令和7年度の税制改正による個人事業主への影響は?節税対策も解説
目次
令和7年度の税制改正により、個人事業主にも影響が及ぶ大きな税制改正が行われました。
たとえば、所得税の基礎控除の拡大や、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出上限の引き上げなど、節税や将来の資産形成に大きな影響を与える改正が実施されています。
本記事では、今回の改正が個人事業主にとってどのようなメリットをもたらすのかを整理し、具体的な節税対策や注意点までわかりやすく解説していきます。
令和7年度の税制改正による個人事業主への影響は?
令和7年度の税制改正では、以下のような見直しが行われ、個人事業主を含む所得者の税負担に大きな影響があります。
基礎控除やiDeCoの制度改正などをしっかりと理解して、節税や将来設計の見直しに活用していきましょう。
- 基礎控除の引き上げ・上乗せ
- 家内労働者等の必要経費の特例の拡充
- 事業承継税制の要件緩和
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金・年齢引き上げ
以下、それぞれの項目について詳しく見ていきます。
基礎控除の引き上げ・上乗せ
まず注目すべきは、令和7年度の所得税の「基礎控除」が見直された点です。
合計所得金額が 2,350万円以下の方について、基礎控除額がこれまでより10万円増えた58万円に引き上げられました。
また、今回の改正では令和7・8年に限り、低〜中所得層を中心とした所得水準に応じてさらに控除額が増える「上乗せ特例」も設けられています。
たとえば仮に所得が300万円の方であれば、改正前は基礎控除額48万円の控除のみであったところ、改正後であれば基礎控除額は58万円となり、さらに上乗せ特例要件の132万円超~336万円以下に該当するため30万円追加され、合計で88万円の基礎控除を受けることができます。
このように、基礎控除の拡大と上乗せ特例によって控除額が増えることで、課税対象となる所得が減り、これまで以上に税負担を軽くすることが期待できます。
この改正は、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以降の所得税から適用されます。
家内労働者等の必要経費の特例の拡充
今回の税制改正では、家内労働者等に対する必要経費の特例も見直されています。
従来、この特例を使う場合の必要経費の最低保障額は55万円でしたが、改正により65万円に引き上げられています。
この制度は、所得区分が「事業所得」または「雑所得」となっている個人事業主が対象となります。
必要経費の基準が上がることで、実際に経費として認められる金額が増え、その分だけ課税所得が減り、税負担が軽くなることが期待されます。
とくに、自宅兼事務所で作業していたり、材料費や通信費、光熱費などがかさんでいたりする人にとっては、従来よりも多くの経費を認めてもらえるため節税効果が期待できます。
事業承継税制の要件緩和
今回の税制改正では、個人事業主が将来的に事業を子や親族などに引き継ぐ際の税制=事業承継税制の要件見直しが行われ、事業承継がより円滑に行えるよう要件緩和が図られています。
たとえば、改正前は贈与や相続の対象となる事業を承継する際、後継者が “贈与の日まで継続して少なくとも 3年以上事業に従事していること” が要件でしたが、改正後はこの要件が見直され、“贈与の直前において事業に従事していること”で要件を満たすようになります。
これまで3年前から準備が必要であったものが比較的柔軟に制度を利用することができるようになっています。
これにより、個人事業主が廃業ではなく承継という選択をしやすくなり、後継者にとっても税負担や事業維持のハードルが下がることで、事業継承をスムーズに行うことができるようになりました。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金・年齢引き上げ
iDeCoとは、公的年金(国民年金や厚生年金など)にプラスして、自分自身で老後資金を準備できる私的年金制度です。
これまでiDeCoの拠出限度額は個人事業主などの自営業の方は月額68,000円が拠出上限でしたが、改正により75,000円に引き上げられました。
これにより、老後資金の準備予知がより広がり、所得控除や運用益非課税といったiDeCoの税制優遇措置をより大きく享受できるようになりました。
しかし、改正により控除条件が厳格化された箇所もあります。
これまでは、iDeCoの一時金(老齢給付金)を受け取った後、退職金などを別途一時金で受け取る場合に5年あければ退職所得控除を両方でフル活用することができたのですが、改正により10年に延長されることになりました。
つまり、iDeCoの一時金と退職金の一時金を受け取る際、両者間の受取までに10年以上開けなければ、退職所得控除を満額両方で活用することができなくなったので注意が必要です。
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個人事業主が知っておきたい節税対策7選
上記のような税制改正を踏まえたうえで、個人事業主におすすめな節税対策を7つご紹介します。基どれも基本的な節税方法になります。
- 青色申告を行う
- 青色事業専従者へ給与を支払う
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入する
- 小規模企業共済に加入する
- 消費税の計算方式を見直す(原則課税 ⇔ 簡易課税)
- 経費計上を徹底する
- 法人化を検討する
