期限のある相続手続き【一覧】間に合わないデメリットや対処法
目次
相続の手続きにはそれぞれ期限があり、手続きの内容により期限が異なります。例えば遺産分割協議には期限がありませんが、相続登記などに必要であるため、早めに行わないと遺産分割協議書が必要である手続きの期限に間に合わなくなる恐れがあります。
相続税申告は相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。「忙しくて申告できなかった」などの理由は一切通用しません。期限までに申告しなかった場合には、適用できなくなる特例や税額軽減がある上に、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。
葬儀や市町村役場への届出などで慌ただしいため、あっという間に期限が過ぎてしまいます。期限までに手続きを完了できるよう、早めの対応が必要です。
【一覧】期限のある相続手続き
家族が亡くなった際に行わなければならない手続は多くあります。その中には期限が決められているものもあるため注意が必要です。期限のある相続手続きは以下の通りです。ご自身での対応が難しい場合は早めに専門家に相談しましょう。
期限(被相続人の死亡日から) | 手続きの内容 | 手続きしないとどうなるか |
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7日以内 | 死亡届の提出 |
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7日以内 | 火葬許可申請書の提出 |
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10日以内(厚生年金) 14日以内(国民年金) |
年金受給権者死亡届 |
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14日以内 | 介護保険資格喪失届 |
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3ヶ月以内 | 相続方法(単純承認・限定承認・相続放棄)の選択 |
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翌日から4ヶ月以内 | 準確定申告 |
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翌日から10ヶ月以内 | 相続税の申告および納税 |
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1年以内 | 遺留分侵害額請求 |
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2年以内 | 葬祭料・埋葬費の請求、死亡一時金の受取請求 |
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3年以内 (かんぽ生命は5年以内) |
死亡保険金の請求 |
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3年以内 | 不動産の相続登記(2024年4月1日から義務化) |
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手続きの内容 | 死亡届の提出 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 7日以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 火葬許可申請書の提出 |
---|---|
期限(被相続人の死亡日から) | 7日以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 年金受給権者死亡届 |
---|---|
期限(被相続人の死亡日から) |
10日以内(厚生年金) 14日以内(国民年金) |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 介護保険資格喪失届 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 14日以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 相続方法(単純承認・限定承認・相続放棄)の選択 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 3ヶ月以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 準確定申告 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 翌日から4ヶ月以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 相続税の申告および納税 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 翌日から10ヶ月以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 遺留分侵害額請求 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 1年以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 葬祭料・埋葬費の請求、死亡一時金の受取請求 |
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期限(被相続人の死亡日から) | 2年以内 |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 死亡保険金の請求 |
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期限(被相続人の死亡日から) |
3年以内 (かんぽ生命は5年以内) |
手続きしないとどうなるか |
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手続きの内容 | 不動産の相続登記(2024年4月1日から義務化) |
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期限(被相続人の死亡日から) | 3年以内 |
