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遺贈とは?相続との違いや手続き、税金などをわかりやすく解説

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

遺贈とは、被相続人が遺言書を通じて、自身の相続財産の一部または全部を法定相続人以外の人に譲渡することを指します
遺贈では、相続人以外の人にも財産を渡すことが可能であり、その対象は個人だけでなく、団体や法人も含まれます。
万が一相続人がいない場合、財産は国庫に帰属する可能性がありますが、遺言書に遺贈の意思を明記しておくことで、このような事態を避けることができます。

このコラムでは、遺贈の種類やそのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

遺贈とは

遺贈とは、被相続人が遺言書を用いて自身の財産を法定相続人以外の人に引き継がせることを指します
遺贈を行う人を「遺贈者」、遺贈を受ける人を「受遺者」と呼びます。遺贈を実現するには、遺言書に財産を譲りたい相手を明記し、その人物や団体に対して遺贈する旨を記載する必要があります。

受遺者は法定相続人に限らず、第三者や法人、団体なども自由に指定することが可能です。
この仕組みによって、被相続人は遺贈を通じて、自分が本当に財産を渡したいと考える相手にその思いを届けることができます。

遺贈・相続・死因贈与の違い

遺贈・相続・死因贈与はいずれも被相続人の死亡によって被相続人が所有していた財産を引き継ぎ、相続税の課税対象になるという点では同じですが、それぞれに違いがあります。

以下で違う点をご説明します。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続で異なる点を表にまとめました。

遺贈 相続
財産を受け取る人 受遺者 相続人
遺言書の必要性 必要 必ずしも必要ではない
相続登記の申請 受遺者と登記義務者の共同申請 相続人単独での申請
相続登記の登録免許税 固定資産税評価額の1000分の20 固定資産税評価額の1000分の4
不動産取得税 かかる場合がある かからない

なお、相続人に対しては、「遺贈」を行うことも「相続」させることも可能です
相続人への遺贈に関しては、2023年4月から相続登記の申請が受遺者単独で行えるようになりました。

さらに、受遺者が相続人であることを証明する書類(相続人の戸籍謄本など)を添付すれば、登録免許税は固定資産税評価額の1000分の4となります。
しかしながら、相続人に対して財産を渡す場合、「相続させる」と記載する方がより適切であると考えられます。

遺贈と死因贈与の違い

遺贈と死因贈与で異なる点を表にまとめました。

遺贈 死因贈与
当事者間の合意 不要 必要
契約書 遺言書が必要 必ずしも必要ではない
放棄 可能 贈与者の死後には放棄できない
不動産登記 被相続人の生前にはできない 贈与者の生前に仮登記することができる

死因贈与には「負担付死因贈与」という形態があります。
負担付死因贈与とは、贈与者が受贈者に財産を死因贈与する代わりに、受贈者に一定の義務や負担を課す契約を指します

例えば、「介護をしてもらうことを条件に、自宅を死因贈与する」といったケースが該当します。
このような場合、契約内容を両者が確実に履行できるよう、事前に公正証書を作成しておくことをお勧めします。

遺贈の種類

遺贈には以下の2種類があります。
それぞれの違いを表にしました。

包括遺贈 特定遺贈
指定方法 遺贈する財産の割合を指定する 遺贈する財産を指定する
遺産分割協議への参加 参加する必要がある 参加する必要はない
遺贈の放棄 家庭裁判所に申述する必要がある 相続人に意思表示をすればよい
マイナス財産 遺言書に指定された割合によって引き継ぐ 遺言書に指定がなければ引き継がない
不動産取得税 非課税 相続人:非課税
相続人以外:課税対象
遺言書とは?種類や効力を持つ内容、作成方法について

包括遺贈

包括遺贈とは、遺言書に遺贈する割合を明記し、受贈者に財産を承継させる方法です。
包括遺贈を行う場合、遺言書には次のように記載します。

  • 遺言者が所有する全財産を○○(住所・生年月日)に遺贈する。
  • 遺言者が所有する全財産のうち、四分の一を○○(住所・生年月日)に遺贈する。

なお、全財産にはプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、受遺者はプラスの財産に加えて、マイナスの財産も指定された割合に応じて引き継ぐことになります。

