福利厚生の節税効果|経費と認められる条件と8つの具体例を解説
目次
福利厚生費は給与と比較して、会社・従業員の双方にとって節税効果が大きいです。ただし、福利厚生費として計上するためにはさまざまな制約があります。
本コラムでは福利厚生費として計上できる費用やその条件を紹介していきます。
福利厚生費とは
福利厚生費とは、法人が従業員やその家族のために支払う「給与や賞与以外のサービス」のことをいいます。法人税法上は会社の経費として扱われますが、従業員にとっては給与扱いにならず所得税は非課税です。
給与ではないため、一部の福利厚生費は社会保険料の算定にも影響せず、また消費税の控除の対象となるものもあるため、会社と従業員それぞれにとってメリットが大きいです。
福利厚生費には2種類ある
福利厚生費は大きく分けて2種類あります。
法定福利厚生費 |
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法定外福利厚生費 |
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法定福利厚生費は法律によって企業に負担が義務付けられている費用で、健康保険や年金の費用がこれに該当します。一方、家賃補助や昼食補助など企業が自主的に行う福利厚生費をここでは法定外福利厚生費と呼びます。
福利厚生費が節税に繋がる理由
福利厚生費は法人の節税対策として有効な手段の1つです。
法人にとっては福利厚生費を経費として計上することができ、また従業員にとっては所得税がかかりません。さらに、給与ではないため、一部の福利厚生費は社会保険料の算定にも影響しません。
消費税の観点では、給与は仕入税額控除の対象ではありませんが、福利厚生費の場合は控除の対象となりうるため、さまざまな点で法人と従業員にとって節税効果が大きいです。
経費の節税効果について福利厚生費を経費にするための条件
福利厚生費として考えられる費用は多岐にわたりますが、考え方としてまず次のルールを守ることを意識してみましょう。
福利厚生費として認められなかった場合、給与扱いになるケースがあるため注意が必要です。
- 給与ではないこと
- 現金もしくは換金性の高いものでないこと
- 全従業員が利用できること
- 社会通念上、金額が妥当であること
- 社内規定に明記されていること
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【具体例】節税効果のある福利厚生8選
ここからは福利厚生費の具体例として、社宅・保険・通勤手当・健康診断・食事補助・出張手当・社員旅行・慶弔見舞金についてみていきましょう。福利厚生費として計上するための条件や考え方について深掘りしていきます。
社宅制度
住宅手当は給与に該当するため、福利厚生費に計上できません。一方で、法人が所有している賃貸物件に従業員や役員が住む場合は、家賃を福利厚生費として計上できます。
ただしこれには条件があり、使用料として従業員から1カ月あたりの賃貸料相当額の50%以上を徴収する必要があります。無償で貸与している場合は賃貸料相当額が給与として扱われるため気をつけましょう。
法人保険
法人が契約者となり、役員や従業員を被保険者として保険料を支払った場合には、その一部を福利厚生費として計上が可能です。解約返戻金がある定期型の法人保険の場合、解約時に返戻金を受け取ることができます。
ただし、保険の種類や内容によっては、掛金を資産計上する必要があるため、事前に詳細の確認が必要です。
法人保険は節税対策にならない?仕組みから税理士が徹底解説通勤手当
通勤手当は原則所得税が非課税ですが、無制限に支給が認められているわけではなく、非課税となる金額には上限が決められています。
非課税枠の上限は、電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合は一律15万円、マイカー通勤の場合は通勤距離により異なります。
上限を超えた場合は、超えた部分が給与所得として課税の対象となり、支給を受ける従業員の税負担が増える場合があります。
1ヶ月あたりの上限額(非課税) | |
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電車・バス(公共交通機関) | 15万円まで |
片道通勤距離 | 1ヶ月あたりの上限額 | |
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マイカー通勤 | 2㎞未満 | 全額課税 |
2㎞以上10㎞未満 | 4,200円 | |
10㎞以上15㎞未満 | 7,100円 | |
15㎞以上25㎞未満 | 12,900円 | |
25㎞以上35㎞未満 | 18,700円 | |
35㎞以上45㎞未満 | 24,400円 | |
45㎞以上55㎞未満 | 28,000円 | |
55㎞以上 | 31,600円 |
健康診断
一般的な健康診断は法律により実施が義務付けられており、健康診断の費用は福利厚生費として計上できます。人間ドックの費用も認められていますが、高額なオプションなどは経費として認められません。
福利厚生費にするための必須条件は、従業員全員が受診すること、法人名義で支払うことです。
会社が現金で健康診断費用を従業員に支給し、社員が診療機関に支払う場合は給与扱いとなるため、会社が直接診療機関に支払うようにしましょう。
食事補助
社食やお弁当の提供などは、1人あたり月3,500円以下で、従業員がその食事代の半分以上を負担している場合には給与として課税されません。また、深夜勤務者に対しては、食事の提供ではなく現金で1食当たり300円までの支給が認められています。
福利厚生費として認められる条件
- 従業員が食事代の半分以上を負担していること
- 次の金額が1月あたり3,500円以下であること
食事の金額 – 従業員の負担する金額
出張手当
通常の勤務場所を離れて出張する場合に、旅費や交通費などの通常必要な費用のために従業員に支給する手当を出張手当といいます。出張手当は給与扱いにはならず、所得税は非課税です。
ただし、必要な部分を超えて支給した場合は課税の対象となるので、税務調査などで指摘を受けないためにも、出張旅費規程を作成して、適切な金額を支給するようにしましょう。
社員旅行・研修旅行
社員旅行や研修旅行は、次の条件を満たせば給与扱いにはなりません。
社員旅行として認められる条件
- 社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるもの
- 旅行の期間が4泊5日以内(海外旅行の場合は、外国の滞在日数が4泊5日以内)
- 職場の50%以上の人が参加
研修旅行として認められる条件
- 会社の業務を行うために直接必要であること
慶弔見舞金
結婚祝い金や葬祭料、香典、見舞金などの慶弔見舞金は、一般常識から考えて妥当と認められる範囲ではあれば給与として課税されません。また、例外的に現金での支給も認められております。
上限は明確には決まっていませんが、あくまで社会通念上相当と認められる範囲での支給に留めておきましょう。
福利厚生費など、節税対策は税理士への相談がおすすめ
福利厚生費を活用することは、会社と社員両方にとって節税効果を発揮します。ただし、税務調査で計上が認められなかった場合は、給与として課税されるリスクが生じます。
福利厚生費として計上できるかどうかの判断は個々の状況によっても異なるため、税理士などの専門家にチェックを受け、効果的に節税対策を行う必要があります。
もちろん福利厚生費以外にも自社にあった節税対策についてアドバイスをもらうことが可能なため、一度税理士へ相談することをおすすめします。
法人の節税対策5選!計画的な節税はできていますか?福利厚生費を利用した節税の注意点
福利厚生費として節税できたとしても、そのためには出費が伴います。いくら税金が安くなったとしても、支出が増えたために手元資金が枯渇してしまっては本末転倒です。
福利厚生費は毎年一定の支出を要するので、業績が悪い時期があることも想定して計上しましょう。
また、福利厚生費の要件に該当しないものは、税務調査で追徴課税を負うリスクがあることも頭に入れておく必要があります。本コラムでも見た通り、福利厚生費にはそれぞれ認められるための要件があるため、慎重に検討する必要があります。
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