赤字決算のメリット・デメリットとは?わざと赤字にするのは得策か
企業によっては、税負担や将来の利益計画を踏まえ、戦略的に赤字決算を選択するケースがあります。赤字には法人税負担の軽減や欠損金の繰越といったメリットがある一方、融資や信用力、資金繰りへの悪影響も無視できません。
本記事では、赤字決算のメリット・デメリット、わざと赤字にする際の注意点、黒字転換に向けた対応策まで分かりやすく解説します。
赤字決算とは
赤字決算とは、一会計期間において収益よりも費用が上回り、最終的な利益がマイナスとなっている決算状態を指します。
赤字になったからといって、直ちに倒産するわけではありません。手元資金や借入余力が十分にあれば事業を継続できるため、赤字決算と資金ショートは分けて考える必要があります。赤字の原因や資金の状況を正しく把握することが重要です。
赤字決算のメリット
法人税を軽減できる
法人税は、原則として会社の課税所得に対して計算するため、税務上の所得が赤字であれば法人税の負担は生じません。その結果、利益が出ている場合と比べて税負担を抑えられることがあります。
ただし、会計上は赤字でも税務調整の結果として課税所得が生じる場合があります。また、消費税や法人住民税の均等割など、赤字決算でも納付が必要となる税金がある点には注意が必要です。赤字であればすべての税金がなくなるわけではありません。
赤字(欠損金)を繰り越しできる
赤字決算で税務上の欠損金が生じた場合、一定の要件を満たせば「繰越欠損金控除」を利用できます。欠損金を最長10年間繰り越し、翌期以降に生じた課税所得と相殺することで、将来の法人税負担を軽減できる仕組みです。
ただし、この効果を得るには将来黒字へ転換することが前提となります。赤字が続けば相殺する所得がないため、効果は限定的です。また、適用要件や控除限度額が設けられているため、制度を利用する際は事前に確認しておきましょう。
法人の赤字決算を繰越せる?前期が黒字なら法人税の還付が受けられる
前期に黒字で法人税を納付しており、今期に欠損金が生じた場合、一定の要件を満たす法人では「欠損金の繰戻還付制度」を利用できることがあります。
前期の課税所得と今期の欠損金を相殺して税額を再計算し、前期に納付した法人税の一部について還付を受けられる制度です。還付を受けられれば、資金繰りの改善にもつながります。
適用には青色申告など一定の要件があるため、対象となるかを事前に確認したうえで手続きを進めることが大切です。
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赤字決算のデメリット
融資が受けにくくなる
赤字決算になると、金融機関から返済能力や事業の収益性を厳しく見られるため、融資や追加の資金調達が受けにくくなる可能性があります。特に、2期以上にわたって赤字が続くなど、恒常的な赤字体質と判断される場合は注意が必要です。
一方で、創業直後の先行投資による赤字や、一時的な設備投資・特別損失など原因が明確な赤字であれば、事業計画や今後の改善見通しを丁寧に説明することで、金融機関の評価が異なる場合もあります。そのため、赤字の原因と今後の改善見通しを具体的に説明できるよう準備しておくことが重要です。
資金調達時の経営者保証が外しづらい
金融機関から融資を受ける際には、会社だけでなく経営者個人が連帯保証人となる「経営者保証」を求められることがあります。
経営者保証を外すためには、財務基盤の安定に加え、法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されていることや、金融機関へ適切に財務情報を開示していることなども重要です。
一方、赤字決算が続いて返済余力に懸念があると、経営者保証を外しにくくなり、万一会社が返済できなくなった場合に経営者個人が返済責任を負うリスクも高まります。そのため、財務内容の改善が重要です。
保有現金が少なくなる
節税を目的に必要以上の経費を使い、意図的に利益を圧縮して赤字決算にすると、その分だけ会社の手元現金も減少します。
たとえば、現金支出を伴う経費を追加し、税引前利益をゼロ以下にする場合は、原則として同程度の資金流出が必要です。税金を減らすために資金を使い過ぎれば、納税額以上に現金を失うこともあります。赤字化を検討する際は、節税額だけを見るのではなく、支出後にどれだけ手元資金が残るかまで確認することが重要です。