特定遺贈

特定遺贈とは、遺言書に遺贈する財産を具体的に指定し、その財産を受贈者に引き継がせる遺贈の方法です。
特定遺贈を行う場合、遺言書には次のように記載します。

  • 遺言者が所有する○○市○○町〇丁目〇番〇号の土地を○○(住所・生年月日)に遺贈する。
  • 遺言者が所有する○○銀行△△支店口座番号□□の普通預金を○○(住所・生年月日)に遺贈する。

特定遺贈の場合、受遺者は指定された財産のみを取得するため、遺産分割協議に加わる必要がありません。

また、遺言書に特に記載がない限り、負債などのマイナスの財産を引き継ぐ義務も生じません。
そのため、特定遺贈は包括遺贈に比べて受遺者の負担が少ない方法といえます。

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遺贈のメリットとデメリット

メリット

遺贈では、被相続人の所有していた財産を譲りたい人に譲ることができます
譲り先は個人でも団体でもよいので、孫や生前お世話になった人など法定相続人でない人や、支援している団体などを指定することも可能です。

なお、遺言書によって法人に遺贈をすることを遺贈寄附と言います。
遺贈寄附を受けた団体は原則として相続税は課税されません。
国や地方公共団体、また、公益法人に遺贈寄附をした場合、被相続人の準確定申告で所得税の寄付金控除を適用することができます。

デメリット

相続人が相続できない

遺贈を行うと、相続人が本来取得できるはずだった財産を受遺者が取得することになるため、相続人と受遺者の間で争いが生じる可能性があります

また、遺贈内容が遺留分を侵害している場合には、法定相続人から遺留分侵害額請求を受ける恐れがあります。

相続登記が複雑になる

土地などの不動産を遺贈する場合、相続登記には受遺者と相続人全員の共同申請が必要です。
しかし、相続人が共同申請に応じない場合、相続登記が進められないことがあります。
このような事態を避けるためには、遺言執行者を指定しておくことが重要です。

なお、法改正により令和5年4月1日以降は、受遺者が相続人である場合、その相続人は相続登記の単独申請が可能になりました。
これは相続開始が令和5年4月1日より前であっても適用されます。

相続税が2割加算される

受遺者が相続人でない場合には、相続税が通常の税額から2割加算されます。
受遺者に十分な納税資金がない場合、相続税の負担が重くなり、結果として遺贈を放棄される可能性も考えられます。

遺贈にかかる4つの税金

①相続税

受遺者が被相続人から受け取った財産は、相続税の課税対象となります
特に、遺贈が相続人以外に対して行われた場合、相続税の計算において以下の点に注意が必要です。

  1. 受遺者は相続税の基礎控除の人数に含まれない。
  2. 相続税額に2割の加算が適用される。

受遺者は基礎控除の人数に含めない

相続税では、課税対象となる相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額が、相続税の課税価額となります。
基礎控除額は、「3,000万円+法定相続人数×600万円」という計算式で求められます。
なお、相続財産の総額が基礎控除額を下回る場合、相続税は課税されません。

ただし、受遺者が法定相続人でない場合、基礎控除額の計算における法定相続人数には含まれません。
また、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠を適用することもできません。

相続税の2割加算が発生する

遺贈によって財産を引き継いだ場合、相続税が2割加算されるケースがあります。
この「相続税の2割加算」とは、被相続人との血縁関係が薄い人に対して、通常より2割多く相続税が課される仕組みを指します。

相続税の2割加算が適用されるのは、一親等血族と配偶者以外の人です。

2割加算の理由としては、被相続人との血縁関係が薄い人が財産を取得する可能性は偶然性が高く、血縁関係が濃い人と薄い人が同じ税率で課税されるのは公平ではないと考えられているためです。
また、孫養子は養子縁組によって一親等の血族となりますが、財産が1世代を飛ばして渡されることで相続税が1回分免除されることになるため、加算が適用されています。

②登録免許税

不動産を登記する際には、登録免許税が課されます。
遺贈によって不動産を取得した場合、通常の税率より高い税率が適用されます
ただし、受遺者が相続人である場合には、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を添付することで、0.4%の税率を適用することが可能です。