以下、それぞれの内容を解説します。
個人事業主におすすめの節税対策8選①青色申告を行う
青色申告とは、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、正しく申告することで税制上の優遇を受けられる制度です。
青色申告を行うことで、所定の要件を満たせば青色申告特別控除を受けることができます。
控除額は、記帳の仕方・帳票の種類・申告方法などによってそれぞれ65万円・55万円・10万円のいずれかの控除を受けることができます。
この控除によって、課税所得が大きく減少するため、所得税や住民税の軽減につながります。
特に所得が高めの個人事業主にとっては、青色申告による特別控除だけでも大きな節税効果があります。
②青色事業専従者へ給与を支払う
青色申告を利用している事業で、配偶者や子どもなど(15歳以上で一定条件を満たす)が実務に従事している場合、青色事業専従者給与として給与を支払うことが可能です。
この給与は事業の「必要経費」として認められるため、課税所得をさらに減らすことができます。
ただし、青色事業専従者給与として認められるためには、事前に届け出を出すなど一定の手続きと条件があります。
これらの点に注意しつつ、家族が事業に関わっている場合には積極的に活用していきたい節税対策です。
③倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入する
経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、万が一取引先が倒産したときに連鎖倒産や経営難に陥るリスクに備える共済制度で、掛金を支払うことでその全額を「必要経費」にできます。
掛金は月額5,000円〜20万円の範囲で自由設定可能で、払った金額がそのまま経費扱いされるため、所得税の節税効果が期待できます。
しかし、解約手当金を受け取るとその金額は課税対象になったり、掛金総額の上限(累計800万)や、加入して直ぐの解約は解約手当金が少なくなったりなど、デメリットもあるので注意が必要です。
【税理士監修】経営セーフティ共済の節税効果について④小規模企業共済に加入する
小規模企業共済は、退職金のない小規模事業者や個人事業主が、あらかじめ自身の退職金を積み立てておける共済制度です。
掛金は月額1,000円〜7万円まで500円単位で自由設定可能で、支払った掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、所得税・住民税の節税につながります。
適用の対象となるには“小規模企業である要件”として、従業員数など一定の条件を満たす必要があるので注意が必要です。
⑤消費税の計算方式を変更する
個人事業者が消費税を申告・納付する際、原則課税制度と簡易課税制度のどちらかを選べます。
- 原則課税とは、
消費税の納付方法の基本的な形で、売上に対する消費税(預かった消費税)から仕入や経費に対する消費税(支払った消費税)を差し引いた残額を納付する形式です。 - 簡易課税制度とは、
消費税の納付方法のひとつで、売上に対する消費税(預かった消費税)から、業種によりあらかじめ決められた一定の率(みなし仕入れ率)で算出した金額を仕入税額控除とみなして差し引き、残額を納付する形式です。
みなし仕入れ率は業種によってあらかじめ定められており、売上に対する消費税の90%~40%が控除額としてみとめられます。
事業の内容や仕入れ状況、経費構成などによっては、簡易課税を選ぶことで納める消費税額を抑えられる場合があります。
事業売上規模や仕入れの状況によってどちらが有利か異なるため、定期的に見直すことが重要です。
⑥経費計上を徹底する
事業に関する支出(たとえば事務用品、家賃・光熱費、通信費、接待交際費、研修費など)を漏れなく経費として計上することで、課税所得を減らし税負担を軽くすることができます。
また、自宅兼事務所のような場合には、家賃や光熱費を事業とプライベートで按分し、事業部分を経費に組み込むことも可能です。
ただし、10万円以上の固定資産(建物、機械、車両、パソコンなど)を購入した場合は、その年に全額を経費にすることはできず、法定耐用年数に従って減価償却として費用計上をしていく必要があります。
基本的な内容ですが、制度を正しく理解し、適正に経費計上することが重要です。
⑦法人化する
個人事業主のままではなく、状況によっては法人化(会社を設立)を検討することで、税金の種類が所得税(最大税率45%)から法人税(約30%)に変わり、結果として税負担が少なくなるケースがあります。
ただし、法人化には設立費用や決算手続き、社会保険や事務負担など、新たなコストや義務が発生します。
事業規模や、収入の見込み、将来の展望などを踏まえたうえで総合的な判断をすることが必要です。
個人事業主の節税対策はキークレア税理士法人にご相談ください
今回ご紹介したように、令和7年度の税制改正によって、個人事業主にも多くの恩恵がもたらされました。
基礎控除や必要経費の特例、iDeCoの改正などは、所得が低めの人から高めの人まで、幅広く節税対策や将来設計に活かせる内容です。
しかし一方で、控除の適用条件や経費の適正な計上方法、制度利用の手続きなど、複雑な制度の理解や正しい運用が不可欠になります。
もしどの対策が自分に合っているか、どのように帳簿を整理すればよいか、将来的に法人化を検討すべきかなど、お悩みの場合は専門家に相談するのが安心です。
キークレア税理士法人 では、個人事業主の皆さまの事業形態、収入状況、将来の展望に応じた節税プランをご提案いたします。お気軽にご相談ください。