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農地に相続税はかかる?評価方法や納税猶予、手続きなど

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

相続した土地に田んぼや畑などの農地が含まれている場合、それらも相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。
農地を相続する際は、宅地や山林を相続する場合とは異なり、特別な手続きが必要です。
このコラムでは、農地の評価方法や相続時の具体的な手続きについて詳しく解説します。

農地には相続税が課税される

田んぼや畑などの農地も、他の相続財産と同様に相続税の課税対象となります。
その土地が「農地」に該当するかどうかは、実際の利用状況によって判断されます
具体的には、現在耕作されているか、または現在耕作されていなくても耕作可能な状態であれば、農地とみなされます。

ここで注意すべき点は、全部事項証明書(登記簿謄本)に記載されている「地目」ではなく、現況で判断されることです
農地の種類に応じた評価を行い、他の相続財産と合算して遺産総額を算出します。

評価方法は農地の種類ごとに異なる

農地は以下のように区分されており、それぞれ異なる評価方法が適用されます。
相続する農地がどの区分に該当するかは、国税庁の「評価倍率表」で確認できます

評価倍率表の「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」欄にある「田」または「畑」の記載内容を確認することで、農地の種類が以下のように分類されます。

評価倍率表の記載内容 農地区分 農地の内容
純農地(甲種農地、第1種農地) 農用地区内または市街化調整区域内にあり、生産性が高い農地。
中間農地(第2種農地) 鉄道の駅から500mの距離にあるなど、市街化が見込まれる区域内にある農地。
周比準 市街地周辺農地(第3種農地) 鉄道の駅から300mの距離にあるなど、市街化傾向が著しい区域にある農地。
比準または市比準 市街地農地 市街化区域内にある農地。

評価倍率表は以下の例のように、国税庁のHPで公表されています。

評価倍率表

また生産緑地に指定されている農地もあります。
こちらは、固定資産税の課税明細書やその農地の所在する市区町村の都市計画図などで確認することができます。

国税庁「路線価図・評価倍率表」

【区分別】農地の相続税評価額の計算方法

農地は、1.1でご説明した農地の区分によって相続税評価額の計算方法が異なります。
以下でそれぞれを詳しくご説明いたします。

純農地・中間農地

純農地と中間農地の相続税評価額は「倍率方式」で計算します。計算式は以下の通りです。

相続税評価額=固定資産税評価額×固定資産税評価額に乗ずる倍率等

「固定資産税評価額」は、固定資産税の課税明細書などに記載されています。
この課税明細書は、土地が所在する市区町村役場から毎年4月頃に自宅へ送付されます。
もし手元にない場合は、市区町村役場で固定資産税評価証明書を請求して確認します。

また、「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」は、国税庁が公表している評価倍率表に記載されており、「田」と「畑」で異なる倍率が設定されています
そのため、該当する地目の倍率を使用して計算する必要があります。

市街地周辺農地

市街地周辺農地は、その農地が市街地農地であるとして評価した場合の評価額の80%が相続税評価額となります。
市街地周辺農地の相続税評価額の計算式は以下の通りです。

相続税評価額=その農地が市街地農地であるとして評価した場合の評価額×80%

市街地農地の評価方法については次の項目でご説明いたします。

市街地農地

市街地農地に該当する農地は、大きく分けて「宅地比準方式」と「倍率方式」の2つの評価方法があります。
宅地比準方式は、その農地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかで評価方法が異なります

評価しようとする農地が路線価地域と倍率地域のどちらにあるかは、国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)を確認するとわかります。
これらの具体的な計算方法を次の項目でご説明いたします。

①宅地比準方式

宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額から、宅地に転用するために必要な造成費を差し引き、その土地の地積をかけて土地の評価をする方式です。

宅地比準方式は、その農地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかで評価方法が異なります。
それぞれご説明いたします。

路線価地域にある場合

評価する農地が路線価地域にある場合は、農地が宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額を次の式で求めます。

農地が宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額=路線価×画地補正率

路線価は道路ごとに設定された、その道路に面する標準的な土地の1㎡当たりの価額を指します。
「標準的な土地」とは形が整った土地のことを指し、形がいびつだったり、細長かったりする場合、その土地が所在する地区区分に応じた画地補正率をかけて減額することができます。
路線価や画地補正率は国税庁のHPで確認することができます。

倍率地域にある場合

評価する農地が倍率地域にある場合は、農地が宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額を次の式で求めます。

