中小企業の借入金の適正額はいくら?平均相場や計算方法を詳しく解説
目次
中小企業の成長に資金調達は不可欠ですが、借入金の適正額を把握していますか。適正額を知らずに過剰に借り入れると、資金繰りが悪化し倒産に至るケースもあります。
ここでは借入額の目安や限度額の計算方法を解説いたします。自社の財務状況を客観的に把握し、金融機関と交渉する一助としてください。
中小企業の借入金の適正額はいくら?
中小企業の借入金の適正額は、一般的に「月商の3~4倍程度」が健全な範囲の目安です。そして、返済が困難になる危険水域としては「月商の6倍」が一つの基準となります。
しかし、これはあくまで簡易的な指標に過ぎません。実際には、借入の目的や、企業の個別の経営状態によって適正額は大きく異なります。
より正確な適正額を把握するためには、月商だけでなく、BS(貸借対照表)やキャッシュフロー計算書といった決算書を基にした財務分析が不可欠です。
会社の財産状況や、事業活動でどれくらいの現金を獲得できているか(キャッシュフロー)を正しく理解することが、健全な資金繰りの第一歩となります。
キャッシュフロー計算書の見方・読み方と経営分析のポイント借入金の平均相場
日本政策金融公庫の調査では、2022年度の創業融資額の平均は882万円です。ただしこれは平均値で、実際には300万円〜1,000万円と幅があります。
業種や自己資金、事業計画の質で借入額は大きく異なることを理解しておきましょう。
| 年度 | 融資額(平均) |
|---|---|
| 2012 | 855万円 |
| 2013 | 833万円 |
| 2014 | 928万円 |
| 2015 | 866万円 |
| 2016 | 931万円 |
| 2017 | 891万円 |
| 2018 | 859万円 |
| 2019 | 847万円 |
| 2020 | 825万円 |
| 2021 | 803万円 |
| 2022 | 882万円 |
運転資金の目安
運転資金とは、仕入れや人件費など日々の経営に必要なお金です。借入目安は「月商の3ヶ月分」が基本とされます。例えば月商125万円なら375万円が相場です。
ただし、これは一般的な目安であり、入金サイクルが長い卸売業などではより多くの資金が必要です。自社の業種や事業サイクルを考慮して判断しましょう。
設備資金の目安
設備資金とは、事業に必要な機械や不動産などを購入する資金です。高額で返済も長期にわたるため、審査は慎重に行われます。
借入上限額の目安は、①設備導入による年間売上見込みの3分の1、②簡易キャッシュフロー(税引後純利益+減価償却費)の7〜10倍以内です。
この基準を超える借入は返済能力を上回ると判断されかねません。そのため、投資の収益性を示す事業計画が極めて重要です。
追加融資の目安
追加融資は、前回の返済がある程度進み、事業が計画通りに進んでいる段階で検討します。目安は「前回の融資額の3分の1〜2分の1以上」の返済後、かつ「融資から半年以上経過」したタイミングです。
融資直後の申込は、計画性の甘さを疑われかねません。日本政策金融公庫では返済状況に問題がなければ、返済分だけ融資枠が回復するケースが多いです。
日本政策金融公庫の融資の流れ|必要書類や審査に通るためのポイント借入額に影響を与える要素とは?