登録免許税の金額は以下の計算式で求めます。

登録免許税の額=固定資産税評価額×税率

なお、固定資産税評価額は、登記する年度の評価額が用いられます。

登録免許税の税率

相続 0.40%
遺贈 受遺者が相続人 0.40%
受遺者が相続人以外 2%

③不動産取得税

不動産を取得した場合、通常は不動産取得税が課されます。
ただし、相続によって不動産を取得した場合には課税されません
しかし、相続人以外が特定遺贈により不動産を取得した場合には、不動産取得税が課されます。

不動産取得税の計算は以下の式で行います。

不動産取得税の額=固定資産税評価額×4%

なお、2027年3月31日までに取得した土地や住宅用の家屋については、税率が3%に軽減されます。

相続 非課税
遺贈 包括遺贈 非課税
特定遺贈 固定資産税評価額×税率

④みなし譲渡課税

社会に役立てたいといった理由から、法人や団体に不動産を遺贈する内容の遺言書を作成する場合、所得税が課される可能性がある点に注意が必要です
不動産の取得時点よりも遺贈時点で価値が上昇している場合、その値上がり分に対して「みなし譲渡所得税」が課されます。

この譲渡所得税は、特定遺贈の場合は相続人に、包括遺贈の場合は包括受遺者に課されます。

特定遺贈の場合、相続人は遺産を受け取れないだけでなく、譲渡所得税を納める義務を負うことになります。
その結果、譲渡所得税の支払いが困難となり、被相続人の意向を実現できなくなる可能性もあります。

遺贈は放棄することもできる

受遺者は遺贈を放棄することが可能です
包括遺贈と特定遺贈の、どちらの形式で遺贈されたかによって放棄の手続きが異なります。

包括遺贈を放棄する場合、包括遺贈があったことを知った日から3か月以内に、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ放棄の申述を行う必要があります。
一方、特定遺贈の放棄については、相続人や遺言執行者に対して放棄の意思を示すことで手続きが完了します。
それぞれの場合について、以下で詳しく説明いたします。

包括遺贈の放棄手続き

包括受遺者は相続人と同様に扱われるため、包括遺贈を放棄する際には相続放棄と同じ手続きが求められます。
包括遺贈があったことを知った日から3か月以内に、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に放棄の申述を行う必要があります。

また、包括遺贈では一部の財産のみを放棄することは認められません
さらに単純承認とみなされる行為や、3か月の熟慮期間についても相続放棄と同様のルールが適用されます。
申述には、包括遺贈放棄の申述書、遺言者の戸籍謄本、遺言書の写し、申述人の住民票などが必要となります。

特定遺贈の放棄手続き

特定遺贈を放棄する際には、法律上特別な手続きは不要です。
そのため、相続人や遺言執行者に対して放棄の意思を伝えるだけで手続きが完了し、包括遺贈に比べて簡単に放棄することができます。
また、放棄の期限も設けられていないため、いつでも放棄することが可能です。

ただし、後々のトラブルを防ぐために、特定遺贈放棄の意思は内容証明郵便などで正式に伝えることをお勧めします。
また、相続人は特定受遺者に対して期限を指定し、遺贈を受けるか放棄するかを明らかにするよう催告することができます。
もし特定受遺者が指定された期限までに意思表示を行わなかった場合、遺贈を承認したものと見なされます。

遺贈をご検討なら相続に強いキークレア税理士法人にご相談ください。

遺贈を行う際には専門的な知識が必要不可欠です
遺贈は資産の引き継ぎ方法として有効な手段である一方、税金や法律の観点で慎重に対応しなければならない場面も多くあります。
特に、相続税や不動産取得税、登録免許税などの税務処理、さらには遺贈放棄の手続きなど、複雑なプロセスが含まれるため、専門家のサポートが重要です。

キークレア税理士法人は、相続や遺贈に関する豊富な実績を有しており、個別の事情に応じた適切なアドバイスをご提供します
お客様の財産やご意向を踏まえた遺言書の作成や税務計算、最適な相続プランニングのご提案など、トータルでサポートいたします。
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