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年末調整の過不足とは?発生する原因や対処法などを税理士が解説

代表税理士 三嶋 泰代
監修代表税理士三嶋 泰代

12月が近づき、1年間の給与収入が確定するこの時期、避けて通れないのが年末調整です。毎月の給与から概算で天引きされていた所得税を、正しい年間の税額へと精算する必要があります。

その結果、税額が不足していれば追加で納め(徴収)、納め過ぎていればお金が戻る(還付)という「過不足」の調整が行われます。

本記事では、この過不足が発生する理由や具体的な対処法について、噛み砕いて解説していきます。

年末調整の過不足とは?

年末調整の過不足とは、従業員が1年間に納めるべき「正しい年税額」と、企業が毎月の給与からあらかじめ天引きした「源泉徴収税額」を精算した際に発生する差額のことです。

精算の結果、本来の税額が源泉徴収済みの合計額より少ない場合(還付)もあれば、多い場合(不足)もあります。

もし、源泉徴収されていた税額が本来よりも不足していた場合には、給与明細の還付金項目にマイナス表記がされ、その月の支給額から差し引かれます。

「年末調整で手取りが減った」と感じる理由は、この不足分の精算によるものです。

過不足税額の計算方法

過不足税額の計算は、以下の3つのステップで行われます。

  • ステップ1
    源泉徴収税額の合計を出す
    まずは、1年間に支払われた給与や賞与から、すでに天引きされている税金の合計額を算出します。
  • ステップ2
    正しい年税額(年調年税額)を計算する
    次に、1年間の給与総額から基礎控除や各種保険料控除などを差し引き、本来納めるべき「正しい税額」を計算します。
  • ステップ3
    2つの金額を比較して精算する
    最後に、ステップ1とステップ2の金額を比べます。天引きの合計額の方が多い場合は、納めすぎた差額が「還付」されます。反対に、天引きの合計額の方が少ない場合は、足りない差額が追加で「徴収」されます。
    【例】天引き合計が120,000円(ステップ1)で、正しい年税額が100,000円(ステップ2)なら、差額の20,000円が還付(ステップ3)されます。

年末調整で過不足が発生するのはなぜ?

毎月の給与から天引きされる税金は、実は「仮の金額」に過ぎません。1年間の総収入の変動や、年の途中で扶養家族の状況が変わることなどで、正確な税額との間にはどうしてもズレが生じます。

ここからは過不足が発生する主な5つの理由を具体的に見ていきましょう。

毎月の給与に大きな変動があった

毎月の給与から天引きされる所得税は、国税庁が定める給与所得の源泉徴収税額表を基に計算されます。実はこの表による天引き額は、「この従業員は1年間ずっと同じ金額の給料をもらい続ける」と仮定して推算されたものです。

そのため、年の途中で昇給・降格して基本給が変わったり、繁忙期の残業代で月々の支給額が大きく変動したりすると、この前提が崩れます。

例えば、ある月だけ残業代が多くて給与が跳ね上がると、その月は「高い年収の人」という高い税率で天引きされてしまいます。

このように、毎月の給与額に大きな増減があると、月々の仮の計算結果と、1年間の実際の総収入に対する正しい税額にズレが生じ、年末調整で過不足が発生する原因となります。

賞与の源泉徴収額と年間の所得税額に差が生じた

賞与(ボーナス)も給与所得の一部であるため、毎月の給料と同じように支給時に所得税が天引き(源泉徴収)されます。ただし、賞与の税金には毎月の給与とは異なる賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表という独自のルールが使われます。

この計算では、主に「前月の給与額」を基準にして概算の税率を決定します。そのため、前月の給与が少なかったにもかかわらず、賞与が非常に高額だった場合などには、実際の賞与額に対して天引きされる税金が低く見積もられてしまいます。