手続きしないとどうなるか |
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【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認
相続に関して最初に期限が来る重大な手続きは相続方法の選択です。相続方法には単純承認・限定承認・相続放棄の3種類があります。
民法では相続開始があったことを知った日から3か月を「熟慮期間」と規定しています。この期間内に、プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は財産放棄を選択するなど、どの相続方法を選択するかよく考えて決定することが大切です。
相続方法 | 概要 |
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単純承認 |
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限定承認 |
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相続放棄 |
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相続方法 | 単純承認 |
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概要 |
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相続方法 | 限定承認 |
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概要 |
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相続方法 | 相続放棄 |
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概要 |
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相続人調査・相続財産調査
相続方法を決定するために熟慮期間中に相続人調査および相続財産調査を行います。相続人調査および相続財産調査は相続方法を決めるにあたり非常に重要な調査です。
相続人調査とは誰が相続人であるかを確定することです。調査には被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本等が必要です。戸籍を調べることで配偶者・両親・子どもなどを確認でき、相続人を確定することができます。
相続財産調査とは被相続人の財産を全て把握することです。相続人調査と並行して行うことができます。
遺産分割協議後に新たに相続人や相続財産が発覚した場合、遺産分割協議が無効になるリスクがありますので、漏れのないように調査することが大切です。
【4ヶ月以内】準確定申告
準確定申告とは、確定申告が必要であった人が亡くなった場合に、相続人が代わりに行う確定申告のことです。準確定申告することが義務であるケースと、義務ではないものの、申告することで税金が戻るケースがあります。還付申告は5年以内でも受け付けてもらえますが、還付税額は相続税の課税対象になるため、早めに還付申告をしましょう。
●準確定申告が義務のケース
- 事業所得や不動産所得が48万円以上ある。
- 2,000万円以上の給与収入がある。
- 複数の企業から給与収入がある。
- 公的年金が400万円以上ある。
- 給与、退職金以外で20万円を超える副収入がある。
- 株式や不動産などを売却し、譲渡所得にかかる納税が発生している。
●準確定申告をすることで税金が戻るケース
- 源泉徴収税額を納め過ぎていて、年末調整を行っていない場合。
- 医療費控除、寄付金控除、雑損控除などを受ける場合。
【10ヶ月以内】相続税の申告および納税
相続税が発生する場合は、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税します。申告書の提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。遺産分割が完了していなくても申告期限は変わりません。
また、相続税には軽減措置や特例が設けられていますが、以下にあげるものは申告しなければ適用されません。軽減措置や特例を適用した結果、相続税がかからなくても申告が必要なことに注意が必要です。
●配偶者の税額の軽減
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が相続した相続財産のうち、1億6千万円まで、1億6千万円を超えた場合は配偶者の法定相続分までは相続税が課税されない制度です。
●小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業の用または居住の用に供していた宅地等について、その宅地等のうち一定面積までの部分の評価額を減額する制度です。
●相続財産を公益法人などに寄附したときの特例
相続で取得した財産を相続税の申告期限までに、国や地方公共団体、公益法人などに寄附した場合、その寄附をした財産には相続税がかからないという特例です。
【1年以内】遺留分侵害額請求
遺留分とは、民法で定められた一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことができない最低限の相続財産の留保分のことです。遺留分が侵害されている場合は、侵害した相手方に対して遺留分の請求をすることができます。
2019年6月30日以前に被相続人が死亡した場合は「遺留分減殺請求」、それ以降は「遺留分侵害額請求」を行います。「遺留分減殺請求」では相続財産の現物での請求でしたが、改正によってお金で精算する「遺留分侵害額請求」に変わりました。
遺留分侵害額請求権の時効は、相続開始と遺留分の侵害を知った時から1年です。知らない場合 でも、10年で請求権が消滅します。
【2年以内】埋葬料・葬祭費、死亡一時金の受け取り請求
埋葬料・葬祭費とは、国民健康保険や社会保険、共済組合に加入していた被相続人の葬儀や埋葬を行う人に支給される給付金です。加入先によって名称や支給額が異なります。葬儀終了後に市区町村役場(国民健康保険の場合)や加入先に申請することで支給されます。
死亡一時金とは、国民健康保険を納めていた人が亡くなったときに、一定の要件を満たす遺族が受け取れる給付金です。請求先は被相続人の住所地の市区町村役場、年金事務所などです。
【3年以内】死亡保険金の請求