債務超過や倒産リスクが高くなる
黒字決算で利益を積み上げれば、一般的には純資産の増加につながります。一方、赤字が続くと利益剰余金が減少し、会社の純資産も徐々に目減りします。さらに赤字が長期化し、負債が資産を上回ると債務超過に陥る可能性があります。
債務超過になると金融機関からの評価が大幅に下がり、新たな融資を受けにくくなることも少なくありません。資金調達が難しくなれば資金繰りも悪化し、事業継続が困難になるなど、倒産リスクの上昇につながります。
役員個人の税負担が増加する可能性がある
意図的に赤字決算にする方法の一つとして、役員報酬を高めて会社の利益を圧縮する考え方があります。一定の要件を満たす役員報酬は法人の損金に算入できるため、会社側の課税所得を抑える効果が期待できます。
しかし、役員報酬を増やすと役員個人の所得も増えるため、所得税や住民税、社会保険料などの負担が大きくなる可能性があります。会社だけの節税額で判断せず、法人と個人の税負担を合わせた全体最適の観点から報酬額を検討することが重要です。
役員報酬で節税できる節税効果をより高める5つの方法従業員のモチベーションが低下する
赤字決算が一時的なものであれば大きな影響がない場合もありますが、赤字が長期間続くと、従業員が会社の将来性や雇用の安定性に不安を感じる可能性があります。その結果、仕事への意欲低下や人材流出につながり、事業運営に支障をきたすおそれもあります。
従業員の不安をなくすためにも、赤字の理由や改善方針、今後の見通しを必要に応じて社内で共有することが重要です。
税務調査の対象となる可能性がある
赤字決算だからという理由だけで、必ず税務調査の対象になるわけではありません。ただし、赤字が長期間続いているにもかかわらず事業が継続している場合や、売上・経費の内容に不自然な点がある場合などは、申告内容を確認される可能性があります。
とくに、売上の計上漏れや私的支出の経費計上などが疑われると、税務調査につながることもあります。赤字であっても帳簿や証憑を適切に管理し、申告内容を説明できる状態にしておくことが大切です。
「わざと赤字決算」にすることは企業にとって得策か?
赤字決算には、法人税負担の軽減や欠損金の繰越しなど一定のメリットがあります。しかし、節税だけを目的として意図的に赤字を作ることは、基本的には得策とはいえません。
不要な支出によって赤字化すれば手元資金が減少し、金融機関からの評価や取引先からの信用に影響する可能性もあります。
また、収益力の低下による赤字が常態化すると、純資産の減少や債務超過につながり、経営リスクが高まります。持続的な成長を目指すのであれば、安定的に利益を確保し、自己資本を充実させることが重要です。
一時的に赤字となる場合でも、税負担だけでなく資金繰りや将来の投資計画まで踏まえて判断することが重要です。
赤字決算から黒字転換を目指すための対応策
赤字決算には税負担を抑えられる効果がある一方、赤字が長期化すると純資産の減少や資金調達力の低下につながり、経営の安定性を損なうおそれがあります。
特に、2期・3期と複数期にわたって赤字が続く場合は、原因を把握し、早期に経営改善へ着手することが重要です。ここからは、赤字決算から黒字転換を目指すための代表的な対応策を解説します。
赤字を黒字にする方法とは?キャッシュフローを見直す
キャッシュフローとは、事業活動における現金の収入と支出の流れを指します。
赤字決算からの改善を目指す際は、まず入出金の時期と金額を整理し、いつ、どの程度の資金が必要になるのかを把握しましょう。キャッシュフローは大きく「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分けられます。
それぞれの動きを確認することで、本業で現金を生み出せているか、投資や借入に無理がないかを把握し、資金繰り計画の見直しにつなげられます。
キャッシュフローを改善する10の方法商品やサービスの単価を上げる
黒字転換を目指すには、販売数量を増やすだけでなく、商品やサービスの単価を見直すことも有効です。
安易な値上げでは顧客離れにつながる可能性があるため、品質や機能、対応スピード、アフターサービスなどの付加価値を高め、その価値に見合った価格設定を行うことが重要です。
また、原価や競合価格、顧客が評価しているポイントを分析し、利益を確保できる適正価格を設定することで、売上総利益の改善と黒字化につなげられます。
