遺産相続したら確定申告は必要?必要になる5つのケースや流れなどを解説
目次
相続により得た財産の評価額が基礎控除額を上回る場合、原則として相続の事実を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税が義務付けられています。
これに対し、財産の相続は所得とはみなされないため、所得税の確定申告は原則として不要です。しかし、相続に関連して所得税の申告が必要となる例外的なケースも存在します。
本コラムでは、どのような状況で確定申告が必要になるか、またその期限についても解説します。
遺産相続したら確定申告は必要?
結論として、遺産相続の事実のみでは、所得税の確定申告は原則不要です。
これは、相続税と所得税が課税する対象が異なるためです。
相続税
亡くなった方から財産を無償で受け継いだことに対して課される税金。遺産が基礎控除額を超えた場合に申告が必要です。
相続税評価額とは?所得税
給与や事業収入など、個人が新たに得た収益(所得)に課される税金。相続による財産取得は「所得」ではないため、原則として確定申告の対象外となります。
ただし、相続に関連して所得が発生する特定のケースでは、例外的に確定申告が必要になるため注意が必要です。
相続人自身の確定申告
相続で財産を取得したこと自体による確定申告は原則として必要ありません。
しかし、相続後に収益不動産(賃貸アパートや貸駐車場など)から賃料などの収入を得たり、相続した財産(不動産や株式など)を売却して利益が生じたりした場合は、その所得に対し、相続人自身が確定申告を行う必要があります。
亡くなった人の確定申告(準確定申告)
準確定申告とは、亡くなられた方に代わり、相続人が生前(1月1日から死亡日まで)の所得を計算して行う確定申告です。通常の申告と同じく、医療費控除や社会保険料控除などの所得控除を適用できます。
申告期限は、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
相続人の確定申告が必要な5つのケース
相続が発生したことによって所得税の確定申告が必要になるケースは、大きく分けて以下の2つがあります。
- 相続人自身の確定申告が必要なケース
- 被相続人の準確定申告が必要なケース
相続した土地・不動産・株式などを売却した場合
相続した土地、建物、株式などを売却し、売却額が「取得費(購入代金など)」と「譲渡費用(譲渡するためにかかった費用)」の合計額を上回った場合、その利益(譲渡所得)は所得税の課税対象となり、確定申告が必要です。
税負担を軽減できる特例(空き家特例や取得費加算の特例など)が利用できる場合があり、これらの控除や特例を適用して所得がゼロ円になったとしても、申告をしなければ特例は受けられません。
そのため、特例を適用する際は必ず確定申告が必要となります。
死亡保険金や未支給年金を受け取った場合
| 被保険者 | 契約者(保険料負担者) | 受取人 | かかる税金 | 所得税の確定申告 |
|---|---|---|---|---|
| 被相続人 | 被相続人 | 配偶者 | 相続税 | 不要 |
| 配偶者 | 子 | 贈与税 | 不要 | |
| 配偶者 | 配偶者 | 所得税 | 必要 |
死亡保険金に課される税金の種類は、被保険者、保険料の負担者、受取人の三者の関係性で決まります。所得税が課税されるのは、保険料を負担していた方と保険金を受け取る方が同一人物である場合です。
この際、保険金の受取方法に応じ、課税の区分が変わります。一時金で受領した場合は「一時所得」、年金で受領した場合は「雑所得」となります。
いずれも、受け取った金額からその金額に対して払い込んだ保険料を控除して所得を計算します。
一方、故人が受け取る前に亡くなった未支給年金は、受給した相続人個人の「一時所得」として扱われ、所得税の確定申告が必要です。
ただし、年間の一時所得の合計が50万円以下の場合は、特別控除の適用により所得税が発生しないため、確定申告の必要はありません。
賃貸収入のある不動産を相続した場合
賃貸アパート、マンション、または駐車場といった収益不動産を相続し、家賃収入や地代などの収入が発生する場合、これは不動産所得として所得税の課税対象となります。
不動産所得は、年間の収入総額から固定資産税や減価償却費などの必要な経費を差し引いて計算します。
この不動産所得と、給与所得などを除く他の所得の合計が年間20万円を超える場合は、確定申告をする必要があります。
また、年の途中で相続が発生した場合、亡くなった日までの収入は被相続人の所得となるため、相続人が代わって準確定申告が必要になることにも注意が必要です。
相続財産を換価分割した場合
換価分割とは、相続した財産(不動産など)を売却し、その売却代金を相続人で分け合う方法です。
この売却により生じた利益(譲渡所得)は、所得税の課税対象となるため、確定申告が必要です。
手続き上、売却するためには相続登記が必須です。
相続登記の際、相続人全員の共有持分で登記すると売却手続きが複雑になることがあります。
また、特定の相続人代表の名義で登記する際は、後の売却代金の分配時に贈与税を課されないよう、遺産分割協議書に「換価分割のため」と明記しておくことが重要な注意点です。
相続財産を寄附した場合
