除
医療費控除とは、1年間のうち支払った医療費の合計金額が基準額を超えると受けられる控除をいいます。
支払った医療費から保険金などで補填された金額を引いた金額が、10万円もしくは合計所得の5%のいずれか少ない金額を超えた場合、確定申告により控除を受けることができます。
これまで前述した基礎控除~地震保険料控除は、勤務先の年末調整で控除を受けることができますが、医療費控除と後述の寄付金控除は、確定申告を行わなければ受けることのできない所得控除ですので、該当する人は必ず確定申告を行いましょう。
寄附金控除
寄附金控除は、ふるさと納税が含まれるため、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ふるさと納税のみでなく、認定NPO法人や公益社団法人等に対する寄附金も同じ寄附金控除の一種です。
寄附金控除で控除を受ける金額は、所得控除と税額控除の2種類があり、確定申告の際に有利なほうを選択する必要があるため、具体的な計算及び判定は専門家に任せることをお勧めします。
ただ、寄附金控除にも所得控除ができる上限があるため、寄附を行う方は予め、自身の所得や扶養状況から上限額を知っておくと最適な寄附金額で所得控除を行うことができます。
住宅ローン控除
住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)とは、住宅ローン等を利用して住宅を購入または増改築を行った場合に利用できる所得控除の一種です。住宅ローンの年末残高額に対して一定の割合で所得控除を受けることができます。
住宅ローン控除の適用を受けるための要件があり、住み始めた時期によっても控除を受けることのできる年数及び金額が異なります。
また、住宅ローン控除を受けようとする初年度は確定申告を行う必要があり、次年度からは勤務先の年末調整で控除を受けることが可能になる点も注意が必要です。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に、その支払金額を所得から控除できるものを、小規模企業共済等掛金控除といいます。下記のものが該当します。
- 小規模企業共済掛金
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 心身障害者扶養共済制度
それぞれ掛金として支払った全額がその年の所得から差し引くことができる点は同じですが、加入要件や掛金の上限金額、運用益の取り扱いについては異なりますので、どれを利用していくかどうかは事前に検討を行いましょう。
2.特定支出控除
勤務医は「特定支出控除」という控除が利用できます。
特定支出控除とは、経費の発生が多い職業において支払いの一部を経費として計上できるという制度です。
勤務医は給与所得者ですので、原則として経費は認められません。既に給与所得控除が適用されており、給与所得控除以外に別の経費は計上できないためです。
しかし勤務医は一般的な会社員などと比べ、出費が発生しやすいことから、給与所得控除とは別に特定支出控除を適用されることがあるのです。もちろん勤務医としての業務において必要と思われる支払いに限ります。
具体例を挙げると以下の支払いが該当します。
特定支出控除の対象 | 支出の内容 |
---|---|
通勤費 | 通勤のために必要な交通機関の利用等のための支出 |
転居費 | 転任に伴う転居のための支出 |
研修費 | 職務の遂行に直接必要な知識等を習得するための研修に要する支出 |
資格取得費 | 資格を取得するための支出でその者の職務に直接必要であるもの |
帰宅旅費 | 転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とすることとなった場合等において、勤務する場所と配偶者が居住する場所等との間の旅行に要する支出 |
勤務必要経費 | 職務に関連する図書を購入するための支出・勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出・給与等の支払者の得意先、仕入先などの職務上関係のある方に対する接待等のための支出 |
特定支出控除を受ける場合は、給与支払者の証明書、特定支出に関する明細書、源泉徴収票などの書類を用意しなければなりません。
3.会社(プライベートカンパニー)の設立
プライベートカンパニーとは副業を目的として運営、管理をする個人的な会社のことです。
勤務している方でも設立でき、高額な「副収入」がある方にとっては節税対策に用いられます。
節税対策になる理由としましては、収入に対してかかる税金が違います。
法人は費用になりますが、個人は経費にならないため通常の副収入だとかかった費用は自己負担、さらに副収入で得たすべての所得に税金が課せられます。
しかし会社(プライベートカンパニー)を設立することによって、適用されるのは所得税ではなく税率が一定した法人税になりますので、自己負担だった費用は利益から差し引ける「損金」にすることができ、副収入が多い方はメリットが得られます。
法人にすると経費として認められるものの例としては、下記の表をご覧ください。
- 租税公課
- 国や地方に収める税金(固定資産税、自動車税、印紙税等)
- 地代家賃
- 事業で使用している土地や店舗の賃借料等
- 接待交際費
- 取引先との食事代、贈答等
- 減価償却費
- 事業用の建物や機械装置等で取得価額が10万円以上の資産
- 外注工賃
- 外部に作業等を委託し支払う報酬
- 給料賃金
- 従業員へ支払う給料、賞与等
- 修繕費
- 事務所、車等の原状回復のためにかかった費用
- 荷造運賃
- 事業に関わる商品や製品を発送する運送料等
- 消耗品費
- 取得価額が10万円未満の文房具、パソコン等
- 旅費交通費
- 業務遂行に要するための移動、宿泊、通勤等
- 通信費
- 業務上使用する電話代、インターネット料金、切手代等
- 損害保険料