農地が宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額=近傍宅地の固定資産税評価額×宅地の評価倍率×画地補正率

近傍宅地の固定資産税評価額は、全国地価マップまたは、その農地が所在する市区町村役場に問い合わせることで確認できます。
また、宅地の評価倍率や画地補正率は国税庁のHPで確認することができます。倍率地域に所在する土地は地区区分が明示されていないため、普通住宅地区の画地調整率を用いて計算します

宅地比準方式での市街地農地の評価

市街地農地の評価額は、次の式で求めます。

市街地農地の評価額=(宅地であるとした場合の土地1㎡あたりの評価額-宅地転用に必要な1㎡当たりの造成費)×地積

宅地転用に必要な1㎡当たりの造成費は都道府県ごとに設定されており、国税庁のHPで確認することができます。

②倍率方式

市街地農地は2.3.1.3でご説明した通り、宅地であるとした場合の評価額から宅地転用に必要な造成費を差し引いて相続税評価額とします。
この際、宅地であるとした場合の評価額が造成費を下回るなど、経済的観点から宅地転用が見込めない場合などは、市街地農地ではなく純農地であるとして相続税評価額を計算します

この時、固定資産税評価額に乗じる倍率は、その農地の近隣に所在する純農地の倍率を用います。
計算式は次の通りです。

相続税評価額=固定資産税評価額×その農地の近隣に所在する純農地の倍率

生産緑地

生産緑地は市街化区域内にある都市農地であり、都市環境の保全に貢献する役割を担っています。生産緑地は、農地の所有者が申請し、市区町村が指定します。
生産緑地の所有者には、農地として適切に管理する義務がある一方で、固定資産税の軽減措置などの優遇が受けられます。

生産緑地は、30年間農地として維持する義務がありますが、この期間が経過すると、市区町村に対して買取りの申し出を行うことが可能になります。
そのため、相続開始から買取りの申し出ができる日までの期間に応じて、農地としての評価額から下記の表の通り、一定の減額が適用されます。 相続税評価額の計算式は以下の通りです。

生産緑地の相続税評価額=その土地が生産緑地でないものとして評価した価額×(1-減額割合)

減額割合 相続開始時から買取り申し出ができることになるまでの期間
5% 相続開始時において市町村長に対し買取りの申出が行われていた、または買取りの申出をすることができる生産緑地
10% 5年以下
15% 5年を超え10年以下
20% 10年を超え15年以下
25% 15年を超え20年以下
30% 20年を超え25年以下
35% 25年を超え30年以下

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農地の相続税の納税猶予とは?

農地の相続税に関する納税猶予の特例とは、農業を営んでいた被相続人から農地を相続し、引き続き農業を続ける場合に、一定の条件を満たせば、農地に係る相続税の一部の納税が猶予される制度です

この特例は、農業に従事する人々や日本の農業を守るために設けられています。
例えば、相続時に高額な相続税が課されると、その支払いのために農地を売却せざるを得なくなり、結果として農業を継続できなくなる可能性があります。
こうした事態を防ぐために、納税の負担を軽減する措置として設けられた制度です。

納税猶予の適用に必要な書類

 

農地を相続した場合に納税猶予を受けるためには、相続税申告の際に以下書類を合わせて提出する必要があります。

【農業委員会で取得する書類】

  • 相続税の納税猶予に関する適格者証明書
  • 特例適用農地の明細書

また、納税猶予適用後は3年ごとに以下の書類を提出する必要があります。

  • 引き続き農業経営を行っている旨の証明書

【市区町村役場で取得する書類】

  • 納税猶予の特例適用の農地等該当証明書

【税務署で取得する書類】

  • 担保提供書

【法務局で取得する書類】

  • 抵当権設定登記申請書

対象となる農地

納税猶予の対象となる農地は以下の農地です。

  • 相続人が農業の用に供していた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  • 被相続人が特定貸付等を行っていた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  • 被相続人が営農困難時貸付を行っていた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  • 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で、贈与税の納税猶予の特例等が適用されていたもの
  • 相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地等

なお、家庭菜園や、工場敷地等で一時的に耕作している土地、鑑賞目的の盆栽を植えている土地などは対象にはなりません。

遺産分割協議とは?進め方や注意点について 遺贈とは?相続との違いや手続き、税金などをわかりやすく解説

被相続人の適用要件

納税猶予の被相続人の適用要件は次のいずれかに該当することです。

  • 死亡の日まで農業を営んでいた人
  • 生前に農地を一括贈与し、受贈者が贈与税の納税猶予を受けていた場合
  • 死亡の日まで特定貸付け、営農困難時貸付け等を行っていた人