結果として、年末調整で1年間の総収入(給与と賞与の合計)をまとめて正しい税率で計算し直した際、賞与から天引きしていた仮の税金との間にズレが生じ、過不足が発生する要因となるのです。

年の途中で扶養親族の人数が変更になった

毎月の給与から天引きされる所得税は、その時点での扶養親族の人数を考慮して計算されています。基本的には、扶養する家族が多いほど月々の天引き額は少なくなります。

もし年の途中で結婚して配偶者を扶養に入れたり、子どもが生まれたりした場合、その変更が月々の税金に反映されるのは「会社へ変更を申告した後の給与」からになります。

しかし、年末調整における扶養控除の判定は、年の途中経過に関係なく「その年の12月31日時点の状況」で行われます。

つまり、年末時点で扶養家族が増えていれば、1年間の総収入に対して「1年間ずっと扶養していた」という前提で正しい税額を再計算します。

これにより、年の前半に高く天引きされていた税金との間にズレが生じ、多くの場合で還付(プラス)が発生するのです。反対に、子どもが春に就職して年の途中で扶養から外れた場合などは、控除額が減るため徴収(マイナス)が発生する原因となります。

障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の適用状況が変わった

毎月の給与から天引きされる税金は、扶養家族の有無だけでなく、給与を受け取る従業員ご本人が「障害者」「寡婦(かふ)」「ひとり親」「勤労学生」のいずれかに当てはまるかどうかも考慮して計算されます。

これらの控除対象に該当する場合、源泉徴収税額表に基づいて毎月の天引き額が安く(軽減)なる仕組みになっています。

もし、年の途中で離婚や死別によって「ひとり親」になったり、ご自身やご家族が障害者手帳の交付を受けたりして、適用状況が変わったとします。この場合、年末調整では「その年の12月31日時点」の状況を基準にして、1年間の正しい税額をまとめて再計算します。

すると、年の前半(適用される前)に高く天引きされていた仮の税金と、年末に計算し直した正しい税額との間にズレが生じます。この差額が、年末調整における過不足(多くの場合が還付)として精算されるのです。

年末調整で計算ミスが発生した

ここまで解説してきたような「収入や生活状況の変化」以外にも、単純な「計算ミス」によって過不足が生じるケースがあります。

年末調整は、従業員が提出した申告書をもとに会社側が計算を行いますが、手作業による入力や確認が含まれる場合、どうしても人的ミスが起こり得ます。

よくある例としては、「生命保険料控除の金額を書き間違えていた」「配偶者の年間所得の計算(見積もり)を誤っていた」「適用できるはずの控除が漏れていた」などが挙げられます。

もし、思い当たる給与の変動や生活の変化がないにもかかわらず、例年と比べて過不足の金額(特に不足額)が極端に大きいと感じた場合は、申告した所得額や控除額に計算ミスがないか、源泉徴収票などを一度確認してみることをおすすめします。

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年末調整で過不足が出たときに行う対応

年末調整の計算が完了し、従業員一人ひとりの「過不足額(還付になるか、不足になるか)」が確定したら、次はその差額を実際に精算する手続きへと進みます。

過不足の精算は、原則としてその年の最後(12月)に行われますが、実務上のスケジュールや給与サイクルの関係で、翌年の1月や2月頃に支払われる給与や賞与において精算されるケースも多くあります。

会社側(給与の支払者)は、結果がプラス(過納)だった従業員とマイナス(不足)だった従業員に対して、それぞれ異なる対応を行わなければなりません。

ここからは、還付と徴収それぞれのケースにおいて、会社が具体的にどのように精算を行うのか、また特別な対応が必要な場合の書類手続きについて詳しく解説していきます。

年末調整で過納(プラス)が判明した場合の対処法

年末調整の計算で過不足を精算し、従業員の税金が納めすぎ(還付)だったと判明した場合、会社にはその分を返金する義務があります。ここでは具体的な対処法として、以下の2つの項目について詳しく解説します。