金融機関が融資額を決定する際は、様々な要素を総合的に評価します。主に以下の点が審査のポイントです。
- 事業計画:事業内容や返済計画に具体性・実現可能性があるか。
- 経営状況:売上や利益は順調か、債務超過ではないかなど決算書の内容。
- 自己資金:創業時にどれだけ用意できているか。(事業への本気度)
- 信用情報:経営者個人のローン返済遅延などの履歴。
- 設立後の年数:事業実績がどれくらいあるか。
借入限度額を知る5つの計算方法
自社の返済能力を超えた借入は、資金繰りを圧迫し経営を危機に陥れます。これを避けるには、客観的な指標で自社の「借入限度額」を把握することが重要です。
金融機関が用いる財務指標を理解し、自社の数値を計算することで借入可能額の目安がわかります。ここでは代表的な5つの計算方法を紹介します。
①借入金月商倍率による計算方法
借入金月商倍率は、借入金総額が月商の何倍あるかを示す指標で、会社の規模に対して借入金が過大になっていないかを簡易的に判断するために使われます。
借入金月商倍率(ヶ月) = 借入金総額 ÷ 平均月商
この倍率が低いほど、返済能力が高いと評価されます。一般的に、3ヶ月以内であれば借入余力は十分にあり、6ヶ月を超えると過剰債務の状態と見なされる傾向があります。
ただし、この指標はあくまでスナップショットです。季節変動の大きい業種では、年平均月商を使うなど実態に合わせた判断が必要です。
また、利益や現金の動き(キャッシュフロー)が考慮されていないため、売上は大きいが利益率が低い場合などに返済能力を見誤る可能性がある点には注意が必要です。
| 業種 | 借入金月商倍率の平均 |
|---|---|
| 卸売業 | 2.9 |
| 食料品 | 2.7 |
| 建設業 | 1.7 |
| サービス業 | 5.3 |
| 情報・通信業 | 2.9 |
| 機械 | 3.8 |
| 不動産業 | 13 |
| 小売業 | 3.9 |
| 倉庫・運輸関連 | 4.3 |
| 電気・ガス業 | 18.4 |
②債務償還年数による計算方法
債務償還年数は、現在の有利子負債(借入金など)を何年で返済できるかを示す指標です。企業の返済能力を評価する際に重視する指標の一つといえます。
債務償還年数(年) = 有利子負債 ÷ キャッシュフロー
債務償還年数(年)=(有利子負債-運転資金)÷ キャッシュフロー
※キャッシュフローは、ここでは簡易的に「経常利益+減価償却費」で計算します。
※金融機関によって計算式が変わります。
この年数が短いほど、返済能力が高いと判断されます。一般的に、10年以内であれば健全な範囲とされ、融資を受けやすい状態です。
金融機関は将来のキャッシュフローを予測して評価するため、説得力のある事業計画書で将来の収益性を示すことが、この年数を有利に見せる鍵となります。
これを基にした借入限度額は、以下の式で算出できます。
借入限度額 = キャッシュフロー × 10年 – 有利子負債
③経常利益による計算方法
経常利益は、企業が本業で得た利益に営業外の収益・費用を加減したもので、企業の平常時における収益力を示す指標です。これを用いて借入限度額を算出する方法もあります。
借入限度額 = 経常利益 × 10倍
これは、債務償還年数を10年とみなし、簡易的に計算する方法で、比較的厳しい評価をする金融機関が用いることがあります。債務償還年数による計算よりもシビアな結果が出やすく、この計算でマイナスになる場合は返済能力不足と見なされる可能性が高いです。
④借入依存度による計算方法
借入依存度とは、総資産のうち借入金がどれくらいの割合かを示す指標です。企業の財務安全性を測るために用いられ、比率が高いほど他人資本に頼った経営と判断されます。
借入依存度(%) = (短期借入金 + 長期借入金) ÷ 総資産 × 100
この比率は低いほど健全と評価されます。業種で平均は異なりますが、一般的に50%を超えると注意、70%を超えると危険水域と見なされます。この比率が高いと、金利上昇時に経営を圧迫するリスクを抱えていることになります。
| 50〜60% | 許容範囲 |
|---|---|
| 60%超え | 要注意 |
| 70%超え | 要警戒 |
⑤インタレスト・カバレッジ・レシオによる計算方法
インタレスト・カバレッジ・レシオは、事業で得た利益が、借入金の支払利息の何倍あるかを示す指標です。企業の金利負担能力、つまり利息を支払う余裕がどれくらいあるかを測るために用いられます。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) = (営業利益 + 受取利息配当金) ÷ 支払利息
この倍率が高いほど、財務的に安全であると評価されます。一般的に2〜3倍あれば問題ないとされ、10倍以上あると非常に優良な状態と判断されます。逆に、この倍率が1倍を下回る場合は、事業で稼いだ利益で利息を賄えていないことを意味し、返済能力に大きな懸念があると見なされます。
金融機関に借入限度額を直接聞くことは可能?