相続人の適用要件

相続人の適用要件は次のいずれかに該当することです。

  • 相続税の申告期限までに農業を引き継ぎ、その後も農業経営をすると認められる人
  • 被相続人の生前に農地を一括贈与され、贈与税の納税猶予を受けていた人
  • 相続税の申告期限までに特定貸付などを行った人

納税猶予の打ち切り

一定の場合には、納税猶予が打ち切られ、猶予された相続税に利子税を合わせて納付する必要があります。
納税猶予が全部打ち切りになる場合と一部打ち切りになる場合はそれぞれ以下の通りです。

【全額打ち切り】

  • 適用を受けた農地の20%超の面積を譲渡、贈与、転用、耕作放棄等した場合
  • 適用を受けた相続人が農業をやめた場合
  • 納税猶予適用継続届を提出しなかった場合 など

【一部打ち切り】

  • 適用を受けた農地を収用交換等によって譲渡した場合
  • 適用を受けた農地の20%以下の面積を譲渡、贈与、転用、耕作放棄等した場合
  • 適用を受けた生産緑地地区内の農地等について買取申出をした場合 など

納税猶予の全額免除

次の要件を満たせば、猶予された相続税は全額免除されます。

  • 納税猶予を受けた相続人が一生涯農業に従事し、死亡した場合。
    ただし、三大都市圏の特定市以外の区域内に所在する市街化区域内農地等(生産緑地地区内の農地等を除く)について納税猶予を受けた場合は、20年間農業に従事した場合。
  • 納税猶予を受けた農地を、農業後継者に生前一括贈与した場合。
【相続税対策】生前贈与の基礎知識|メリットや改正など

農地を相続した場合の手続き

農地を含む土地や建物を相続した場合には、法務局で相続登記をする必要があります。
相続登記には登録免許税がかかります。
相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、正当な理由がなく取得から3年以内に相続登記をしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります

また、農地を相続した場合には農業委員会への届出をする必要があります
届出は相続開始を知ってから10か月以内に行う必要があり、届出をしなかった場合には10万円以下の過料が科される可能性があります

相続登記とは?2024年の義務化や登記の方法について

農地を売却する手続き

農地を売買する際には、農地法に基づき、農業委員会または都道府県知事の許可を得る必要があります
これは、日本の農地や農業を適切に保護するための制度です。

農地の売却には、大きく分けて2種類の許可があります。
1つは、農地をそのままの状態で売却する「第3条許可」、もう1つは、農地を農地以外の用途に転用して売却する「第5条許可」です。

第3条許可

「第3条許可」は農地を農地として売却する際に必要な許可です。
第3条許可は原則として農業委員会が許可します。
農地の売却先は、農業委員会が許可をした農家もしくは農業従事者に限られます。

第5条許可

「第5条許可」は農地を宅地などに転用して売却する際に必要な許可です。
第5条許可は原則として農業委員会を経由して都道府県知事が許可します。
農地転用は農地区分に応じて転用が原則不許可な農地と、原則許可である農地に分けられます。

転用が許可されれば売却先を指定されることはありません。
農地区分ごとの転用許可、不許可は次の通りです。

  • 純農地(甲種農地、第1種農地)…原則として転用不許可
  • 中間農地(第2種農地)…第3種農地に立地困難な場合等に許可
  • 市街地周辺農地(第3種農地)…原則として許可
  • 市街地農地…農業委員会への届出だけで転用できる

農地の相続税評価や納税猶予については、キークレア税理士法人にご相談下さい。

農地の相続税評価は、農地区分ごとに細かく規定されており、非常に複雑な評価が必要な財産の一つです
さらに、農地の納税猶予を適用するには厳格な条件があり、適用後に要件を満たさなくなった場合には、猶予されていた相続税に加え、利子税も支払う必要があります。
そのため、納税猶予を利用するかどうかは慎重に検討することが重要です。

また、農地は売却が難しいため、農業を継がない人が相続すると、管理や活用が困難になり、結果として負担となる可能性もあります。
キークレア税理士法人には、相続専門の税理士が在籍しており、農地を含む相続税申告の豊富な実績があります。
さらに、グループ内の不動産会社と連携し、相続した農地の売却をサポートすることも可能です。

農地の相続税評価や納税猶予については、キークレア税理士法人にご相談ください。

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