  • 徴収しすぎた分の税額を還付する
  • 年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書を提出する

徴収しすぎた分の税額を還付する

年末調整で「過納(納めすぎ)」となった税金は、基本的には給与振込と同じ口座への振り込み、または現金手渡しによって従業員へ還付されます。

実務上の仕組みとしては、会社がその月に税務署へ納めるべき「源泉徴収税額」の総額から、従業員へ返す還付額を差し引く(充当する)ことで、会社の手元資金から精算を行います。

還付の時期ですが、一般的には12月、あるいは実務の都合により翌年の1月〜2月の給与支給日に、その月の給与と合算して支払われます。

いつ戻ってくるかは会社の事務スケジュールによって異なるため、12月〜2月頃の給与明細を確認することで把握できます。

年末調整の還付金はいつ戻る?支払い方やいくら戻るかの計算方法など

年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書を提出する

会社から従業員へ還付すべき金額が、税務署へ納める源泉徴収税額を上回ってしまい、通常の差し引き(充当)だけでは還付しきれないケースがあります。このような場合にとる手続きが、年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書の提出です。

この書類は、過納となった税金を税務署から直接返還してもらうための請求書です。還付金が多額の場合や、廃業等で翌月以降の納付予定がない場合などに使用します。この手続きを行うことで、会社が一時的に立て替える負担を回避することができます。

提出の際は、請求書を作成し、対象となる従業員(受給者)の「源泉徴収簿の写し」などの必要書類を添付したうえで、所轄税務署へ提出します。

年末調整で不足(マイナス)が判明した場合の対処法

年末調整の結果、税金が不足する場合、会社は従業員から不足分を徴収して精算します。ここでは、給与から徴収する基本の対応と、一度に引くと手取りが減りすぎる場合の特例について、以下の2点を解説します。

  • 12月分の給与から不足額を徴収する
  • 不足額徴収繰延承認申請書を提出する

12月分の給与から不足額を徴収する

年末調整で税金が不足していた場合、原則としてその年の最後(12月など)の給与から一括で天引きして徴収します。

ただし、不足額が多額な場合、救済措置として法律上の特例を利用できます。

具体的には、「一度に不足額を引くと、その月の手取り額が1〜11月の平均手取り額の70%未満になってしまう」という条件を満たす場合、不足分の徴収を翌年の1月と2月に分割して繰り越すことが可能です。

この繰り越し制度を利用するには、会社を通じて税務署へ専用の書類を提出する必要があります。詳しくは次の項目で解説します。

不足額徴収繰延承認申請書を提出する

年末調整の結果、一度に不足額を徴収すると手取り額が著しく減少してしまう場合に、その徴収を翌年1月と2月に繰り延べるための手続きが不足額徴収繰延承認申請書の提出です。

この書類は、不足額の徴収を分散させることで従業員の生活への影響を抑えるためのものです。提出期限は「承認を受けようとする年の最後の給与を支払う日の前日」までとされており、所轄税務署へ提出します。

年末調整の結果が出てから給与支払日までの期間は非常にタイトであるため、不足額が多額になると判明した時点で速やかに書類を作成し、提出準備を進めることが実務上のポイントです。

会社側のミスで過不足が発生した場合の対処法

年末調整の計算ミスが会社側にあった場合、まずは該当する従業員へ誠実に謝罪し、速やかに再計算(年末調整のやり直し)を行う必要があります。

実務上で特に注意すべきは源泉徴収票の取り扱いです。すでに交付済みの場合、従業員が個人の確定申告や各種手続きで誤った数字を使用してしまうリスクがあるため、早急に事情を説明して正しい内容のものを再発行しなければなりません。

税金の過不足は手取り額に直結するため、計算ミスは会社と従業員との信頼関係を大きく損なう原因になります。日頃からチェック体制を整え、正確な処理を徹底することが大切です。