コストを削減する
赤字の原因が、収益に対してコストがかかり過ぎている場合は、支出内容を見直す必要があります。仕入価格や外注費、広告宣伝費、通信費、賃料などを洗い出し、売上や利益への貢献度が低い支出がないか確認しましょう。
ただし、必要な人材や将来の売上につながる投資まで一律に削減すると、かえって競争力が低下する可能性があります。単なる節約ではなく、事業への影響を見極めながら、無駄な支出や業務を削減することが重要です。
過剰在庫を処分する
商品や資材、材料などを必要以上に保有している場合は、在庫内容を定期的に確認し、過剰在庫の処分を検討しましょう。
在庫は資産として計上されますが、売れなければ現金化できず、保管スペースや管理費用も発生します。さらに、商品によっては陳腐化や劣化によって価値が低下する可能性もあります。長期間動いていない不良在庫は、値下げ販売や廃棄なども含めて早期に整理することを検討しましょう。
処分によって一時的に損失が生じる場合もありますが、適正在庫を維持することで、保管コストの削減や資金効率の改善につながり、中長期的な収益性の向上が期待できます。
不採算部門の切り離しを検討する
複数の事業や部門を運営している場合は、部門別の売上・利益を確認し、不採算部門の見直しも検討しましょう。
赤字が続く事業に経営資源を投入し続けると、黒字部門が生み出した利益まで圧迫する可能性があります。改善の見込みが低い場合は、事業撤退や第三者への譲渡も検討しましょう。限られた人材や資金を収益性の高い部門へ集中させることで、会社全体の利益率を高め、黒字転換を目指しやすくなります。事業ごとの採算を定期的に確認することが重要です。
赤字決算に関するQ&A
赤字決算の場合に支払う税金や免除される税金はありますか?
赤字決算でも、すべての税金が免除されるわけではありません。法人税や地方法人税、法人事業税などは、原則として課税所得がなければ負担が生じません。一方、消費税や源泉所得税、固定資産税などは赤字でも納付が必要となる場合があります。
また、法人住民税には所得に応じた法人税割のほか、赤字でも原則として負担する均等割があります。税目ごとに課税の仕組みが異なるため、「赤字なら税金が一切かからない」と考えないよう注意しましょう。 整理すると、一般的には次のようになります。
| 支払う税金/免除される税金 | 税金の種類 |
|---|---|
| 赤字でも納税義務が生じる税金 | 消費税、源泉所得税、印紙税、登録免許税、固定資産税、自動車税など |
| 赤字でも一部負担が生じる税金 | 法人住民税(原則として均等割) |
| 課税所得がなければ原則として負担が生じない税金 | 法人税、地方法人税、法人事業税、特別法人事業税など |
※消費税は課税事業者であるか、固定資産税や自動車税は対象資産を保有しているかなど、企業の状況によって納税義務が異なります。また、法人事業税についても法人の規模等によって取扱いが異なる場合があります。
法人が赤字になると税金が免除される?赤字決算と「債務超過」や「資金ショート」の違いは何ですか?
赤字決算は、一会計期間の収益より費用が多く、利益がマイナスになっている状態です。これに対し債務超過は、貸借対照表上で負債が資産を上回り、純資産がマイナスになっている状態を指します。
資金ショートは、支払期日までに必要な現金を用意できない状態です。赤字でも手元資金があれば事業継続は可能ですが、資金ショートすると黒字企業でも支払いができず、経営が行き詰まる可能性があります。
赤字決算の不安や疑問はキークレアにお気軽にご相談ください!
赤字決算には、法人税負担の軽減や欠損金の繰越などのメリットがある一方、融資の受けにくさや手元資金の減少、債務超過リスクなど、経営上のデメリットもあります。
そのため、節税のみを目的として赤字を作るのではなく、会社の資金繰りや将来の事業計画まで踏まえて判断することが重要です。 キークレアグループでは、税務面の確認だけでなく、財務分析や資金繰り、事業計画の策定などを通じて、赤字の原因把握から黒字化に向けた改善策の検討までサポートしています。
赤字決算への対応や今後の経営に不安がある場合は、早い段階で専門家へ相談することで、選択肢を広げることができます。赤字脱却や財務改善についてお悩みの際は、お気軽にキークレアへご相談ください。