相続税の寄附金控除は、相続した財産を相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人(赤十字、学校法人、認定NPOなど)へ寄附することで、その財産を相続税の課税対象から除外できる制度です。
この特例が適用されるのは、遺言による指示ではなく、相続人自身の意思と判断で寄附を行った場合に限られます。
また、寄附した財産によっては、所得税の寄附金控除も受けられる可能性があります。この控除を受けるためには確定申告が必須となり、還付の可能性があるため確定申告をすることをおすすめします。
ただし、不動産を寄附した際は、時価で譲渡があったと見なされ、譲渡所得税が課税される可能性があるため注意が必要です。
被相続人の準確定申告が必要なケース
準確定申告が必要なケースの具体例は以下の通りです。
- 事業所得や不動産所得があった場合
- 給与収入が2,000万円を超える場合
- 複数から給与所得があった場合
- 公的年金による収入が400万円を超える場合
- 給与、退職金以外で20万円以上の収入があった場合
- 生前に不動産や株式を売却し、譲渡所得があった場合
準確定申告の期限は4ヶ月
準確定申告は、相続人が被相続人に代わって行う所得税の申告です。
その申告および納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内と定められています。
通常の所得税の確定申告が翌年の2月16日から3月15日であるのに対し、準確定申告の期限は個別に設定される点が大きな違いです。
期限を過ぎると延滞税が課される可能性があるため、申告期限の違いに十分注意が必要です。
準確定申告の手続き
準確定申告は、相続人が故人に代わって行います。相続人が複数いる場合は、原則として相続人全員が連署(共同で署名)して申告書を提出する必要があります。
ただし、他の相続人の氏名を付記することで、各相続人が個別に申告することも可能です。
申告にあたっては、保険料控除証明書など必要な書類を漏れなく準備します。そして、故人が亡くなった時点での納税地を管轄する税務署へ提出し、期限内に納税を完了させなければなりません。
相続人自身の確定申告をする流れ
所得税は1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とその所得に対する所得税を計算して、その年の翌年の2月16日~3月15日までの間に確定申告と納付をします。
相続で確定申告が必要になった場合は、以下の流れで確定申告を行います。
- 必要書類を準備する
- 確定申告書を作成・提出する
①必要書類を準備する
所得税の確定申告に必要な書類は、以下の通りです。
基本の必要書類
- 申告書類:
確定申告書、青色申告決算書、または白色申告収支内訳書 - 本人確認書類:
マイナンバーカードなど - 所得を証明する書類:
源泉徴収票など - 各種控除を証明する書類:
生命保険料控除証明書、医療費の領収書など
不動産売却時に追加で必要な書類
- 不動産関連の証明書:
売却した不動産の所有権移転後の全部事項証明書(登記簿謄本) - 契約・費用関係の書類
- 売買契約書の写し(不動産の取得時と売却時の両方)
- 譲渡費用(仲介手数料など)の領収書の写し
- 取得費用(購入代金など)の領収書の写し
- 特例適用に関する書類:
控除や特例(例:空き家特例など)を適用できることを証明する書類
②確定申告書を作成・提出する
確定申告書は、主に以下の3つの方法で提出できます。
1. 税務署の窓口で提出
- 提出時点の住民票所在地を管轄する税務署窓口へ提出します(開庁時間は原則として平日8:30~17:00です)。
- 職員に無料で相談しながら作成できますが、事前予約が必要です。ただし、譲渡所得については相談対象外の場合があるため注意が必要です。
2. e-Tax(電子申告)または郵送
- 国税庁のウェブサイトにある「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、画面の指示に従って申告書を簡単に作成できます。
- 作成した申告書は、e-Taxでそのまま電子送信するか、または印刷して税務署へ郵送することで提出できます。平日の日中に時間が取れない方におすすめです。
3. 税理士への依頼
- 申告内容が複雑な場合や、作成の時間が取れない場合に推奨されます。
- 専門家である税理士に依頼することで、無申告加算税や過少申告加算税といったペナルティのリスクを回避し、正確な申告と納税を行うことができます。
相続による確定申告はキークレア税理士法人にお任せください
相続が発生した場合、相続税申告が必要なかったとしても相続人や被相続人の所得税の確定申告が必要な場合があります。
所得税の確定申告には期限があり、期限までに申告しなかったり、申告額が少なかったりした場合には、無申告加算税や過少申告加算税などのペナルティが課されてしまいます。
サラリーマンの場合、自分で確定申告をする機会はあまりありません。
相続手続きだけでなく、所得税の申告まで自分で行うことは非常に負担が大きいと言えます。
キークレア税理士法人では、通常の確定申告にも対応しているほか、相続専門のチームが相続人の確定申告や被相続人の準確定申告にも対応しており、安心してお任せいただけます。
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