年末調整のミスを防止するポイント

年末調整のミスは、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、税務や労務に関する法令違反に問われるリスクも孕んでいます。さらに、再計算や書類の再発行といった修正対応には多大な時間と手間がかかり、結果として不要なコストの増加を招いてしまいます。

ミスを防止するには、社内での徹底したダブルチェック体制の構築が不可欠ですが、より確実な対策として税理士への依頼も有効な選択肢です。税理士に年末調整を外注する主なメリットとして、以下が挙げられます。

  • 正確性の担保: 最新の税制に基づいた、ミスのない確実でスムーズな処理
  • 業務の効率化: 経理担当者の負担が激減し、本来のコア業務に集中できる
  • 安心感: 従業員からの専門的な質問や、イレギュラーな事態にも即応可能

自社のリソースや担当者の負担と照らし合わせ、プロの力を借りることも検討してみましょう。

年末調整は税理士に依頼するとどこまでしてくれる?メリットや費用相場など

年末調整で控除できない項目もあるため注意

年末調整で税金の過不足を精算する際、すべての控除が適用できるわけではないため注意が必要です。

「医療費控除」「ふるさと納税の控除」「初年度の住宅ローン控除」は年末調整の対象外となります。これらを適用するには、原則として従業員本人が確定申告の手続きを行う必要があります。各項目の詳細を確認しましょう。

ふるさと納税の控除

ふるさと納税(寄附金控除)は年末調整の対象外です。そのため、原則として従業員自身で確定申告を行い、寄附金控除を申請することで税金の控除が受けられます。

ただし、ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告の手続きは不要です。この制度は寄附先が5自治体以内の場合にのみ有効ですが、寄附先が合計6自治体を超えた場合は注意が必要です。

その場合、ワンストップ特例で申請済みの1〜5自治体分も含め、すべての寄附について改めて確定申告を行わなければなりません。

医療費控除

医療費控除も年末調整の対象外です。1年間に支払った医療費の合計が、原則として「10万円」を超えた場合、確定申告で明細書を提出することで税負担を軽減できます。

ただし、所得金額に応じた基準額の引き下げや、特定の市販薬が対象となるセルフメディケーション税制などの例外もあります。

この制度の大きなポイントは、自分自身の医療費だけでなく「生計を一にする配偶者やその他の親族」のために支払った分もすべて合算できる点です。医療費控除の適用を受けるためには、会社での年末調整ではなく、従業員本人が確定申告を行う必要があります。

初年度の住宅ローン控除

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を適用する場合、入居した最初の年(初年度)は、必ず従業員本人が確定申告を行う必要があります。初年度は会社での年末調整の対象外となるため、注意が必要です。

また、税制は年度によって改正されることがありますが、現時点(2026年現在)において本制度を利用するには、「その年の合計所得金額が2,000万円以下」という所得制限が設けられている点も押さえておきましょう。

一方で、2年目以降については、税務署から送付される書類を勤務先へ提出することで、年末調整の枠組みで控除を適用できるようになります。

初年度の手続きは個人の確定申告の領域となりますが、2年目以降に会社側で正確な過不足精算を行うための重要なステップとなります。

複雑な年末調整の手続きもキークレア税理士法人がスムーズに対応します!

年末調整における過不足の精算や、従業員への個別のアナウンス、そして絶対にミスが許されない正確な計算業務は、企業の経理担当者にとって精神的にも時間的にも非常に負担の大きい作業です。

特に、ふるさと納税や各種控除など「会社で対応できる範囲・できない範囲」の線引きに関する従業員とのやり取りは、説明の手間や時間もかさみがちです。

こうした複雑で煩雑な年末調整業務に課題を感じている場合は、プロである税理士への外部委託を検討してみてはいかがでしょうか。

キークレア税理士法人では、最新の税制に基づいた正確な計算から、イレギュラーな事態への対応まで、御社の年末調整をスムーズに代行・サポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

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