- 事務所等の損害に対する地震や火災保険、自動車保険料等
- 広告宣伝費
- 販売するために必要な広告、宣伝にかかる費用等
- 福利厚生費
- 従業員の厚生年金、健康保険等
- 新聞図書費
- 新聞や書籍等
- 会議費
- 打ち合わせ、会議にかかった費用
- 支払報酬
- 専門家に業務委託した費用(税理士・弁護士、講演料等)
4.不動産投資
賃貸用のマンションやアパートなどを購入する不動産投資も節税につながります。
不動産投資で家賃収入を得ながら、その過程で発生した費用は経費として計上できます。
まずは建物を購入しなければなりませんが、この建物購入費用は減価償却できるため、減価償却費を数年にわたり、毎年経費として計上できます。
ちなみに減価償却が発生しているうちは家賃収入があっても赤字になることが考えられます。よって不動産投資で発生した赤字は勤務医の給与所得と相殺できるのです。これを損益通算といいます。損益通算によって給与所得から差し引くことができた場合、課税所得が減るために節税になります。
不動産投資のポイントは、節税しつつ資産形成にも取り組めるという点です。さらに物件を所有していると相続税においても節税できる可能性があります。
5.その他にもできる節税対策
副収入で人気なのが、アフィリエイトといわれている成果報酬広告で収入を得るという方法です。
例えばブログをはじめて広告を設置します。その広告をクリックしたり商品が売れたりすると報酬がもらえる仕組みです。
自費で購入した書籍や出席した学会でかかった費用は経費計上でき、リスクは少なく、少しでも収益を上げたい方にはおすすめです。
医師(開業医)におすすめの節税対策
開業医だからこそできる節税対策もあります。主に次のようなものが考えられます。
青色申告・配偶者への所得分散・償却の早い中古資産を購入し経費化する・医療法人化
開業後すぐに取り入れられるものとして、青色申告の届出を行うことで最大65万円の所得控除を受けることが可能です。
その他、配偶者への所得分散や中古資産の購入は、開業後のキャッシュフローにも関係するため、実際に取り入れるべきかは専門家との検討が必要となります。
そして開業後の所得が安定的に高くなれば、医療法人化を検討し、手続きを進めていくことをおすすめします。
どう検討していくのか、タイミングについては下記コラムで説明しておりますので、是非併せてご参照ください。
副業収入がある医師におすすめの節税対策は?
勤務医以外に執筆料や講演料などの副業収入があるならば、会社設立が特におすすめです。副業で収入を得るために要した費用も経費計上できるため、さらに節税が可能になります。
副業収入があれば、小規模企業共済に加入することもおすすめします。小規模企業共済とは、将来退職金代わりに共済金を受け取れるという制度です。この掛金は全額控除されるために節税にもなります。
医師の節税は税理士に相談すべきか?
節税しようと思っても、そもそもどうやって節税すればいいのか分からない、という医師は多いものです。ましてや普段から多忙を極めています。節税の専門家になる余裕などはあるわけがないのです。
そのようなときこそ、税の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。適切な節税方法はもちろん、節税における煩雑な事務手続きの一任などのサポートまで対応してくれます。1年分の確定申告をするだけが税理士の仕事ではありません。
ちなみに節税対策を施すことで、この確定申告はさらに複雑化します。その際もやはり税理士に任せていれば安心です。
税理士に頼ることで正しく手続きを進めることができ、トラブルも未然に防げます。医療系に特化した税理士の場合ですと、医師のライフプランニングまで相談できるのです。
医師が税理士を選ぶ際のポイント
やはり医師であれば医療系に強い税理士を選んでください。
まず税理士選びの際に認識しておいてほしいことがあります。それは、費用を抑えることはサービスを切り捨てることと同じということです。知人の紹介、インターネット、電話、メール等で簡単に税理士と契約することはできますが、その税理士が自分と合うかどうかは分かりません。
煩わしいかもしれませんが直接会って話しをして、受けたいサービス内容や期待をお互いに把握することは本当に大切なプロセスです。
医療に強いわたしたちキークレア税理士法人は、通常の記帳代行や試算表の作成のみならず、ビジョンに対するモニタリングを密に行い、グループ一体(税務・財務・社労士・行政書士・クラウド会計)で連携しながら最適なサポートをお届けしています。
医師が節税対策をするデメリットや注意点はある?
節税に対するメリットについて解説してきましたが、リスクやデメリットがありますので注意は必要です。特定支出控除は費用すべてが経費になるわけでもありませんし、申請書類も多く手間もかかり、プライベートカンパニーを設立する際は、設立費用がかかります。不動産投資には空室リスク、建物の老朽化、金利リスク、資金流動化リスク、不動産価格下落リスクもあり家賃収入が途絶えるとキャッシュフローが悪化します。
信頼できる税理士がいることで、こうしたリスクも早めに対策、防止することで回避することができるのです。
医師の節税対策は専門家である税理士にお任せください。
本業で忙しい医師では、節税対策を考える時間は取れないでしょう。そこで「医療の専門」医師がいるように「税務の専門」税理士がいます。
事前に十分に面談を行い「どのくらい税務をしてもらえるのか」「節税対策を行ってくれるのか」「どのようなサポートがあるのか」をしっかりと確認し、「節税をしたい」と考えたときには、その旨をしっかりと税理士に伝えることが大切です。
最後にキークレア税理士法人は、お客さまの利益状況を勘案したうえで節税の適切な方法や必要性などについて専門家が親身になってサポートさせていただきます。
さらに医師、独立・開業・医療法人化、そして事業承継、すべてのライフステージで医師から頼られる存在として、ビジョン達成へ導きます。