取引のある金融機関に、自社の借入限度額を直接問い合わせることも可能です。計算式より正確な融資可能額がわかります。ただし、必ずしも回答を得られるとは限りません。
特に新規や取引実績が浅い場合は難しいでしょう。まずは本記事の計算式で目安を算出し、事業計画を立ててから相談するのが現実的です。
適正な借入額を決定するためのポイント
自社に適正な借入額を決定するには、以下の点が重要です。
-
複数の財務指標で判断する
一つの指標だけでなく、借入金月商倍率や債務償還年数など多角的に分析します。 -
返済計画をシミュレーションする
借入後の月々の返済額や資金繰りへの影響を具体的に試算します。 -
無理のない融資額を設定する
限度額は上限です。本当に必要で、無理なく返済できる額を借り入れましょう。
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中小企業の融資成功の鍵は、客観的なデータに基づいた説得力のある説明ができるかどうかにかかっています。しかし、自社の財務状況を正確に分析し、金融機関を納得させる事業計画を作成するのは容易ではありません。
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中小企業が融資を受けるときの注意点
借入金の適正額を把握し、実際に融資を申し込む際には注意点があります。
特に「決算書の提出」「過剰借入のリスク」「節税と融資の関係」の3点は、融資の可否や将来の経営に大きく影響するため、事前に理解しておく必要があります。
決算書を提出しなければならない
金融機関から融資を受ける際、必ず決算書の提出を求められます。通常、直近3期分の貸借対照表や損益計算書などが必要です。
金融機関はこれらの書類から、企業の収益性や財務の健全性を厳しくチェックし、返済能力を判断します。決算内容の誤りや粉飾の疑いは審査で著しく不利になります。日頃から正確な会計処理を行いましょう。
法人の決算書の作成方法|基礎知識から作り方のポイントまでわかりやすく解説過剰な借り入れは倒産リスクが高まる
希望額の融資が受けられても、返済能力を超えていればいずれ資金繰りは破綻します。過剰な借り入れは、売上が少し落ち込むだけで倒産リスクを高めます。
自社の適正な借入額を常に意識し、負債をコントロールすることが持続可能な経営の基本です。
節税によって融資限度額が減少することもある
節税は重要ですが、行き過ぎた節税は融資審査に悪影響を及ぼすことがあります。意図的に利益を圧縮し赤字決算として納税額を抑えている場合は注意が必要です。
金融機関は利益額で返済能力を判断するため、赤字企業への融資には消極的です。そこで、節税と調達のバランスを考えた対策が重要です。キークレアグループでは最適な決算対策をご提案します。
節税に強い税理士とは?選ぶ際のポイントなどを徹底解説!【参考】中小企業の借入金利の平均相場は?
借入金の金利は、どこから融資を受けるかによって大きく異なります。日本政策金融公庫は、中小企業や創業者を支援する政府系金融機関であり、民間の銀行に比べて低金利で融資を受けられる傾向があります。金利は金融情勢によって変動しますが、大まかな相場は以下の通りです。
審査が比較的緩やかなノンバンク系のビジネスローンは、利便性が高い反面、金利は高めに設定されているため、利用は慎重に検討する必要があります。
| 資金調達先 | 金利相場 |
|---|---|
| 日本政策金融公庫担保なし | 1.41%~2.00% |
| 日本政策金融公庫担保あり | 0.76%~1.7% |
| 銀行などの金融機関 | 0.9%~3.5% |
| ノンバンク系のビジネスローン | 10%前後 |
中小企業の融資でご不明点があれば、実績豊富なキークレア税理士法人にご相談下さい。
今回は、中小企業の借入金の適正額について解説しました。自社の返済能力を客観的に把握し、無理のない範囲で資金調達を行うことは、事業を安定的に成長させる上で極めて重要です。
しかし、財務指標を読み解き、金融機関を納得させる事業計画を自社だけで作成するのは大きな負担となります。キークレアグループは融資を成功に導いてきた実績豊富な専門家集団です。
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