死亡保険金の請求は、ほとんどの保険会社で3年、かんぽ生命は5年を時効としています。時効を迎えた場合は原則として受け取ることができません。しかし、時効を越えてからの請求であっても、対応してくれる生命保険会社もあるようです。あきらめずに保険会社に連絡してみましょう。
なお、相続税の申告期限後に死亡保険金を受け取れることが判明した場合は、修正申告をする必要があります。
【3年以内】不動産の相続登記
相続登記とは、相続した土地・建物について、不動産登記簿の名義を変更することです。2024年4月1日より義務化されました。義務化以前に相続した土地・建物についても相続登記義務化の対象となりますので、注意が必要です。
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。登記時には登記する不動産の価格に応じた登録免許税が課税されます。正当な理由がなく期限を過ぎると10万円以下の過料を科せられる可能性があります。早めに申請しましょう。
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期限はないが早めに行うべき相続手続き
以下の手続きは法律上明確な期限は定められていません。しかし、その後の手続きに影響したり、次の相続が始まって手続きが複雑化したりすることもあるため、できるだけ早めに進める必要があります。
●遺言書の有無の確認・検認
●遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
●預貯金や株式の解約・名義変更
遺言書の有無の確認・検認
遺言書の有無の確認や検認手続きには期限がありません。しかし、確認や検認をしないままだとその次に行う相続手続きが進められなくなってしまいます。
公正証書遺言や遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が必要ありません。一方で、遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言と秘密証書遺言は被相続人の住所地の家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認を受けずに勝手に開封すると5万円以下の過料が科されます。また、検認は裁判所への申立てから1か月程度かかります。早めに進めましょう。
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
遺産分割協議とは、相続人全員で相続財産の分け方を話し合うことです。遺産分割協議そのものには期限はありません。しかし、遺産分割協議が終わらないと遺産分割協議書が作成できません。遺言書がなく遺産分割協議書の作成がされていない場合、不動産登記は法定相続分での共有登記になってしまいます。また、査定額が100万円を超える普通自動車は名義変更ができません。
遺産分割協議とは?預貯金の払い戻しや上場株式の名義変更
預貯金の払い戻し請求に期限はありません。しかし、長期間預貯金の払い戻し請求をしないまま放置していると休眠口座に移ってしまうことがあります。休眠口座に移っても預貯金の払い戻しができなくなるわけではありませんが、手続きに手間がかかることがあります。
一方、上場株式の場合は、名義変更をされていなくても株主としての地位は相続人が取得します。しかし利益配当の通知を受け取れない場合は、配当をもらうことができません。また、通知を受け取れないまま5年経過すると株主所在不明扱いとなり、発行会社が株式を買い取るなどして株主としての地位も失ってしまいます。
相続手続きが期限内に終わらないデメリットと対処法
相続放棄・限定承認
相続方法には相続放棄・限定承認・単純承認の3つがあります。手続きを何もしなければ単純承認(プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する)になります。また、熟慮期間の3か月以内に家庭 裁判所に申し立てることで、相続放棄(プラスの財産もマイナスの財産も全て相続しない)や限定承認(プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する)を選ぶことができます。
財産調査がスムーズに終わらず、熟慮期間内にどの相続方法を選択するか決定できない場合は、家庭裁判所に申立てることによって期間を伸長することができます。
相続税の申告・納付
相続税の申告期限までに遺産分割が完了しそうにない場合には、未分割の状態で申告します。その後、遺産分割がまとまったら、相続税の修正申告や更正の請求をします。未分割申告の場合、「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」を受けることができません。分割した際に特例を受けるためには「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります。
未申告の場合は、相続税に加え、「無申告加算税(期限までに申告がされなかった際に課される税)」や「延滞税(期限までに税金が納付されなかった場合に課される利息に相当する税)」の対象になります。
なお、災害などの場合を除いて、原則として期限の延長はできません。
準確定申告
準確定申告とは、被相続人の確定申告のことです。準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。無申告のまま準確定申告の申告期限が過ぎてしまった場合、本来納めなければならない所得税に加え、「無申告加算税」と「延滞税」を納めることになります。被相続人が所得があった年の確定申告をしないまま翌年1月1日から確定申告の期限までに死亡した場合は、前年分と本年分の2年分の準確定申告が必要になることもあります。申告に必要な書類を早めに収集して期限内に申告をしましょう。
なお、相続税と同様に災害などの場合を除いて、原則として期限の延長はできません。
相続手続きは経験豊富なキークレア税理士法人までお早めにご相談ください
家族が亡くなった際に行わなければならない手続はたくさんあります。その中には相続方法の選択など、相続開始から早い時期に期限が来るものもあります。一方で、葬儀などの儀式に忙殺され、相続税申告のことまで気が回らなくなってしまうこともあるでしょう。また、相続人間での遺産分割協議がまとまらないなど、ストレスがかかる場面も多くあります。しかし、期限までに手続きが終わらないと、相続税申告や準確定申告では無申告加算税や延滞税の対象になったり、相続登記では過料の対象になったりといったペナルティが発生します。
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