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相続税の税額控除とは?6つの税額控除をわかりやすく解説

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

今回は相続税の税額控除について、ご説明致します。
相続税法上、相続税の申告をする際の納税額から、直接控除することができる税額控除制度の規定があります。
税額控除制度をしっかり把握しておかなければ、相続税を余分に払いすぎてしまう可能性があります
今回は、税額控除以外の相続税の計算上控除できるものにも触れながら、相続税の税額控除について分かりやすくご説明したいと思います。

相続税の税額控除とは

相続税の税額控除とは、相続財産に対して課される税金を直接控除する制度です。他の控除や特例と併用することが可能です。
計算の流れは次のとおりです。

  1. 遺産総額を求める。
  2. 相続人全員が使える基礎控除を差し引いて、相続財産の課税対象額を算出。
  3. 相続人ごとに法定相続分で相続したとした場合の相続税を算出。
  4. ③の合計額を実際の相続財産割合で按分。
  5. 税額控除を適用して、各人の最終的な相続税を算出。

税額控除をうまく活用することで、相続税の負担を軽減できるため、相続において重要な要素となります。

相続税を自分で計算する方法
税理士がわかりやすく解説

基礎控除とは

税額控除以外に相続税の計算上財産額から控除できるものとして、まず基礎控除についてご説明したいと思います。

基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出されます。この数字は適用要件等がなく、被相続人の財産全体から控除することが可能です
平成26年12月31日までは、5,000万円+1,000万円×法定相続人の数で算出されていましたので、改正によって縮小されました。
基礎控除が縮小され、相続税の申告が必要となる方が増えました。
以下で説明します税額控除制度を適用して、相続税の軽減をすることをおすすめします。

相続税の基礎控除とは?
1人当たりの金額や計算方法などを解説

【一覧】相続税の6つの税額控除

控除の順番 控除の内容
1 贈与税額控除
2 配偶者の税額軽減
3 未成年者控除
4 障害者控除
5 相次相続控除
6 外国税額控除

相続税の税額控除制度は、表のとおり6つあります(相続時精算課税贈与の贈与税額控除も含めて、7つと言われることもあります。ここでは、贈与税額控除に含めてご説明します。)。

表の1から順番に、計算された相続税から控除する必要があります。順番に控除していき、相続税が0円になったら、そこで終了です。マイナスになった分だけ還付してもらえるということはありません。
ただし、相続時精算課税贈与を適用した場合の贈与税額控除の場合は、還付があります

贈与税額控除

贈与税額控除とは、相続税の計算の際に含まれた贈与財産(生前贈与加算された財産、相続時精算課税制度で贈与された財産)について、既に支払済の贈与税を相続税から控除できるという制度です。
同じ財産について贈与税と相続税の両方が課される二重課税を防ぐための制度です。
ただし、控除できるのは贈与税そのものであって、加算税・延滞税などのペナルティを支払っていた場合、これらを控除することはできません

生前贈与の基礎知識
メリットや改正など

控除対象になる人

相続又は遺贈により財産を取得した人で、被相続人が亡くなる前3年以内(2024年以降は7年以内)の生前贈与加算を受け、贈与税を支払っている方、相続時精算課税制度を適用した人で、贈与税を支払っている方が対象となります。
この贈与税額控除が適用となる方は、相続放棄をしていたとしても、みなし相続財産を取得していれば贈与税額控除を受けることができます
みなし相続財産とは、被相続人の死亡をきっかけに受けとる財産のことを言い、生命保険金や死亡退職などが該当します。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続した財産額が、1億6千万円と法定相続分のどちらか大きい金額までであれば、相続税がかからない、という制度です。所得税の配偶者控除と同様に、「配偶者控除」と表現する方もいますが、配偶者の税額軽減という表現が正しいです。

控除対象になる人

控除対象となるのは、被相続人の戸籍上の配偶者です。内縁の妻は対象外です。
また、この制度の利用の条件が、「遺産分割の確定」です。
遺産分割が申告期限までに確定していない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して申告し、3年以内に遺産分割協議を確定させて、申告をし直すことで適用することができます

なお、3年でも遺産分割協議がまとまらない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請」を行うことで、相続税申告をやり直せる期間を延長させることができます。

未成年者控除

相続税の未成年者控除は、未成年の相続人が相続財産を受け取る際に、一定の金額を相続税から控除できる制度です。未成年者が財産を相続する場合、(18歳-現在の年齢)×10万円が相続税から減額されます。
この制度は、未成年者にとって相続税の負担を軽減し、相続財産をスムーズに受け継げるようにするために設けられています。

控除対象になる人

控除の対象となるのは、相続又は遺贈により財産を取得した未成年の相続人です。
財産を全く取得しないのあれば、未成年者控除は適用されません。なお、財産を取得した未成年者の相続税額よりも未成年者控除の額の方が大きく、引ききれない金額がある場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹などのことです。

なお、未成年者控除によって相続税が0円となった場合は、申告不要です。

障害者控除

障害者控除とは、障害者が相続で財産を受け取った場合に適用できる税額控除で、一般障害者の場合、(85歳-年齢)×10万円の税額控除を受けることができます。
特別障害者の場合は、(85歳-年齢)×20万円まで控除を受けられます。

控除対象になる人

控除の対象となるのは、相続又は遺贈により財産を取得した相続人で、障害のある方です。
財産を全く取得しないのあれば、未成年者控除同様、障害者控除を適用することはできません。
控除しきれない金額がある場合、扶養義務者の相続税から控除することができること、障害者控除によって相続税が0円となった場合は申告不要であることも、未成年者控除と同様です。

相次相続控除

相次相続控除とは、前回の相続から今回の相続までの間が10年以内の場合、前回の相続税の一部を今回の相続税額から控除することができる制度です。
なお、相次相続とは、短い間に相次いで相続が発生したことを言います

控除対象になる人

控除の対象となるのは、下記3つの条件を満たす方です。

  1. 被相続人の相続人である
  2. 被相続人が前回の相続(今回の相続の開始前10年以内のもの)で財産を取得している
  3. 被相続人が前回の相続で相続税を支払っていること。

具体的な計算式は、下記です。

A×C/(B-A)〔割合が100/100を超えるときは100/100〕×D/C×(10-E)/10

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
B:今回の被相続人が前の相続の際に取得した純資産価額
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人
の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切り捨て)

相次相続控除は、未成年者控除や障害者控除と異なり、控除しきれない金額がある場合、扶養義務者の相続税から控除することができませんので、注意が必要です。
しかし、相続税が0円となった場合は申告不要であることは同様です。

外国税額控除

外国税額控除とは、国外の財産に、外国の税金と日本の税金が二重で課税されないように調整するために設けられた制度です。
外国で支払った相続税を、日本の相続税から控除することができます。

控除対象になる人

控除の対象となるのは、下記3つの条件を満たす方です。

  1. 相続又は遺贈により財産を取得した
  2. 取得した財産が外国にあること
  3. ②の財産について、現地の相続税を支払っていること

控除額は、下記①と②のいずれか少ない金額です。

  1. 外国で支払った相続税
  2. 日本の相続税×国外財産額/その相続人の相続財産の合計額

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税額控除以外に相続税の計算で控除できるもの

相続税の計算上、税額控除以外にも相続税の計算で控除できるものがあります
基礎控除もそのうちの一つですが、今回は割愛させて頂き、債務控除と葬式費用についてご説明致します。
債務控除は、未払金やローンなどのマイナスの財産を現金や不動産などのプラスの財産から控除できるものです。
葬式費用は、相続で必ず発生し、社会通念上必要な出費と考えられているため、控除が認められるものです。

債務控除

債務控除は、相続人が被相続人の財産を相続する際に、被相続人の財産にかかる債務(未払金やローン)を財産から差し引くことができる制度です。
身近な債務控除の例が、住宅ローンです。たとえば、被相続人が住宅ローンの残高が残っている場合に亡くなった場合、その住宅ローン残高を債務として控除できます。
しかし、団信(団体信用生命保険)に加入している場合、団信により無くなった住宅ローンの残高部分は、債務控除の対象とならないので、注意が必要です。

葬式費用としての控除

相続税の計算上、葬式費用も控除が認められています。家族が亡くなった場合に葬儀を行うことは一般的であり、社会通念上、必要な出費と考えられているためです。
以下に、控除できるものとできないものを表記致しましたので、ご確認ください。

控除できるもの

  • 葬儀の式場利用料など
  • 遺体の運搬費用
  • 祭壇や供花、弔電の費用
  • 埋葬・火葬にかかる費用
  • 葬儀のための食事や接待費用

控除できないもの

  • 遺産分割に関連する費用
  • 葬式後の慰霊施設や墓石にかかる費用
  • 税理士費用や司法書士費用

税額控除についての不明点は税理士にご相談ください

今回は、相続税の税額控除とそれ以外の控除について、ご説明致しました。
税額控除制度だけで6つもあり、計算式も非常に煩雑です。また、要件もそれぞれ異なるため、慎重な検討が必要となります。
もちろん税額控除以外の財産評価などについても様々な検討が必要なため、気づけば申告期限の10カ月間近になっている、ということもよくあります。相続税申告を税理士に依頼することで、このような煩雑な計算や検討がスムーズに行われるため、不安な気持ちも解消されます
キークレア税理士法人では、余裕をもってスケジュールを組みますので、最低でも申告期限の1ヶ月前までに申告ができるように努めております。相続税に関することは是非キークレア税理士法人にお任せください。

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